「浜松市で、障害があっても正社員として安定して働きたい」——。そう願う方にとって、今、大きなチャンスの波が訪れています。国の法改正による企業の採用意欲の高まりと、浜松市独自の強力な支援体制が、あなたの「働きたい」という想いを現実にするための追い風となっています。
しかし、情報が多すぎて「何から始めればいいのかわからない」「自分に合った仕事や会社はどう探せばいいのか」と不安を感じる方も少なくないでしょう。この記事では、2025年最新の公的データと資料に基づき、浜松市で障害のある方が正社員を目指すための具体的な道筋を、網羅的かつ分かりやすく解説します。現状のデータ分析から、市の公式計画、具体的な支援機関の活用法、そして実際に採用に積極的な企業リストまで、あなたの就職活動を成功に導くためのすべてがここにあります。
第1章:データで見る浜松市の障害者雇用と正社員のリアル
就職活動を始める前に、まずは客観的なデータから浜松市を取り巻く障害者雇用の「今」を正確に把握することが重要です。国の法改正から地域の実情まで、最新の動向を詳しく見ていきましょう。
国の動向:法定雇用率引き上げがもたらす「採用拡大期」
現在、障害者雇用市場全体が活況を呈している最大の理由は、障害者雇用促進法の改正にあります。この法律は、企業に対して従業員数に一定の割合(法定雇用率)を乗じた数以上の障害者を雇用することを義務付けています。そして、この法定雇用率が段階的に引き上げられているのです。
民間企業の法定雇用率は、2024年4月に2.3%から2.5%へ、さらに2026年7月には2.7%へと引き上げられる予定です。これに伴い、雇用義務の対象となる企業も、従業員40人以上から37.5人以上へと拡大します。
法定雇用率を達成できない企業には、不足する1人あたり月額50,000円の納付金が課せられます。 このため、多くの企業がこれまで以上に採用に積極的になっており、求職者にとっては「就職のチャンスが大きく拡大している時期」と言えます。
静岡県・浜松市の現状:製造業が牽引、精神障害者の雇用が急増
この国の動きと連動し、静岡県および浜松市の障害者雇用も着実に進展しています。静岡労働局が2024年12月に公表したデータによると、県内民間企業の実雇用率は2.43%、雇用されている障害者の数は14,882.0人に達し、いずれも過去最高を更新しました。
特に注目すべきは、障害種別の内訳です。身体障害者や知的障害者の雇用が安定して推移する一方、精神障害者の雇用が前年比13.2%増と著しく伸びています。 これは、うつ病や発達障害などへの社会的な理解が深まり、企業側がそれぞれの特性に応じた働き方を整備し始めたことを示す、雇用の「質」の変化と言えるでしょう。
産業別に見ると、「ものづくりのまち」浜松を象徴するように、静岡県では製造業が障害者雇用全体の約4割(39.3%)を占めています。 自動車や楽器などの大手メーカーとその関連企業が、安定した雇用の受け皿となっています。
一方で、課題も存在します。民間企業への指導・啓発を行う立場である公的機関の雇用率が、法定を下回っているのです。2024年6月時点のデータでは、浜松市長事務部局が2.48%(法定2.80%)、浜松市教育委員会が1.58%(法定2.70%)となっており、官民一体でのさらなる取り組みが求められています。
正社員雇用の実態:求人は増加傾向、国の後押しも
では、浜松市における「正社員」の求人はどうでしょうか。大手求人サイトIndeedでは87件、求人ボックスでは57件の「障害者採用・正社員」の求人が掲載されており(2025年12月時点)、多くの企業が正社員としての雇用を視野に入れていることがわかります。
こうした企業の動きを後押しするのが、国の「キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)」です。これは、有期雇用で働く障害のある方を正社員へ転換させた場合に、企業へ助成金が支給される制度です。例えば、重度障害のある方を正社員に転換した場合、中小企業には最大120万円が支給されます。 この制度の存在は、企業が正社員登用を検討する際の大きなインセンティブとなり、求職者にとってもキャリアアップの可能性を広げるものです。
第2章:浜松市の羅針盤「第4次障がい者計画」が示す未来
浜松市は、障害のある方の暮らしや就労を地域全体で支えるため、市の施策の「設計図」となる「第4次浜松市障がい者計画」(計画期間:2024~2029年度)を策定しました。 この計画には、正社員を目指すあなたにとって重要な方針が数多く盛り込まれています。
