変化する浜松市の障害者雇用市場
「障害があっても、自分らしく働きたい」——。そう願う方々にとって、浜松市の障害者雇用市場は今、大きな変化の時を迎えています。企業の法定雇用率が段階的に引き上げられ、障害者雇用への関心が高まる一方、「どんな仕事があるのか」「どうやって探せばいいのか」といった不安を抱える方も少なくありません。
この記事では、2025年11月現在の最新情報に基づき、障害のある方が浜松市で仕事を探すための総合的なガイドを提供します。就職活動の最も身近なパートナーであるハローワーク浜松の活用法を徹底的に解説するとともに、求人の具体的な内容、連携する多様な支援機関、そして浜松市独自の取り組みまでを網羅します。あなたの「働きたい」という想いを実現するための一歩を、ここから踏み出しましょう。
データで見る浜松・静岡の障害者雇用の現状
具体的な仕事探しを始める前に、まずは浜松市を含む静岡県全体の障害者雇用の現状をデータから客観的に把握しましょう。市場のトレンドを知ることは、効果的な就職活動の第一歩です。
上昇する雇用率と新たな法定基準という課題
静岡労働局が2024年12月に公表したデータによると、静岡県内の民間企業における障害者の実雇用率は2.43%となり、12年連続で過去最高を更新しました。雇用者総数も14,882.0人と15年連続で増加しており、県全体として障害者雇用が着実に進展していることがわかります。
しかし、課題も存在します。民間企業の法定雇用率は2024年4月に2.5%、さらに2026年7月には2.7%へと引き上げられる予定です。現在の実雇用率は、この新しい基準にはまだ達していません。これは、企業側が今後さらに採用を加速させる必要があることを意味しており、求職者にとってはチャンスが拡大する可能性があることを示唆しています。
著しく増加する精神障害者の雇用
障害種別で見ると、特に精神障害者の雇用が著しく増加している点が大きな特徴です。2024年のデータでは、静岡県内の精神障害者の雇用者数は2,721.0人で、前年比13.2%増という高い伸び率を記録しました。これは、身体障害者(1.3%増)や知的障害者(3.7%増)の伸びを大きく上回っています。
この背景には、2018年の法改正で精神障害者が法定雇用率の算定対象に加わったことや、障害特性への企業の理解が進んだこと、そしてテレワークのような柔軟な働き方が普及し始めたことなどが考えられます。浜松市内でも、精神障害のある方の特性に配慮した求人が増加傾向にあります。
ハローワーク浜松の徹底活用ガイド
浜松市で障害のある方が仕事を探す上で、最も中心的で重要な役割を担うのがハローワーク浜松です。ここでは、その機能を最大限に活用するための具体的なステップとポイントを解説します。
最初のステップ:障害者専門窓口「専門援助部門」へ
ハローワーク浜松には、障害のある方の就職を専門的にサポートする「専門援助部門」が設置されています。一般的な窓口とは異なり、障害に関する専門知識と豊富な支援経験を持つ相談員が、一人ひとりの状況に合わせたきめ細やかな支援を提供してくれます。
利用の流れはシンプルです。まずはハローワークに行き、総合受付で「障害者雇用の相談をしたい」と伝え、専門援助部門に案内してもらいます。事前の予約が推奨されており、電話で予約することでスムーズに相談を開始できます。
ハローワーク浜松(本庁舎)
- 所在地: 〒432-8536 浜松市中央区浅田町50-2
- 電話番号: 053-457-5151(代表) ※自動音声案内に従ってください。
- 利用時間: 8:30~17:15(土・日・祝日・年末年始を除く)
- 担当: 職業相談・職業紹介、雇用保険の受給、職業訓練の申込みなど
※ハローワーク浜松には複数の庁舎があります。求人企業の指導などはアクト庁舎が担当しています。初めての求職相談は本庁舎が中心となります。
専門相談員が提供する具体的なサービス
専門援助部門では、単なる求人紹介にとどまらない、就職活動の各段階に応じた多様なサポートを無料で受けることができます。
- 個別カウンセリング: これまでの職歴、希望、必要な配慮などを丁寧にヒアリングし、一人ひとりに合った就職活動のプランを一緒に考えます。
- 求人情報の提供と紹介: 一般には公開されていない障害者専用求人や、配慮を得やすい求人を中心に紹介してくれます。
- 応募書類の作成支援: 履歴書や職務経歴書の書き方をアドバイス。特に、障害特性や必要な配慮について、企業に的確に伝える表現を一緒に考えてくれます。
