企業の人事担当者様へ。浜松市で就労移行支援からの採用を成功させる完全ガイド

「法定雇用率を達成しなければならないが、どんな人材を採用すれば良いかわからない」「採用しても、すぐに辞めてしまうのではないか」——。障害者雇用に関して、このような課題を抱える人事担当者様は少なくないでしょう。

しかし、これらの課題は「就労移行支援」という制度を戦略的に活用することで、解決の糸口を見出すことができます。本記事では、浜松市の企業様を対象に、就労移行支援事業所と連携するメリット、具体的な採用ステップ、そして市内の成功事例までを網羅的に解説します。

障害者雇用は、もはや単なる法的義務の遵守ではありません。多様な人材を活かし、組織を活性化させ、企業価値を高めるための重要な経営戦略です。

1. なぜ今、就労移行支援との連携が注目されるのか?

近年、障害者雇用を取り巻く環境は大きく変化しています。特に「法定雇用率の引き上げ」と「地域社会全体での支援体制の強化」という2つの側面から、就労移行支援事業所との連携の重要性が増しています。

段階的に引き上げられる法定雇用率

障害者雇用促進法に基づき、民間企業に義務付けられている法定雇用率は、段階的に引き上げられています。2024年4月には2.3%から2.5%へ、さらに2026年7月には2.7%へと上昇する予定です。これにより、対象となる企業の範囲も拡大し、これまで以上に対応が求められます。

この法改正は、単に数字を達成するだけでなく、障害のある方が能力を発揮し、活躍できる環境を整備することが企業に期待されていることを示しています。

浜松市が推進する障害者就労支援

浜松市も、障害のある方の自立と社会参加を積極的に推進しています。市の「障がい福祉実施計画」では、福祉施設から一般就労への移行者数を増やす具体的な目標が掲げられています。例えば、令和8(2026)年度には、就労移行支援事業所等から242人が一般就労へ移行するという目標が設定されており、これは令和3年度実績(176人)の約1.4倍に相当します。

このような行政の動きは、就労移行支援事業所が、就労意欲と訓練されたスキルを持つ人材の宝庫であることを示唆しています。市はハローワークと連携し、雇用経験の少ない企業へのアドバイスや、職場定着支援を共同で実施するなど、企業側のサポート体制も強化しています。

2. 採用の常識が変わる!就労移行支援を活用する5つのメリット

就労移行支援事業所との連携は、法定雇用率の達成という守りの側面だけでなく、企業の成長に繋がる多くの攻めのメリットをもたらします。

① 採用ミスマッチを劇的に減らす「職場実習」

最大のメリットの一つが、採用前に「職場実習」を通じて、候補者の実際の働きぶりやスキル、職場との相性を確認できる点です。履歴書や面接だけでは分からない「人柄」や「業務遂行能力」を実務に近い形で見極めることができるため、採用後の「こんなはずではなかった」というミスマッチを大幅に減らすことができます。企業側は、候補者の得意なことや必要な配慮を具体的に把握でき、受け入れ準備をスムーズに進められます。

② 驚異的な定着率を実現する「就労定着支援」

採用はゴールではなくスタートです。就労移行支援事業所は、採用後も「就労定着支援」として、最長で3年半にわたりサポートを続けます。支援員が定期的に本人と面談し、企業担当者様との三者面談も実施。業務上の課題や人間関係の悩みを早期に発見し、解決に向けて共に取り組みます。この手厚いフォローにより、職場への定着率は飛躍的に向上します。大手事業所のデータでは、定着支援を利用した場合の半年後の定着率が約90%に達するという報告もあり、これは一般的な障害者雇用の定着率と比較して非常に高い水準です。

③ 採用コストの削減と助成金の活用

就労移行支援事業所からの紹介は、多くの場合、企業側に費用が発生しません。これは、求人広告費や人材紹介手数料といった採用コストを大幅に削減できることを意味します。さらに、障害のある方を雇用する際には、国や県から様々な助成金が支給されます。代表的なものに「特定求職者雇用開発助成金」があり、賃金の一部が助成されます。他にも、職場環境の整備や介助者の配置に対する助成制度もあり、これらを活用することで、経済的負担を軽減しながら雇用を進めることが可能です。

④ CSRとダイバーシティ(D&I)推進への貢献

障害者雇用への積極的な取り組みは、企業の社会的責任(CSR)を果たす上で重要な要素です。多様な背景を持つ人材が共に働く職場は、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進にも直結します。これにより、企業のイメージが向上し、顧客や取引先、さらには他の従業員からの信頼も高まります。多様な視点が生まれることで、新たなイノベーションや組織の活性化にも繋がるでしょう。

⑤ 業務プロセスの見直しと生産性向上

障害のある方に仕事を任せるためには、既存の業務を細分化し、手順を明確にする「業務の切り出し」が必要になることがあります。このプロセスは、実は組織全体の業務を見直し、標準化・効率化する絶好の機会です。「誰がやっても同じ品質でできる」仕組みを構築することは、結果的に組織全体の生産性向上に貢献します。浜松市の京丸園株式会社の事例では、障害のある方が働きやすい環境を追求した結果、健常者にとっても働きやすい「ユニバーサル農業」が実現し、経営全体に好影響を与えています。

