仕事の悩み、発達障害の特性かも?浜松で「自分らしい働き方」を見つける第一歩
「なぜか他の人と同じようにできないんだろう…」
「仕事でケアレスミスが多くて、いつも上司に注意されてしまう」
「職場の人間関係がうまくいかず、孤立している気がする」
「会議の内容に集中できず、後で何が決まったのか分からなくなる」
このような悩みを抱え、自分を責めたり、働くこと自体に恐怖を感じたりしていませんか。もしあなたが静岡県浜松市、あるいはその周辺にお住まいで、こうした「働きづらさ」に長年苦しんでいるのなら、その原因はあなたの努力不足や性格の問題ではなく、発達障害の特性に起因しているのかもしれません。
発達障害は、生まれつきの脳機能の発達の偏りによるもので、決して「病気」や「本人の甘え」ではありません。むしろ「個性」の一環として捉え、適切な理解と支援があれば、その特性を強みとして活かすことも十分に可能です。しかし、その存在を知らないまま、あるいは誤解したままでは、社会生活の中で多くの困難に直面し、自己肯定感を失ってしまうことにも繋がりかねません。
この記事は、そんなあなたが「自分らしい働き方」を見つけるための羅針盤となることを目指しています。具体的には、以下の3つのステップで、あなたの次の一歩を力強く後押しします。
- 【知る】発達障害の主な種類と、それが仕事にどう影響するのかを正しく理解する。
- 【試す】日々の困りごとを具体的に軽減するための便利グッズやツールを知り、明日から実践する。
- 【繋がる】一人で抱え込まず、浜松市で利用できる専門的な公的サポート「就労移行支援」の存在を知り、自分に合った事業所を見つける方法を学ぶ。
この記事を読み終える頃には、漠然としていた不安の正体が明確になり、自分の特性を客観的に受け入れ、具体的な対策を講じる勇気が湧いてくるはずです。そして何より、「一人ではない」という安心感を得られるでしょう。さあ、浜松であなただけのキャリアを築くための第一歩を、ここから一緒に踏み出しましょう。
【最重要】発達障害の主な種類と仕事で直面する「困りごと」
「働きづらさ」の正体を突き止めるためには、まず自分自身が持つ特性を客観的に理解することが不可欠です。発達障害は、その特性の現れ方によっていくつかの種類に分類されます。ここでは、代表的な3つの種類「ASD(自閉スペクトラム症)」「ADHD(注意欠如・多動症)」「SLD(限局性学習症/学習障害)」について、その概要と仕事で直面しやすい具体的な「困りごと」を解説します。ご自身の経験と照らし合わせながら読み進めてみてください。
なお、これらの特性は重なり合って存在することも多く(併存)、明確に一つのタイプに分類できるとは限りません。例えば、SLD(限局性学習症)はADHD(注意欠如多動症)と併存しやすいと言われています。大切なのは、診断名に固執することではなく、自分の「得意」と「苦手」の傾向を把握することです。
ASD(自閉スペクトラム症):「空気が読めない」のではなく、独自のルールで生きている
概要
ASD(自閉スペクトラム症)は、かつてアスペルガー症候群などと呼ばれていたものも含む、広い概念です。主な特徴は、「社会的コミュニケーションや対人関係の困難」と「限定された反復的な興味や行動(こだわり)」の2つです。知的発達に遅れがない場合も多く、特定の分野で非常に高い能力を発揮することがある一方、対人関係や柔軟な対応が求められる場面で困難を感じやすい傾向があります。「空気が読めない」と評されることがありますが、それは相手を無視しているのではなく、表情や声のトーン、身振りといった非言語的な情報を読み取ったり、言葉の裏にある意図を推測したりすることが、脳の特性として苦手なためです。
仕事での具体的な困りごと例
- 曖昧な指示の理解が難しい:「いい感じに資料をまとめておいて」「適当なタイミングで報告して」といった抽象的な指示に対して、具体的に何を、いつまでに、どのレベルでやれば良いのか分からず、混乱してしまうことがあります。彼らにとっては、明確で具体的な指示が不可欠です。
- 急な予定変更やマルチタスクへの対応が苦手:一度決めた手順やスケジュール通りに進めることを得意としますが、予期せぬ変更や、複数のタスクを同時に進行させる状況では、思考が停止してパニックに陥ることがあります。
- 冗談や比喩、皮肉が通じない:言葉を文字通りに受け取る傾向があるため、社交辞令や冗談を真に受けてしまったり、相手の皮肉に気づかず真剣に返答してしまったりして、コミュニケーションに齟齬が生じることがあります。