計画が掲げる2大方針:「雇用促進」と「支援の質の向上」
計画の中で「雇用・就労」は重要な柱として位置づけられ、主に2つの大きな方針が示されています。
- 就労支援と雇用促進:ハローワークや後述する支援センターと連携し、一人ひとりの希望や適性に合った職場探しを後押しします。フルタイムの正社員だけでなく、短時間勤務など多様な働き方の選択肢を広げることも目指しています。
- 就労支援施設等に対する支援:就労移行支援事業所などが質の高いサービスを提供できるよう市が支援を強化し、施設全体のレベルアップを図ります。これにより、利用者はより専門的で効果的なサポートを受けられるようになります。
これは、市が「就職先の数を増やす」ことと「就職準備の質を高める」ことの両輪で、障害者雇用を強力に推進していくという強い意志の表れです。
新たな支援「就労選択支援」と市の具体的な数値目標
この計画で特に注目すべきは、2025年度から本格的に開始される新サービス「就労選択支援」です。 これは、「自分にどんな仕事が向いているかわからない」といった悩みを持つ方に対し、専門員が面談や作業体験を通じて本人の能力や適性を客観的に評価(アセスメント)し、本人がより良い働き方を選択できるよう支援するものです。
さらに市は、具体的な成果目標として「福祉施設から一般就労への移行」を掲げ、明確な数値目標を設定しています。例えば、一般企業への就職を目指す訓練を行う「就労移行支援事業所」の利用者のうち、実際に一般就労へ移行する人の数を、2021年度の144人から2026年度には189人へ増やすという目標を立てています。これは、市が具体的な数値を意識しながら、福祉施設での訓練から企業で働く「一般就労」(その多くは正社員や契約社員)へのステップアップを積極的に推進していくという強い決意を示しています。
第3章:正社員への道を切り拓く!浜松市の具体的な支援策と相談窓口
「働きたい」という気持ちはあっても、何から始めればいいか分からない。そんな時、浜松市にはあなたの就職活動を力強くサポートしてくれる専門機関が多数存在します。一人で抱え込まず、これらの支援を段階的に活用することが成功への近道です。
ステップ1:最初の相談は「ふらっと」へ
どこに相談すればいいか迷ったら、まずは浜松市障害者就労支援センター「ふらっと」に連絡してみましょう。 ここは、浜松市が委託して運営している公的な総合相談窓口で、障害者手帳の有無にかかわらず、無料で相談できます。
「ふらっと」の役割
「ふらっと」は、直接仕事を紹介する場所ではありません。あなたの状況や悩みを丁寧に聞き、情報を整理し、次に紹介する「就労移行支援事業所」など、あなたに最適な専門機関へ繋ぐ「ナビゲーター」の役割を担います。ハローワークへの同行支援なども行っており、就職活動の第一歩として最も頼りになる存在です。
ステップ2:スキルを磨く「就労移行支援事業所」
「ふらっと」などから紹介される最も代表的な支援機関が「就労移行支援事業所」です。一般企業への就職を目指す障害のある方を対象に、最長2年間、就職に必要なスキル習得から職場定着までを一貫してサポートする、いわば「就職のための学校」です。
浜松市内には29箇所以上の事業所があり、それぞれに特色があります。
- 提供される支援:自己分析、PCスキルやプログラミング等の職業訓練、ビジネスマナー、コミュニケーション訓練、企業実習、就職活動サポート、就職後の定着支援など。
- 事業所の例:全国展開で実績豊富な「LITALICOワークス」、ITスキルに特化した「リライトキャンパス」、個別支援に強みを持つ「アクセスジョブ」など、多様な選択肢があります。
- 利用方法:多くの場合、障害者手帳がなくても医師の診断書や自治体の判断で利用可能です。利用料は所得に応じて異なりますが、多くの方が無料で利用しています。
まずは複数の事業所を見学・体験し、自分に合った場所を見つけることが重要です。事業所があなたの強みや適性を見出し、正社員就職への道を具体的にサポートしてくれます。
ステップ3:求人探しと応募のチャネル
スキルと自信がついてきたら、いよいよ求人探しです。ここでも多様なチャネルを活用しましょう。
- ハローワーク浜松:障害のある方向けの専門窓口が設置されています。専門の職員が、あなたの特性に合った求人を紹介してくれます。
- 障害者就職面接会:浜松市とハローワークが共同で、毎年9月と2月頃にアクトシティ浜松などで大規模な面接会を開催しています。 障害に理解のある多くの企業と1日で直接話せる絶好の機会です。
