浜松市の障害者雇用ガイド【2025年最新版】:課題と可能性、求職者と企業のための完全解説

障害者雇用促進法の改正により、法定雇用率は段階的に引き上げられ、企業や社会全体の関心が高まっています。ものづくりのまちとして知られる浜松市においても、障害のある方の就労は大きな転換期を迎えています。雇用者数は年々増加し、職種の多様化も進む一方で、法定雇用率の未達成という課題も残されています。

この記事では、最新の公的データと浜松市の施策を基に、浜松市における障害者雇用の「今」を多角的に分析します。求職者の方には具体的な支援機関や就職活動のステップを、企業担当者の方には先進的な取り組み事例や活用できる制度を詳しく解説し、双方にとって有益な情報を提供します。

データで見る浜松市の障害者雇用の現状

まず、客観的なデータから浜松市および静岡県全体の障害者雇用の現在地を把握します。そこからは、着実な進展と、乗り越えるべき課題の両方が見えてきます。

静岡県・全国との比較:雇用率の推移と課題

静岡労働局が2025年12月に公表した最新の「令和7年 障害者雇用状況」によると、静岡県内の民間企業における障害者の実雇用率は2.44%でした。これは13年連続で過去最高を更新しており、雇用されている障害者の総数も15,353.5人と16年連続で増加しています。この数字は、県全体として障害者雇用が着実に拡大していることを示しています。

しかし、この実雇用率は、2024年4月に引き上げられた法定雇用率2.5%にはわずかに届いていません。さらに、2026年7月には2.7%への再引き上げが予定されており、企業には一層の努力が求められています。法定雇用率を達成した企業の割合は52.1%と半数を超えていますが、裏を返せば約半数の企業が未達成という状況です。

全国のデータ(令和6年時点)と比較すると、静岡県の実雇用率は全国平均(2.41%)を上回っており、東海地方の中でも比較的高い水準にあります。これは、自動車や楽器産業などを中心とした製造業が安定した雇用の受け皿となってきたことが大きな要因と考えられます。

浜松市の構造的特徴:精神障害者の増加と公的機関の課題

近年の障害者雇用における最も顕著な特徴は、精神障害者の雇用の著しい伸びです。静岡県内では、2025年の集計で精神障害者の雇用数が前年比11.6%増と、身体障害者(0.6%増)や知的障害者(2.4%増)を大きく上回る伸び率を示しました。これは、うつ病や発達障害などに対する社会的な理解の広がりや、IT分野や事務職など、特性を活かせる職域が拡大していることが背景にあると考えられます。

一方で、浜松市自身の公的機関に目を向けると、課題も見えてきます。浜松市が公表している令和6年度(2024年6月1日時点)の状況では、市長事務部局の実雇用率が2.48%(法定雇用率2.80%)、教育委員会に至っては1.57%(法定雇用率2.70%)と、いずれも法定雇用率を大きく下回っています。市民の模範となるべき公的機関が未達成である状況は、市全体の雇用推進における重要な課題であり、官民一体でのさらなる取り組みが急務となっています。

未来を拓く市の羅針盤「第4次浜松市障がい者計画」

こうした現状と課題を踏まえ、浜松市は今後の障害者施策の「設計図」として「第4次浜松市障がい者計画」(計画期間:2024~2029年度)を策定しました。この計画には、市の障害者雇用に関する今後の方向性が具体的に示されており、求職者・企業双方にとって重要な内容が含まれています。

計画が示す2つの柱:「雇用促進」と「支援の質の向上」

計画の中で「雇用・就労」は重点分野として位置づけられ、主に2つの大きな方針が掲げられています。

  • 就労支援と雇用促進:ハローワークや後述する支援センターと連携を強化し、一人ひとりの希望や適性に合った職場探しを後押しします。フルタイムだけでなく、短時間勤務など多様な働き方の選択肢を広げることも目指しています。
  • 就労支援施設等に対する支援:就労移行支援事業所などが質の高いサービスを提供できるよう支援を強化し、施設全体のレベルアップを図ります。これにより、利用者はより専門的で効果的なサポートを受けられるようになります。

これは、単に雇用者数を増やすだけでなく、支援の「質」を高め、一人ひとりが自分らしく働き続けられる環境を整備していくという市の明確な意思表示です。

2025年度開始の新サービス「就労選択支援」とは?