- 面接トレーニング: 模擬面接を実施し、受け答えの練習や自己PRの方法について具体的なフィードバックをもらえます。
- 同行支援: 必要に応じて、企業見学や面接に相談員が同行してくれる場合もあります。
- 就職後の定着支援: 就職後も職場にスムーズに適応できるよう、企業と本人の間に入って定期的なフォローアップや調整を行ってくれます。
これらのサポートは、就職活動における不安を解消し、自信を持って臨むための強力な支えとなります。
自宅でできる!求人情報の探し方とポイント
窓口での相談と並行して、自宅のPCやスマートフォンからを使って求人を探すことも非常に有効です。効率的に検索するには、以下のテクニックを活用しましょう。
- 「求人情報検索」へ進む: トップページから求人検索画面にアクセスします。
- 「詳細検索条件」を活用: 「障害者の方」の項目にあるチェックボックスをオンにします。これにより、障害者専用求人や配慮のある求人に絞り込めます。
- フリーワード検索を使いこなす: 「事務」「軽作業」「在宅」などの職種や働き方に加え、「未経験者歓迎」「週休2日」といった希望条件を入力することで、より自分に合った求人を見つけやすくなります。
求人票を見る際のチェックポイント
求人票をただ眺めるだけでなく、以下の点に注目すると、企業の受け入れ態勢を推測するヒントになります。
・具体的な「雇用実績」: 「精神障害」「下肢障害」など、過去に採用した障害種別が記載されているか。
・「合理的配慮」の具体例: 「通院への配慮」「業務内容の調整」「車いす用トイレあり」など、具体的な配慮事項が明記されているか。
これらの情報が豊富な企業は、受け入れ態勢が整っている可能性が高いと言えるでしょう。
ハローワークで見つかる求人の職種と働き方
ハローワーク浜松には、多様な職種と働き方の求人が集まっています。ここでは、実際にどのような仕事が募集されているのか、その傾向を分析します。
浜松で募集の多い職種とは?
ハローワークの求人情報を分析すると、浜松市では以下のような職種が多く見られます。
- 軽作業・清掃・製造補助: ものづくりの街・浜松らしく、工場内での簡単な組立、検品、梱包、清掃などの求人が豊富です。特別なスキルがなくても始めやすい仕事が多いのが特徴です。
- 事務職: データ入力、書類整理、電話応対などの一般事務は、多くの企業で募集があります。PCの基本操作ができると有利です。
- 販売・サービス: スーパーの品出し、ドラッグストアの店舗スタッフ、コンビニ店員など、接客を伴う仕事も多数あります。短時間勤務の募集も多く、柔軟な働き方が可能です。
- 専門職(ITなど): 近年では、プログラミングやWebデザインといったIT関連の専門職の求人も増えています。在宅勤務が可能な場合もあり、新しい働き方として注目されています。
給与水準はパート・アルバイトの場合、時給1,100円前後からスタートする求人が多く見られます。契約社員や正社員の求人では、経験やスキルに応じて月給20万円以上も目指せます。
一般就労だけではない「就労継続支援」という選択肢
すぐに一般企業で働くことに不安がある方には、「就労継続支援」という福祉サービスを利用する道もあります。ハローワークでは、これらの事業所の求人(利用者募集)も紹介しています。
- 就労継続支援A型: 事業所と雇用契約を結び、給料(最低賃金以上)をもらいながら働きます。一般就労へのステップアップを目指すための訓練の場です。求人票には「就労継続支援A型事業の利用者募集」と記載されています。
- 就労継続支援B型: 雇用契約は結ばず、体調やペースに合わせて軽作業などを行います。生産活動に対する対価として「工賃」が支払われます。
これらの事業所を利用するには、市区町村が交付する「障害福祉サービス受給者証」が必要になる場合があります。まずはハローワークや後述する相談窓口で、自分に合った働き方について相談してみましょう。
一人で悩まない!ハローワークと連携する支援機関
就職活動は一人で抱え込む必要はありません。ハローワークは、地域の様々な支援機関と連携しており、あなたを多角的にサポートするネットワークの中心にいます。ここでは、ハローワークと合わせて活用したい主要な支援機関を紹介します。
総合相談窓口:浜松市障害者就労支援センター「ふらっと」
「どこに相談すればいいか分からない」と迷ったら、まずは浜松市障害者就労支援センター「ふらっと」に連絡してみましょう。ここは浜松市が委託して運営している公的な総合相談窓口で、障害者手帳の有無にかかわらず無料で相談できます。