- 民間の転職エージェント・求人サイト:atGP、dodaチャレンジなどの専門エージェントは、非公開の正社員求人を多く持っています。Indeedや求人ボックスなどのサイトで「障害者採用 浜松市 正社員」と検索するのも有効です。
生活面も含めた総合的なサポート
「仕事だけでなく、生活リズムや金銭管理も不安…」という方には、障害者就業・生活支援センター「だんだん」がおすすめです。浜松市・湖西市を管轄し、就職に関する支援と、健康管理などの日常生活に関する支援を一体的に行ってくれる心強い味方です。
第4章:浜松市で障害者採用に積極的な企業と働き方のトレンド
浜松市には、法定雇用率の達成という義務を超え、障害者一人ひとりが輝ける職場づくりに情熱を注ぐ企業が数多く存在します。ここでは具体的な企業名や働き方の最新トレンドを紹介します。
業界別に見る浜松の主要企業
各種求人サイトや公表資料を基に、浜松市およびその周辺で障害者採用(正社員含む)に積極的な企業を業界別に紹介します。
- 製造業:浜松の基幹産業であり、求人も豊富です。
- スズキ株式会社:浜松を代表するグローバル企業。事務補助から技術系職種まで幅広く募集。
- 本田技研工業株式会社:二輪・四輪の開発・製造拠点。製造ラインや開発補助など多様な職種。
- 浜松ホトニクス株式会社:光技術の世界的企業。本社を浜松に構え、技術職や事務職で採用。
- 株式会社一条工務店:住宅メーカー。事務や軽作業のサポートなどで安定した雇用を提供。
- 事務・サービス・小売業:本社機能や店舗での求人が見られます。
- 株式会社スクロール:浜松市に本社を置く通販大手。人事、総務、データ入力などの事務職。
- リコージャパン株式会社:全国展開の大手。浜松事業所でも一般事務職などを募集。正社員登用制度あり。
- 遠州鉄道株式会社:交通、不動産、流通などを手掛ける地域の中核企業。
- IT分野:在宅勤務など柔軟な働き方が可能な成長分野です。
- CLINKS株式会社:ITエンジニアやWebデザイナーを在宅勤務の正社員として募集。
新しい働き方の選択肢:テレワークとテクノロジーの活用
近年、働き方は大きく多様化しています。特に通勤や対人コミュニケーションに困難を抱える方にとって、テクノロジーを活用した新しい働き方は大きな希望となります。
- テレワーク・在宅勤務:前述のCLINKS社のように、ITスキルを活かして全国どこからでも正社員として働ける企業が登場しています。
- 特定短時間労働:週10時間~20時間未満の短時間から働き始める制度です。体力的に長時間の勤務が難しい方でも、自分のペースでキャリアをスタートできます。
- 分身ロボットの活用:外出が困難な方が自宅からロボットを遠隔操作し、接客などを行う実証事業も進められています。
先進企業から学ぶ、働きやすい職場づくりのヒント
浜松市には、障害者雇用で全国的に注目される先進企業があります。彼らの取り組みは、自分に合った職場を見つける上でのヒントになります。
京丸園株式会社:「農福連携」のパイオニア
「障がい者に働きやすい環境をつくると、作業の効率が上がり、会社業績が向上する」という信念のもと、「ユニバーサル農業」を実践。25名以上の障害のある従業員が活躍し、障害の有無に関わらず誰もが働きやすい環境が、会社全体の生産性向上に繋がることを証明しています。
株式会社ティージー:個々の特性に合わせた仕事の創出
自動車部品の組立を行う同社は、「障害のある人のために社内の仕事を切り出すのではなく、障害のある人にできそうな仕事を外部から見つけてくる」というユニークなスタイルを実践。片手でも安全に作業ができる専用治具を開発するなど、一人ひとりの特性に合わせたきめ細やかな配慮が、長期的な定着に繋がっています。
まとめ:一人で悩まず、まずは一歩を踏み出そう
本記事で見てきたように、浜松市における障害者雇用、特に正社員への道は、かつてないほど開かれつつあります。法定雇用率の引き上げという社会全体の追い風を受け、企業の採用意欲は高まっています。そして何より、浜松市自身が「第4次障がい者計画」という明確な設計図を掲げ、官民一体となってあなたの「働きたい」を全力でサポートする体制を整えています。
重要なのは、一人で悩み、一人で抱え込まないことです。あなたの状況を理解し、専門的な知識で伴走してくれるサポーターが浜松にはたくさんいます。
まずは、この記事で紹介した浜松市障害者就労支援センター「ふらっと」に電話を一本かけることから始めてみませんか。そこから、就労移行支援事業所の見学、ハローワークでの相談へと、道は自然と拓けていきます。多様な選択肢と手厚い支援を活用し、あなたらしい働き方、そして正社員としての安定した未来を、ぜひその手で掴んでください。


コメント