- 感覚過敏による疲労:多くのASD当事者が感覚過敏を抱えています。オフィスの蛍光灯が眩しすぎる(視覚過敏)、周りの人の話し声やキーボードの音が気になって集中できない(聴覚過敏)、同僚の香水や昼食の匂いが耐えられない(嗅覚過敏)など、五感からの刺激が過剰なストレスとなり、極度に疲弊する原因となります。
- 興味の範囲が限定的:自分の関心がある分野には驚異的な集中力と知識を発揮する一方で、興味のない業務に対してはモチベーションを維持するのが非常に困難な場合があります。これが「わがまま」「マイペース」と誤解されることも少なくありません。
ADHD(注意欠如・多動症):「だらしない」のではなく、脳の特性
概要
ADHD(注意欠如・多動症)は、「不注意(集中力を持続させることが難しい)」「多動性(じっとしていることが苦手)」「衝動性(思いついたまま行動してしまう)」の3つを主な特徴とする発達障害です。これらの特性は、計画を立てて物事を実行する「実行機能」と呼ばれる脳の働きに関係しており、日常生活や社会生活に様々な影響を及ぼします。「だらしない」「落ち着きがない」「自己中心的」といった否定的な評価を受けやすいですが、本人の意思や努力の問題ではなく、脳の機能的な特性によるものです。
特性の現れ方によって、「不注意」が目立つタイプ、「多動・衝動性」が目立つタイプ、両方が混在するタイプに分けられます。特に大人の場合、子どもの頃に目立った「多動性」は内的な落ち着かなさ(そわそわ感)に変化し、「不注意」による問題が顕著になることが多いと言われています。
仕事での具体的な困りごと例
- ケアレスミスや忘れ物・失くし物が多い(不注意):書類の誤字脱字、計算ミス、メールの宛先間違いといった、注意すれば防げるはずのミスを繰り返してしまいます。また、重要な書類や備品をどこに置いたか忘れたり、会議の予定自体を忘れてしまったりすることも頻繁に起こります。
- 集中力が持続しない(不注意):単調な作業や、興味の持てない会議などで、すぐに注意が他のことに逸れてしまいます。周囲の物音や人の動きが気になったり、全く関係のないことを考え始めたりして、目の前のタスクに集中し続けることが困難です。
- じっとしているのが苦手(多動性):長時間のデスクワークや会議中、貧乏ゆすりをしたり、ペンを回し続けたり、頻繁に席を立ったりと、そわそわした行動が見られます。これは、脳を覚醒させるための無意識的な行動である場合があります。
- 思いつきでの発言や行動(衝動性):相手が話している最中に、自分の考えを遮って話し始めてしまったり、会議で議題と関係ないことを突然発言したりします。また、リスクをよく考えずに新しい仕事に手を出したり、衝動的に退職を決めたりすることもあります。
- 時間管理や計画性が極端に苦手(実行機能の問題):タスクの優先順位付けや、作業にかかる時間の見積もりが非常に苦手です。その結果、締め切り直前まで仕事に取りかかれなかったり(先延ばし)、複数の業務(マルチタスク)を抱えると何から手をつけていいか分からずパニックになったりします。
- 整理整頓ができない:デスクの上やPCのデスクトップが常に散らかっており、必要な書類やファイルがすぐに見つからない状態になりがちです。これは単なる「片付けが嫌い」なのではなく、情報を整理し、分類して、元の場所に戻すという一連のプロセスに困難があるためです。
SLD(限局性学習症/学習障害):「努力不足」ではなく、特定の学習能力の困難
概要
SLD(限局性学習症/学習障害)は、全般的な知的発達に遅れはないにもかかわらず、「読む」「書く」「計算する」といった特定の能力の習得と使用に著しい困難を示す発達障害です。本人の努力不足や、教育環境の問題、視覚・聴覚の障害が原因ではありません。困難は特定の領域に限局しているため、周囲からは「サボっている」「真面目にやっていない」と誤解されやすく、本人も「自分は頭が悪いんだ」と思い込んでしまうケースが少なくありません。
SLDは、困難を示す領域によって、主に以下の3つのタイプに分けられます。
- 読字障害(ディスレクシア):文字を読むことに困難がある。
- 書字表出障害(ディスグラフィア):文字を書くことに困難がある。
- 算数障害(ディスカリキュリア):計算や数学的な推論に困難がある。
これらの困難は、人によって現れ方が異なり、例えば同じ読字障害でも、スムーズに音読できない人もいれば、音読はできても内容を理解するのが難しい人もいます。