今回の計画で特に注目すべきは、2025年度から本格的に開始される新サービス「就労選択支援」です。これは、障害者総合支援法の改正に伴い全国で導入される制度で、「自分にどんな仕事が向いているかわからない」「どんな働き方ができるか知りたい」といった悩みを持つ方に対し、専門員が短期間の作業体験などを通じて本人の能力や適性を客観的に評価(アセスメント)し、最適な働き方や支援サービスを一緒に見つけていくものです。

この制度により、就労移行支援などの福祉サービスを利用する前に、自分に合った支援をミスマッチなく選択できるようになることが期待されています。

市の本気度を示す成果目標:「一般就労」への移行を加速

計画では、具体的な成果目標も設定されています。特に注目されるのが、「福祉施設から一般就労への移行等」に関する目標です。就労移行支援などを通じて企業等へ就職する人の数を、令和3年度(2021年度)実績の144人から、令和8年度(2026年度)には189人に増やすという具体的な数値を掲げています。

これは、市が福祉施設での訓練から企業で働く「一般就労」へのステップアップを積極的に推進していくという強い決意の表れであり、求職者にとっては就職のチャンスが拡大することを示唆しています。

【求職者向け】一人で悩まない!浜松市の就労支援活用術

「働きたい」という気持ちはあっても、何から始めればいいか分からない。そんな時、浜松市にはあなたの就職活動を力強くサポートしてくれる専門機関が多数存在します。一人で抱え込まず、これらの支援を積極的に活用することが成功への近道です。

Step 1: 最初の相談窓口 – 浜松市障害者就労支援センター「ふらっと」

どこに相談すればいいか迷ったら、まずは浜松市障害者就労支援センター「ふらっと」に連絡してみましょう。ここは、浜松市が委託して運営している公的な総合相談窓口で、障害者手帳の有無にかかわらず、無料で相談できます。

  • 役割: 就労に関するあらゆる悩みの相談、情報提供、ハローワークや企業面接への同行支援など、包括的なサポートを提供します。
  • 特徴: 直接仕事を紹介(斡旋)するのではなく、あなたの状況や希望を丁寧に整理し、次に紹介する「就労移行支援事業所」など、最適な専門機関へ繋ぐ「ナビゲーター」の役割を担います。
  • 連絡先: まずは電話で相談予約をすることが第一歩です。

「ふらっと」は、就職活動という長い道のりにおける、信頼できる「出発点」となってくれるでしょう。

Step 2: スキルを磨く – 就労移行支援事業所と公的職業訓練

「ふらっと」などから紹介される代表的な支援機関が「就労移行支援事業所」です。一般企業への就職を目指す障害のある方を対象に、最長2年間、就職に必要なスキル習得から職場定着までを一貫してサポートする、いわば「就職のための学校」です。

浜松市内には29箇所以上の事業所があり、それぞれに特色があります。

  • 提供される支援:自己分析、PCスキル(Word, Excel)やプログラミング等の職業訓練、ビジネスマナー、コミュニケーション訓練、企業での職場実習、就職活動サポート、就職後の定着支援など。
  • 事業所の例:全国展開で実績豊富な「LITALICOワークス」、発達障害の特性に特化した「ディーキャリア」、ITスキルに強い「ランプ浜松」など、多様な選択肢があります。
  • 利用方法:多くの場合、障害者手帳がなくても医師の診断書や自治体の判断で利用可能です。利用料は所得に応じて異なりますが、利用者の約9割が自己負担0円で利用しています。

また、より専門的な技術を身につけたい場合は、静岡県立浜松技術専門校(愛称:浜松テクノカレッジ)などの公的職業訓練も有効な選択肢です。障害のある方向けのコースが用意されており、機械技術や建築、設備技術などを無料で学ぶことができます(教材費等は自己負担)。