3. 【浜松市版】就労移行支援事業所との連携・採用ステップ

それでは、実際に浜松市で就労移行支援事業所と連携し、採用を進めるための具体的なステップを見ていきましょう。

Step 1: 浜松市内の主要な就労移行支援事業所を知る

浜松市内には、約28箇所の就労移行支援事業所があります。それぞれに特色や得意分野があるため、まずはどのような事業所があるかを知ることが第一歩です。全国展開する大手事業所から、地域に根差した事業所まで様々です。

  • LITALICOワークス: 業界最大手の一つで、豊富な実績とノウハウが強み。浜松駅近くにも事業所を構え、多様なプログラムを提供しています。
  • 聖隷福祉事業団: 浜松を拠点とする歴史ある社会福祉法人。医療・福祉の幅広いネットワークを活かした手厚い支援が特徴です。
  • ウェルビー: こちらも全国展開しており、高い定着率を誇ります。浜松駅前にセンターがあります。

まずは、これらの事業所のウェブサイトを見たり、浜松市が提供する障害福祉サービス等事業所一覧を確認したりして、情報収集から始めましょう。

Step 2: 求める人材像の共有と求人依頼

連携したい事業所が見つかったら、連絡を取り、自社が求める人材像を具体的に伝えます。この時、以下の情報を明確に共有することが、良いマッチングの鍵となります。

  • 業務内容: 具体的にどのような仕事を担当してもらうか。
  • 必要なスキル: PCスキル、専門知識、コミュニケーション能力など。
  • 勤務条件: 勤務時間、給与、休日など。
  • 職場の環境: 部署の雰囲気、人員構成など。
  • 想定される合理的配慮: 通院への配慮、指示方法の工夫、物理的な環境整備など。

支援員はこれらの情報をもとに、事業所の利用者の中から適性のありそうな候補者を探してくれます。

Step 3: 「職場実習」の受け入れと評価

候補者が見つかったら、職場実習を受け入れます。期間は数日から数週間が一般的です。実習中は、支援員が定期的に訪問し、候補者の様子を確認したり、企業側の担当者と情報交換を行ったりします。企業側は、実習を通じて候補者の能力や課題を評価し、採用の可否を判断します。この段階で「難しい」と判断しても、お互いにとって貴重な経験となり、次のマッチングに活かすことができます。

Step 4: 採用決定と受け入れ体制の構築

採用が決定したら、受け入れ部署の社員への事前説明や、業務マニュアルの整備など、具体的な受け入れ準備を進めます。この際も、就労移行支援事業所の支援員が、障害特性に関する説明や、効果的なコミュニケーション方法についてアドバイスをしてくれます。入社後も定着支援が続くため、安心して新しい仲間を迎え入れることができます。

4. 浜松市の成功事例に学ぶ

浜松市内および近隣には、障害者雇用を成功させ、企業成長に繋げているモデル企業が多数存在します。

農業分野の革新モデル:京丸園株式会社

浜松市に拠点を置く京丸園は、「農福連携」のトップランナーとして全国的に知られています。障害の有無や年齢に関わらず、誰もが活躍できる「ユニバーサル農園」をコンセプトに、障害者雇用率は40%を超えています。同社の成功の秘訣は、作業工程を細かく分解し、各人の得意なことや能力に合わせて仕事を割り振る仕組みにあります。例えば、自社開発の機械を導入することで、これまで難しいとされていた作業も多くの人が担えるようになりました。障害のある方が働きやすい環境を追求することが、結果として経営全体の効率化と従業員全員の働きやすさに繋がった好事例です。

製造業におけるワークシェア:三実精工株式会社

浜松市の製造業、三実精工株式会社も、障害者雇用のモデル企業として知られています。同社では、障害のある社員も他の社員と同じ教育・評価を受けながら、それぞれの得意分野を活かして仕事を分かち合う「ワークシェア」を実践しています。社長自らが障害者雇用への理解を全社に発信し、会社全体で取り組む風土を醸成したことが、成功の鍵となっています。業務の棚卸しを通じて、障害のある方に任せられる仕事を検討するプロセスが、結果的に業務改善にも繋がったとされています。

5. まとめ:戦略的な障害者雇用で、企業の未来を拓く

就労移行支援事業所との連携は、目前の法定雇用率達成という課題をクリアするだけでなく、企業に多くの恩恵をもたらします。

  • 人材確保: 採用ミスマッチを防ぎ、意欲とスキルを持つ人材を確保できる。
  • 組織力強化: 手厚い定着支援により離職率を下げ、安定した労働力を確保できる。
  • 経営効率化: 助成金の活用や業務プロセスの見直しにより、コスト削減と生産性向上が期待できる。
  • 企業価値向上: CSRやD&Iを推進し、社会からの信頼を得て企業ブランドを高めることができる。

障害者雇用を「コスト」ではなく「投資」と捉え、就労移行支援というプロフェッショナルなパートナーと手を組むこと。それが、これからの時代を勝ち抜くための、賢明な経営判断と言えるでしょう。まずは一歩、浜松市内の就労移行支援事業所に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。

6. 浜松市の相談窓口・関連情報

障害者雇用に関するご相談は、以下の機関でも受け付けています。

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