仕事での具体的な困りごと例
- 【読字障害(ディスレクシア)】
- メールやマニュアルを読むのに非常に時間がかかる:文字が歪んで見えたり、二重に見えたり、勝手に動いているように感じたりすることがあります。そのため、一文を読むのに何度も読み返す必要があり、他の人と同じ量の情報を処理するのに何倍もの時間がかかってしまいます。
- 読み間違えや読み飛ばしが多い:「わ」と「ね」のような形の似た文字を混同したり、行を飛ばして読んでしまったりするため、文章の意味を正確に捉えることができません。
- 読んでも内容が頭に入ってこない:文字を一つひとつ拾って読む(逐次読み)ことに脳のエネルギーの大半を使ってしまうため、文章全体として何が書かれているのかを理解するところまで追いつきません。
- 【書字表出障害(ディスグラフィア)】
- 報告書や議事録の作成が極端に苦手:頭の中では考えがまとまっているのに、それを文章として書き出すことが困難です。誤字脱字が非常に多く、文法的に不自然な文章になりがちです。
- 漢字を思い出せない、書き間違える:簡単な漢字でも、いざ書こうとすると形が思い出せなかったり、「へん」と「つくり」が逆になったりします(鏡文字)。手書きでの文字が読みにくい、という困難も伴います。
- 板書やメモが追いつかない:会議でホワイトボードに書かれた内容をノートに書き写したり、人の話を聞きながらメモを取ったりする作業が非常に苦手です。
- 【算数障害(ディスカリキュリア)】
- 売上計算や経費精算でミスが多い:簡単な暗算ができなかったり、筆算で桁をそろえられなかったり、繰り上がり・繰り下がりを間違えたりします。数字を扱う業務全般で、ケアレスミスとは言えないレベルの間違いが頻発します。
- 数量の概念把握が難しい:「割引率」「利益率」といった概念や、グラフ・図形から数的な情報を読み取ることが苦手です。そのため、データに基づいた分析や報告が困難な場合があります。
- 時間の管理や金銭の計算が苦手:日常生活レベルでも、お釣りの計算を間違えたり、予定の所要時間を見誤ったりすることがあります。
【重要】診断が全てではない
ここまで各障害の特性を解説してきましたが、大切なのは「自分はどの診断名に当てはまるか」と決めつけることではありません。発達障害の特性はスペクトラム(連続体)であり、人それぞれ現れ方は千差万別です。重要なのは、「自分の困りごとの背景には、どのような特性があるのか」を理解し、それを言語化できるようになることです。それが、次のステップである「具体的な対策」と「必要な支援の要請」に繋がるからです。
明日から試せる!発達障害の困りごとをサポートする便利グッズ&ツール【Amazonで買える】
自分の特性を理解したら、次はその「困りごと」を具体的に軽減するための工夫を試してみましょう。幸いなことに、現代には発達障害の特性を補うために開発された、あるいは応用できる便利なグッズやツールが数多く存在します。ここでは、前章で挙げた困りごとに対応し、かつAmazonなどで手軽に入手できるものを中心に紹介します。小さな工夫が、仕事のパフォーマンスや精神的な負担を大きく改善するきっかけになるかもしれません。
【時間管理・タスク管理】「うっかり」や「先延ばし」を防ぐ視覚的サポート
主にADHDの特性である「時間感覚の掴みにくさ」や「計画性の困難」を補うためには、情報を「見える化」し、直感的に理解できるツールが非常に有効です。
ADHDプランナー / 手帳
ADHDの脳の特性に合わせて設計された手帳です。一般的な手帳と異なり、「最優先事項」「今日やること」「ブレインダンプ(頭に浮かんだことを全て書き出すスペース)」「習慣トラッカー」といった項目が予め用意されています。これにより、タスクの優先順位付けが苦手な人でも、何から手をつけるべきかが明確になります。「やらなければいけないこと」で頭がいっぱいになるのを防ぎ、思考を整理するのに役立ちます。日付が印刷されていない「Undated(日付フリー)」タイプなら、使い始められなかった期間があっても無駄にならず、自分のペースで再開できるため特におすすめです。
ビジュアルタイマー