Step 3: 頼れる専門機関 – ハローワークと支援センター

就職活動を具体的に進める上では、以下の公的機関も重要なパートナーとなります。

  • ハローワーク浜松:障害のある方向けの専門窓口が設置されており、求人紹介や職業相談を行っています。障害者雇用に特化した求人情報(トライアル雇用など)も豊富です。
  • 静岡障害者職業センター:職業能力の評価や、職場に支援員が同行して業務をサポートする「ジョブコーチ支援」など、より専門的なリハビリテーションサービスを提供します。
  • 障害者就業・生活支援センター「だんだん」:浜松市・湖西市を管轄し、仕事だけでなく、健康管理や金銭管理といった生活面の課題も一体的に支援してくれます。「仕事だけでなく生活のことも相談したい」という場合に最適な窓口です。

【企業向け】障害者雇用をリードする浜松の先進企業と支援策

浜松市には、法定雇用率の達成という義務を超え、障害者一人ひとりが輝ける職場づくりに情熱を注ぐ企業が数多く存在します。これらの企業の取り組みは、これから障害者雇用を始める、あるいは拡大を検討する企業にとって、多くのヒントを与えてくれます。

浜松の先進企業事例:多様な活躍のカタチ

浜松市では、伝統的な製造業からサービス業、そして新しい「農福連携」まで、多様な分野で障害者雇用が実践されています。

  • 京丸園株式会社(農業):「農福連携」の全国的なパイオニア。「障がい者に働きやすい環境は、誰にとっても働きやすい」という信念のもと「ユニバーサル農業」を実践。作業工程を細分化・機械化することで、現在では25名以上の障害のある従業員が活躍し、会社の業績向上にも繋がっています。
  • 株式会社ティージー(製造業):自動車部品の組立を行う同社は、「障害のある人のために社内の仕事を切り出すのではなく、障害のある人にできそうな仕事を外部から見つけてくる」というユニークなスタイルを実践。片手でも安全に作業ができる専用治具を開発するなど、一人ひとりの特性に合わせたきめ細やかな配慮が光ります。
  • テイボー株式会社(製造業):マーキングペン先の製造で世界トップシェアを誇る同社は、インターンシップを効果的に活用。高校3年間で複数回の職場実習を実施し、本人の適性と意欲を慎重に見極めるなど、丁寧なマッチングプロセスが長期定着に繋がっています。
  • 事務・サービス・IT分野:通販大手の株式会社スクロールや複合機メーカーのリコージャパン株式会社では、本社機能での事務職求人が見られます。また、IT分野でも在宅勤務でエンジニアを募集する企業が登場するなど、職域は着実に広がっています。

企業が活用できる支援制度

浜松市や静岡県では、企業が障害者雇用を円滑に進めるための支援制度を設けています。

  • 静岡県障害者就労応援団:静岡県が障害者雇用に実績のある企業を「応援団」として登録し、そのノウハウを他の企業に広げる制度です。登録企業から採用や定着に関する具体的なアドバイスを受けることができます。
  • 企業伴走型障害者雇用推進事業:浜松市独自の事業で、専門アドバイザーが企業を訪問し、受け入れ体制の整備や助成金の活用などをサポートします。何から手をつければ良いか分からない企業にとって心強い支援です。
  • 各種助成金制度:障害者を雇用する際には、特定求職者雇用開発助成金や障害者トライアルコースなど、国の様々な助成金を活用できます。詳しくはハローワークの専門窓口で相談できます。

まとめ:支援の輪を力に、自分らしいキャリアを築く

浜松市における障害者雇用は、法定雇用率の引き上げという社会的な要請の中で、着実な進展と未達成という課題が共存しています。しかし、最も重要なのは、働き方の選択肢が確実に広がっているという事実と、あなたを支える支援体制が地域に根付いているということです。

ものづくりの現場から、最先端のIT分野、そして「農福連携」のような新しい領域まで、あなたの特性や希望に合った仕事が見つかる可能性は十分にあります。成功の鍵は、まず自分自身を深く理解し、次に浜松市が提供する「ふらっと」や就労移行支援事業所といった多様な支援サービスを最大限に活用し、一人で抱え込まないことです。

この記事が、浜松市で働くことを希望する障害のある方、そしてその可能性を信じて採用を検討する企業の方々にとって、次の一歩を踏み出すための確かな一助となれば幸いです。

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