「ふらっと」は直接仕事を紹介するのではなく、あなたの状況や希望を整理し、ハローワークや次に紹介する就労移行支援事業所など、最適な専門機関へ繋ぐ「ナビゲーター」の役割を担います。就労に関するあらゆる悩みの最初の相談先として最適です。
- 連絡先: 053-589-3028(まずは電話で相談予約を)
就職の学校:就労移行支援事業所
一般企業への就職を目指すためのスキルアップや準備をしたい場合に最適なのが「就労移行支援事業所」です。いわば「就職のための学校」で、最長2年間、専門的なサポートを受けられます。
- 提供される支援: 自己分析、PCスキルやプログラミング等の職業訓練、ビジネスマナー、企業実習、就職活動サポート、就職後の定着支援など。
- 利用方法: 多くの場合、障害者手帳がなくても医師の診断書や自治体の判断で利用可能です。利用料は所得に応じて異なりますが、多くの方が無料で利用しています。
- 浜松市内の事業所例: 浜松市内には29箇所以上の事業所があり、それぞれ特色があります。全国展開で実績豊富な「LITALICOワークス」、ITスキルに特化した、個別支援に強みを持つ「アクセスジョブ」など、見学や体験を通じて自分に合った場所を見つけることが重要です。
その他の公的支援機関
より専門的なサポートが必要な場合、以下の機関も頼りになります。
- 静岡障害者職業センター: 職業能力の評価や、職場に支援員が同行するジョブコーチ支援など、より専門的なリハビリテーションサービスを提供します。
- 障害者就業・生活支援センター「だんだん」: 浜松市・湖西市を管轄し、仕事だけでなく、健康管理や金銭管理といった生活面の課題も一体的に支援してくれます。
これらの機関はハローワークと密に連携しており、必要に応じて紹介を受けることができます。
浜松市の支援策と将来展望
浜松市は、国の制度に加えて、独自の計画や支援策で障害のある方の就労を後押ししています。未来に向けた市の取り組みを知ることは、キャリアプランを考える上で役立ちます。
市の計画が示す未来:2025年開始「就労選択支援」とは
浜松市は(2024~2029年度)の中で、雇用・就労を重要な柱と位置づけています。特に注目すべきは、2025年度から本格的に開始される「就労選択支援」です。
これは、「自分にどんな仕事が向いているかわからない」といった悩みを持つ方に対し、専門員が面談や作業体験を通じて本人の能力や適性を客観的に評価(アセスメント)し、本人がより良い働き方を選択できるよう支援する新しいサービスです。一人で悩まず、専門家と一緒にキャリアの方向性を考えられる心強い制度と言えるでしょう。
市は「福祉施設から一般就労への移行」を具体的な成果目標として掲げており、今後ますます就労支援に力を入れていく姿勢がうかがえます。
知っておきたい助成金・補助金制度
就職活動や就労生活を支えるための経済的な支援制度も用意されています。これらは働く本人だけでなく、雇用する企業側にもメリットがあり、雇用の拡大につながっています。
- 障害者施設通所交通費の助成: 浜松市独自の制度で、就労移行支援事業所などの施設に通うための交通費の一部が助成されます(年間上限7,000円など条件あり)。詳細は市のウェブサイトで確認できます。
- 重度障害者等就労支援事業: 通勤や職場での支援が必要な重度の障害がある方を対象とした支援です。
- 企業向けの助成金: 企業が障害者を雇用する際に国から支給される「特定求職者雇用開発助成金」など、様々な助成金があります。これらの制度があることで、企業は障害者雇用に積極的に取り組みやすくなります。
まとめ:多様な支援を力に、自分らしいキャリアを築く
本記事で見てきたように、浜松市における障害者雇用は、法定雇用率の引き上げを背景に企業側の採用意欲が高まり、求職者にとってチャンスが広がっている状況です。特に、事務職や軽作業から専門的なIT職まで、働き方の選択肢は確実に多様化しています。
成功の鍵は、一人で抱え込まないことです。ハローワーク浜松の専門窓口を起点として、この記事で紹介した「ふらっと」や就労移行支援事業所といった多様な支援機関のネットワークを最大限に活用してください。専門家と共に自己分析を深め、必要なスキルを身につけ、自分に合った職場を見つける。そのためのサポート体制は、浜松市にしっかりと整っています。
あなたの「働きたい」という気持ちを、ぜひ行動に移してみてください。このガイドが、その力強い第一歩となることを願っています。

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