残り時間を色のついたディスクで視覚的に表示するタイマーです。ADHDの人は「時間の流れ」を体感として捉えるのが苦手なため、「あと10分」と言われてもピンとこないことがあります。ビジュアルタイマーは、減っていく色の面積で直感的に残り時間を把握できるため、「時間切れ」による焦りやパニックを防ぎます。「25分集中+5分休憩」を繰り返すポモドーロ・テクニックを実践する際の相棒としても最適で、集中力の維持に大きく貢献します。静音設計のものを選べば、オフィスでも気兼ねなく使えます。
キューブタイマー
サイコロのような形をしたタイマーで、各面に「5分」「10分」「25分」といった時間が予め印刷されています。使いたい時間を上にむけて倒すだけで、自動的にカウントダウンが始まります。ADHDの衝動性を逆手にとり、「やろう!」と思った瞬間に面倒な設定なしで即座に時間を計り始められるのが最大のメリットです。タスクに取り掛かるまでの心理的ハードルを劇的に下げてくれます。振動(バイブレーション)機能付きのものなら、静かな場所でも使用可能です。
【感覚過敏対策】刺激を減らして「疲れ」や「パニック」を予防する
主にASDの特性である感覚過敏は、目に見えないため周囲に理解されにくいですが、本人にとっては深刻な苦痛です。自分に合ったツールで物理的に刺激を遮断・軽減することが、心身の消耗を防ぎ、安定して働くための鍵となります。
ノイズキャンセリングヘッドホン / イヤーマフ
聴覚過敏のある人にとって、現代のオープンなオフィス環境は刺激の洪水です。同僚の話し声、電話の着信音、キーボードの打鍵音、空調の音…これらが全てノイズとなり、集中力を奪い、疲労を蓄積させます。ノイズキャンセリングヘッドホンは、これらの環境音を劇的に低減し、自分だけの静かな空間を作り出してくれます。音楽を流さず、ノイズキャンセリング機能だけを使うことも可能です。より強力な遮音性を求める場合や、見た目が気になる場合は、イヤーマフ(聴覚保護具)も有効な選択肢です。
偏光サングラス / PCメガネ
視覚過敏は、蛍光灯のちらつき、PCモニターの光、窓からの日差し、白い紙の反射など、様々な光刺激によって引き起こされます。偏光サングラスは、乱反射する光をカットする機能に優れており、特に屋外や窓際の席での眩しさを効果的に軽減します。一方、PC作業が中心の場合は、ブルーライトをカットするPCメガネが目の疲れや頭痛の緩和に役立ちます。レンズの色(ブラウン、グレーなど)によって見え方が変わるため、可能であれば実際に試着して、自分が最も楽に感じるものを選ぶのが理想です。
センサリートイ / フィジェットトイ
会議中や考え事をしている時など、手持ち無沙汰になると不安になったり、貧乏ゆすりや爪を噛むといった行動が出てしまったりすることはありませんか。センサリートイ(感覚おもちゃ)やフィジェットトイは、そうした手先の感覚刺激への欲求を満たし、不安や緊張を和らげるためのグッズです。オフィスで使う場合は、音がせず、目立たないものが望ましいでしょう。指にはめて回せるリング型、握りしめて感触を楽しむストレスボール、静かにスライドさせて遊ぶ磁気スライダーなど、様々な種類があります。自分に合ったものを見つけることで、心を落ち着かせ、思考を整理する助けになります。
【読み書き・整理整頓】苦手な作業のハードルを下げる工夫
SLDの「読み書き」の困難や、ADHDの「整理整頓」の苦手さは、根性で克服できるものではありません。しかし、特性に配慮されたツールを使うことで、作業のハードルを大きく下げることが可能です。
読みやすいノート(まほらノートなど)
白い紙の反射が眩しく感じる視覚過敏や、文字が詰まっていると読みにくいディスレクシアの特性を持つ人にとって、一般的なノートは非常に使いづらいものです。「まほらノート」に代表される発達障害に配慮したノートは、目に優しいクリーム色やラベンダー色の紙を使用したり、太い線と細い線を交互に配置して行を追いやすくしたりするなどの工夫が凝らされています。こうしたノートを使うことで、メモを取ったり、アイデアを書き出したりする際のストレスが軽減され、思考がスムーズになります。
ADHDクリーニングプランナー
「部屋を片付けたいのに、どこから手をつけていいか分からない」というのは、ADHDの特性を持つ人が抱えがちな悩みです。これは仕事におけるデスク周りの整理整頓にも通じます。ADHDクリーニングプランナーは、「キッチン」「寝室」といった場所ごとや、「毎日」「週一回」といった頻度ごとに、やるべき掃除タスクを細かく分解し、チェックリスト形式で管理できるようにしたノートです。大きなタスクを具体的な小さなステップに分けることで、「まずこれをやればいい」と行動を起こしやすくなります。この考え方は、仕事のプロジェクト管理にも応用できます。
おすすめ書籍:専門家や当事者の知恵を学ぶ
自分一人で悩まず、先人の知恵を借りることも非常に重要です。発達障害の当事者が自身の経験を元に編み出した仕事術や生活術、あるいは支援者が専門的知見から解説した書籍には、具体的なヒントが満載です。例えば、『発達障害・精神疾患がある子とその家族がもらえるお金・減らせる支出』のような本は、利用できる社会制度を知る上で非常に役立ちます。また、『発達障害の子の療育が全部わかる本』のような書籍は、発達障害の基礎知識を体系的に理解するのに役立ち、自分の特性を客観視する助けになります。まずは一冊、気になった本を手に取ってみることをお勧めします。
浜松市で探す「就労移行支援」- あなたの“働きたい”を専門的にサポート
セルフケアや便利グッズの活用は、日々の困りごとを軽減する上で非常に有効です。しかし、「自分に合った仕事を見つけたい」「就職活動の進め方が分からない」「働き始めても、また同じ失敗を繰り返すのではないか」といった、より根本的な課題に直面したとき、個人の努力だけでは限界を感じることも少なくありません。そんな時に頼りになるのが、国が定める公的な福祉サービス「就労移行支援」です。
就労移行支援ってどんな場所?
就労移行支援とは、簡単に言えば、障害のある方が一般企業で働くことを目指す際に利用できる「就職のための学校」や「リハビリ施設」のような場所です。原則として最長2年間、専門のスタッフのサポートを受けながら、就職に必要な準備を体系的に進めることができます。
重要なのは、単にPCスキルなどを教えるだけの場所ではないという点です。むしろその本質は、自分の障害特性と向き合い、それと上手に付き合いながら働くための方法を身につけ、自信を回復させることにあります。
費用の心配もほとんどありません。国の制度により利用料は所得に応じて決まりますが、厚生労働省のデータによれば、利用者の約9割が自己負担0円(無料)でサービスを利用しています。18歳以上の場合、所得の算定は本人と配偶者のみが対象となるため、親と同居していても無料で利用できるケースがほとんどです。さらに、浜松市には独自の交通費助成制度もあり、経済的な負担を気にせず訓練に集中できる環境が整っています。
受けられる支援の具体例
就労移行支援事業所で受けられるサポートは多岐にわたりますが、主に以下の4つの柱で構成されています。
- 自己理解と職業準備性の向上:専門の支援員との定期的な面談やプログラムを通じて、自分の得意・不得意、ストレスを感じる状況、必要な配慮などを客観的に整理します。生活リズムの安定や体調管理の方法など、安定して働くための土台作りからサポートしてもらえます。
- 職業スキルの習得:ビジネスマナー、コミュニケーション訓練、電話応対といった基本的なビジネススキルのほか、多くの事業所でWordやExcelなどのPCスキルを学ぶことができます。近年では、プログラミングやWebデザインといった専門スキルに特化した事業所も増えています。
- 就職活動の包括的サポート:自分の特性に合った職種や企業を一緒に探すところから、履歴書・職務経歴書の添削、模擬面接、企業インターン(職場実習)の機会提供、実際の面接への同行まで、就職活動のあらゆる段階で手厚いサポートが受けられます。
- 就職後の職場定着支援:就労移行支援の最大の強みの一つが、この「定着支援」です。就職はゴールではなくスタート。就職後も、新しい環境に慣れるまでの間、定期的な面談などを通じてサポートが続きます。法律上、就職後6ヶ月間の定着支援が義務付けられており、さらに「就労定着支援」という別のサービスを組み合わせることで、最長3年半にわたって支援を受けることが可能です。これにより、就職後に生じる悩みや困難を早期に解決し、長く安定して働き続けることを目指します。
障害種別によって就職後1年の定着率には差が見られます。特に精神障害や発達障害の場合、環境の変化への適応に時間がかかる傾向があり、専門的な定着支援の重要性が高いことがわかります。
【特性別】就労移行支援で受けられるプログラム例
優れた就労移行支援事業所では、画一的なプログラムではなく、一人ひとりの障害特性に合わせた個別支援計画に基づいて訓練が行われます。ここでは、発達障害の特性ごとに、どのようなプログラムが有効か、その一例を紹介します。
- ASD(自閉スペクトラム症)の方向けのプログラム例:
- コミュニケーション訓練:グループワークやロールプレイングを通じて、「報告・連絡・相談(報連相)」の具体的なタイミングや言い方を練習します。また、曖昧な指示を受けた際に、相手を不快にさせずに具体的な内容を確認するための質問方法なども学びます。
- ソーシャルスキルトレーニング(SST):職場での適切な人との距離の取り方、雑談への参加の仕方、断り方など、暗黙のルールとなりがちな社会的な技能を、理論と実践で学びます。
- ストレスコーピング:感覚過敏や予期せぬ出来事によってストレスを感じた際に、パニックにならずに冷静さを取り戻すための自分なりの対処法(例:静かな場所に移動する、深呼吸する)を見つけ、実践する練習をします。
- ADHD(注意欠如・多動症)の方向けのプログラム例:
- タスク管理・時間管理トレーニング:スマートフォンのアプリや手帳、チェックリストなど、様々なツールの中から自分に合ったものを見つけ、タスクの優先順位付けやスケジュール管理の方法を習得します。「大きなタスクを小さなステップに分解する」といった具体的な手法を学びます。
- 自己管理術の習得:ミスをしやすい場面を自己分析し、ダブルチェックの仕組みを作る、指差し確認を習慣化するなど、不注意によるミスを減らすための具体的な工夫を身につけます。また、整理整頓が苦手な人向けに、書類やデータのファイリング方法を学ぶプログラムもあります。
- 衝動性コントロール:何か発言・行動する前に一呼吸置く練習(アンガーマネジメントなど)や、自分の感情の波を記録して客観視する訓練などを通じて、衝動的な行動をコントロールする方法を学びます。
【浜松市版】特色で選ぶ!主要な就労移行支援事業所
浜松市内には、障害のある方の「働きたい」という思いを支える就労移行支援事業所が数多く存在します。ポータルサイトによると、市内には29件(2024年時点)の事業所があり、それぞれが独自の強みや特色を持っています。事業所の多くはJR浜松駅や新浜松駅周辺に集中しており、公共交通機関でのアクセスも良好です。
ここでは、数ある事業所の中から、特に実績や特色が明確で、ウェブ上でも名前が挙がることが多い主要な事業所を「タイプ別」に紹介します。これは優劣をつけるランキングではなく、あなたが事業所を選ぶ際の「ものさし」を提供するためのものです。最終的には必ずご自身の目で見学・体験し、相性を確かめることが最も重要です。
タイプ1:大手・実績重視型 – 豊富な選択肢と安定感を求めるなら
LITALICOワークス (浜松 / 新浜松 / 浜松市役所前)
業界最大手の一つで、累計17,000人以上の就職者を支援してきた実績があります。個々の強みや関心事を活かす支援を重視し、4,500社以上の豊富なインターン先を開拓しています。
- 特徴:圧倒的な実績と全国規模のネットワークが最大の強み。200種類以上のプログラムから一人ひとりに合わせた支援計画を作成し、多様な業界・職種への就職をサポートします。就職後の定着率も88%(2022年度全体)と高く、安定した質の高い支援が期待できます。浜松市内にはアクトタワー内を含め3つの拠点があり、通いやすい場所を選べます。
- 向いている人:初めて就労移行支援を利用する方、多くの選択肢の中から自分に合ったキャリアを見つけたい方、大手ならではの安心感を重視する方。
- 所在地例:LITALICOワークス 浜松 (浜松市中央区板屋町111-2 アクトタワー6F)
タイプ2:発達障害特化型 – 自分の特性と深く向き合いたいなら
ディーキャリア (浜松オフィス)
発達障害のある方の支援に特化しているのが最大の特徴です。障害特性による働きづらさを克服するための「ライフスキルコース」、実践的な「ワークスキルコース」、就職活動に特化した「リクルートコース」という3つのコースで、あなたらしい働き方を見つけるサポートをします。
- 特徴:発達障害の特性理解に深く根ざした専門的なプログラムが魅力です。特に、仕事のスキルを学ぶ前に、感情のコントロールや対人スキル、体調管理といった「働くための土台」を築く「ライフスキルコース」に力を入れています。自分の特性を弱みではなく「強み」に変えるためのアプローチを学びたい方に最適です。
- 向いている人:発達障害の診断を受けている、あるいはその傾向が強いと感じている方。自分の特性と根本から向き合い、自己理解を深めたい方。
- 所在地:浜松市中央区鍛冶町319-28 遠鉄鍛冶町ビル5階B-1
タイプ3:個別支援・地域密着型 – 自分のペースでじっくり学びたいなら
アクセスジョブ (浜松駅前 / 浜松田町)
教育福祉分野で50年の歴史を持つ「クラ・ゼミ」が運営。完全個別支援制を特徴とし、約500種類以上の豊富なプログラムから自分に合った訓練を選べます。就職率・職場定着率ともに90%以上という高い実績を誇ります。
- 特徴:「完全個別支援制」を掲げ、集団プログラムが苦手な人でも安心して自分のペースで学習を進められる環境が整っています。eラーニング教材が充実しており、PCスキルや資格取得など、目標に応じた訓練を主体的に選べます。また、運営母体が教育機関であるため、支援の質の向上にも力を入れています。
- 向いている人:集団での活動に強いストレスを感じる方。自分のペースで学習計画を立て、じっくりとスキルを身につけたい方。
- 所在地例:アクセスジョブ浜松駅前 (浜松市中央区鍛冶町140-4 浜松Aビル 北館5F A室)
タイプ4:定着支援・実践重視型 – 「働き続ける」ことに重点を置くなら
ウェルビー (浜松駅前センター / 浜松駅前第2センター)
全国に多くの事業所を展開する老舗の一つ。浜松駅前のプレスタワー14階という絶好のロケーションにセンターを構え、素晴らしい眺望の中で訓練を受けられます。一人ひとりの不安や希望に寄り添った丁寧な支援に定評があります。
- 特徴:就職後6ヶ月の定着率が91.5%という高い数字が示す通り、「働き続ける」ためのサポートが手厚いことで知られています。特に精神・発達障害のある方への支援に強みを持ち、自己理解を深めながら、働く上で必要なスキルを段階的に習得することを目指します。就職後の生活に不安を感じている方にとって、心強い存在です。
- 向いている人:過去に就職したが長続きしなかった経験がある方。就職後の安定した生活まで見据えたサポートを希望する方。
- 所在地例:ウェルビー浜松駅前センター (浜松市中央区旭町11-1 浜松プレスタワー14階)
IT特化型という新しい選択肢も
近年、浜松市内でもプログラミングやWebデザインといった専門スキルを学べるIT特化型の事業所が登場しています。例えば「リライトキャンパス」などがその一例です。在宅勤務やフリーランスといった多様な働き方に繋がる可能性もあり、特定のスキルを武器にキャリアを築きたい方にとっては魅力的な選択肢と言えるでしょう。
後悔しないための事業所選びと利用までの5ステップ
自分に合った就労移行支援事業所を見つけることは、就職への道のりを大きく左右する重要な決断です。しかし、手続きが複雑そうだと感じて、一歩を踏み出すのをためらってしまうかもしれません。ここでは、後悔しないための事業所選びのポイントと、利用開始までの具体的な流れを分かりやすく解説します。
失敗しない事業所選びの3つのポイント
数多くの事業所の中から「ここだ!」と思える場所を見つけるために、見学や相談の際には以下の3つのポイントを必ずチェックしましょう。
- 見学・体験を必ず行う(最も重要)
ウェブサイトやパンフレットの情報だけでは、実際の雰囲気は分かりません。多くの卒業生が「見学や体験利用が決め手になった」と語っています。実際に足を運び、自分の目で確かめることが何よりも大切です。- チェック項目:事業所は清潔で落ち着けるか? スタッフは親身に話を聞いてくれるか? 他の利用者はどんな雰囲気で過ごしているか? 自分もこの場所で過ごせそうか?
- プログラム内容が自分に合っているか確認する
あなたの目標によって、必要なプログラムは異なります。「PCスキルを身につけたい」「コミュニケーション能力を高めたい」「まずは生活リズムを整えたい」など、自分の目的と事業所のプログラム内容が合致しているかを確認しましょう。- チェック項目:自分が学びたいスキルを習得できるか? プログラムは集団形式か個別形式か? 自分のペースで進められそうか?
- 就職実績と定着率をチェックする
支援の質を客観的に測る指標として、就職実績(どのような企業・職種に、何人就職したか)と、就職後の定着率(就職後も長く働き続けられているか)は非常に重要です。全国平均の就職率が約22.4%であるのに対し、実績のある事業所は50%以上の高い数値を公表していることもあります。- チェック項目:就職者数や就職率、定着率の具体的なデータを公開しているか? 自分の希望する業界・職種への就職実績はあるか? 定着支援の具体的な内容(面談頻度など)はどうか?
利用開始までの簡単5ステップ
「利用したい!」と思える事業所が見つかったら、次は利用手続きに進みます。手続きは主に市区町村の窓口で行います。一見複雑に見えますが、一つひとつのステップは難しくありません。通常、申請から利用開始までは1〜2ヶ月程度かかります。
- Step1: 相談
まずは、お住まいの区役所にある社会福祉課や、市が指定する相談支援事業所に「就労移行支援を利用したい」と相談します。ここで、サービス内容や手続き全体の流れについて説明を受けられます。どこに相談すればよいか分からない場合は、浜松市障害者就労支援センター「ふらっと」に連絡するのも良いでしょう。 - Step2: 申請
利用したい事業所を(複数見学した上で)決めたら、再度、区役所の社会福祉課でサービスの利用申請を行います。申請書やマイナンバーが分かる書類、障害者手帳(持っている場合)などが必要になりますが、手帳がなくても医師の診断書や意見書で申請可能です。 - Step3: サービス等利用計画案の作成
申請後、市から「サービス等利用計画案」の提出を求められます。これは、どのような目標で、どんなサービスを、どのくらいの頻度で利用したいかをまとめた「支援の設計図」です。通常、指定特定相談支援事業所の相談支援専門員が面談(アセスメント)を行い、あなたの希望を丁寧にヒアリングしながら無料で作成を手伝ってくれます。 - Step4: 支給決定と受給者証の交付
提出された計画案などを基に、浜松市がサービスの支給を決定します。決定されると、利用できるサービスの種類や期間が記載された「障害福祉サービス受給者証」が自宅に郵送されます。 - Step5: 契約・利用開始
受給者証が届いたら、利用を決めた就労移行支援事業所に提示し、正式に利用契約を結びます。これで、いよいよ個別支援計画に基づいた訓練がスタートします。最初は週数日の短い時間から始め、体調に合わせて少しずつ通所日数を増やしていくなど、柔軟に対応してもらえます。
【2025年10月から】新サービス「就労選択支援」が始まります
2025年10月から「就労選択支援」という新しいサービスが本格的に始まります。これは、就労移行支援などのサービスを利用する前に、短期間の作業体験などを通じて、自分の得意・不得意や必要な配慮を専門家と一緒に整理するサービスです。目的は、利用者が自分に最も合った働き方や支援を主体的に選べるようにすること。今後、就労移行支援を利用する際には、原則としてこの就労選択支援を先に利用することになります。就職後のミスマッチを防ぐための重要なステップとなるでしょう。
まとめ:一人で悩まないで。特性理解と専門家のサポートで、あなたらしいキャリアを築こう
この記事では、発達障害の基本的な種類から、仕事で直面する具体的な困りごと、それを乗り越えるための便利グッズ、そして浜松市で利用できる専門的なサポート「就労移行支援」について、多角的に解説してきました。
最も重要なメッセージは、あなたの「働きづらさ」は、決してあなたのせいではないということです。その背景にある発達障害の特性を正しく理解することが、困難を乗り越えるための全ての始まりです。そして、その道のりは一人で歩む必要はありません。
- まずは、ビジュアルタイマーやノイズキャンセリングヘッドホンのような便利グッズを試して、日々の小さなストレスを軽減してみましょう。
- そして、セルフケアだけでは解決が難しい「就職」や「働き続けること」への不安については、就労移行支援という専門家の力を借りることをためらわないでください。
新しい一歩を踏み出すことに「怖い」「不安」と感じるのは、あなたがそれだけ真剣に自分の未来と向き合っている証拠です。その気持ちを否定する必要はありません。しかし、その漠然とした不安は、「知る」「相談する」「体験する」という具体的な行動を重ねることで、必ず乗り越えることができます。
浜松市には、あなたの「働きたい」という思いを支えるためのリソースが豊富にあります。この記事が、そのリソースへと繋がるための最初の地図となれば幸いです。
次の一歩として、まずは浜松市の公的な相談窓口に連絡してみることから始めてみませんか。例えば、就労に関する総合的な相談ができる浜松市障害者就労支援センター「ふらっと」や、お住まいの各区役所の福祉事業所(社会福祉課)が、あなたの最初の心強い味方になってくれるはずです。
一人で抱え込まず、専門家と繋がること。それが、あなたらしいキャリアを築き、輝ける未来を手に入れるための、最も確実な道筋です。


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