発達障害のある子どもの将来が心配…浜松市の就労支援と親の心構え

終わらない不安、でも一人ではありません

「この子が自分がいなくなった後、一人で生きていけるだろうか」「仕事を見つけても、長く続けられるだろうか」…発達障害のあるお子さまを持つ親御さんにとって、将来への不安は尽きないものかもしれません。特に「就労」と「自立」は、子どもの成長とともに現実味を帯びてくる、大きく、そして切実なテーマです。

周囲に相談しても「まだ先のこと」と流されたり、同じ悩みを共有できる人がいなかったりと、孤立感を深めている方も少なくないでしょう。その不安は、決してあなた一人のものではありません。多くの親が同じように悩み、葛藤しています。

しかし、希望はあります。ここ浜松市には、お子さまの「働きたい」という気持ちを支え、社会への一歩を力強く後押ししてくれる専門的な支援が存在します。この記事では、その中でも特に有効な「就労移行支援」を中心に、浜松市で利用できるサポート体制や、親としての心構えを具体的にお伝えします。漠然とした不安を、未来への確かな一歩に変えるための情報を、一緒に見ていきましょう。

なぜ私たちは不安になるのか？「親なき後」と「8050問題」の現実

子どもの将来を思う親の不安は、単なる心配性から来るものではありません。そこには、社会構造的な問題や、発達障害の特性に起因する現実的な課題が横たわっています。

親が抱える3つの具体的な不安

親御さんが抱える不安は、大きく3つに分類できます。

1. 経済的な不安：親が亡くなった後、子どもは生活していけるだけの収入を得られるのか。障害年金だけでは心許ない、という声は多く聞かれます。
2. 生活面の不安：金銭管理や身の回りのこと、対人関係の構築など、日常生活を一人で営んでいけるのか。特に、困ったときに「助けて」と言えるかどうかが大きな鍵となります。
3. 仕事の継続性への不安：たとえ就職できても、職場の人間関係や環境の変化に適応できず、早期離職に至ってしまうのではないか。この不安は、発達障害の特性を理解しているからこそ生まれるものです。

社会問題化する「8050問題」と発達障害

近年、「8050問題」という言葉を耳にする機会が増えました。これは、80代の親が50代のひきこもりの子どもの生活を支え、親子共々社会から孤立し、困窮してしまう状況を指します。

ひきこもりに至る原因はさまざまですが、発達障害の特性によるコミュニケーションの困難さや、職場でのつまずきが引き金となり、二次障害としてひきこもり状態になるケースも少なくありません。

「親なき後」の問題は、こうしたひきこもりの長期化・高齢化と密接に関連しており、決して他人事ではないのです。だからこそ、子どもが若いうちから社会とつながり、専門的な支援を受けながら自立への道を歩み始めることが、将来のリスクを回避するために極めて重要になります。

発達障害のある方の就労の現状と可能性

不安な側面ばかりではありません。社会の理解が進むにつれて、発達障害のある方の雇用は確実に拡大しています。厚生労働省の調査によると、民間企業で雇用されている発達障害者の数は年々増加しており、2018年から2023年の間に3万9,000人増加し、推計9万1,000人に達しました。

これは、発達障害のある方が持つ独自の視点や集中力、特定の分野での高い能力が、企業にとって価値あるものとして認識され始めている証拠です。しかし、一方で課題も残ります。それは「職場定着」の問題です。障害特性への理解不足やミスマッチから、残念ながら早期に離職してしまうケースも依然として存在します。

だからこそ、「ただ就職すること」をゴールにするのではなく、「自分らしく、長く働き続けること」を目指す必要があります。そのために不可欠なのが、本人の特性と企業のニーズを的確に結びつけ、就職後も継続的にサポートする専門的な支援、すなわち「就労移行支援」なのです。

不安を希望に変える「就労移行支援」とは？

「就労移行支援」は、障害者総合支援法に基づき、一般企業への就職を目指す障害のある方（原則18歳～64歳）を対象とした福祉サービスです。単に仕事を探すだけでなく、働くために必要なスキルを身につけ、自分に合った職場を見つけ、就職後も安心して働き続けられるようにサポートします。

就労移行支援のサービス概要

• 目的：一般企業への就職と、その後の職場定着。
• 内容：
  • 個別支援計画の作成：一人ひとりの希望や特性に合わせた支援計画を作成。
  • 職業訓練：ビジネスマナー、PCスキル、コミュニケーションスキルなどの習得。
  • 自己理解プログラム：自分の得意・不得意を理解し、必要な配慮を考える。
  • 職場探しと実習：ハローワークと連携した求人紹介や、企業での職場体験。
  • 就職活動サポート：応募書類の添削や模擬面接など。
  • 就職後の定着支援：就職後も定期的な面談を行い、本人と企業の橋渡し役を担う（最長3年半）。
• 利用期間：原則として最長2年間。
• 利用料金：前年度の世帯所得に応じて決まりますが、多くの方（約9割）が自己負担なく無料で利用しています。

なぜ就労移行支援が有効なのか？驚くべき職場定着率

就労移行支援の最大の強みは、その高い職場定着率にあります。専門スタッフが本人の適性を見極め、企業との間に立って環境調整を行うことで、ミスマッチによる早期離職を防ぎます。ディーキャリアやLITALICOワークスといった大手の就労移行支援事業所を利用した場合の半年後の定着率は約90%に達します。これは、発達障害者全体の平均定着率（71.5%）を大きく上回る数値です。この差こそが、専門的サポートの価値を物語っています。

浜松市で頼れる就労移行支援事業所【2選】

浜松市内にも、質の高いサービスを提供する就労移行支援事業所が複数あります。ここでは、特に実績が豊富で、発達障害への支援に強みを持つ2つの事業所をご紹介します。

【実績と総合力】LITALICOワークス

業界のリーディングカンパニーとして、全国で120以上の事業所を展開。これまでに累計17,000人以上の就職を支援してきた豊富な実績とノウハウが強みです。

• 特徴：幅広い障害種に対応。200種類以上のプログラムから、一人ひとりに最適なものを提供。企業との連携も強く、多様な職種への就職実績があります。
• 定着支援：就職後も最長3年半のサポートを提供し、半年後の職場定着率は約90%という高い水準を維持しています。
• 浜松市内の拠点：浜松駅周辺に「LITALICOワークス浜松」「LITALICOワークス新浜松」、さらに「LITALICOワークス浜松市役所前」と3つの事業所があり、通いやすい場所を選べます。

「まずは自分に合う仕事を見つけたい」「幅広い選択肢の中から考えたい」という方に適しています。

【発達障害特化】ディーキャリア

「大人の発達障害」に特化した支援が最大の特徴です。障害の特性を「弱み」ではなく「強み」に変える独自のプログラムで、多くの利用者の「やりがいのある仕事」とのマッチングを実現しています。

• 特徴：「ライフスキルコース」で自己理解とコミュニケーションを学び、「ワークスキルコース」で実践的な業務スキルを習得。発達障害の特性理解に深い専門性を持つスタッフが揃っています。
• 高い定着率：就職後6ヶ月の職場定着率は92.2%（2021年度実績）と業界トップクラス。特性に合った職場選びと手厚い定着支援の成果です。
• 浜松市内の拠点：「ディーキャリア浜松オフィス」がJR浜松駅から徒歩4分という通いやすい立地にあります。

「自分の発達障害の特性と向き合い、それを活かせる仕事を見つけたい」という方に最適なパートナーとなるでしょう。

どちらを選ぶ？2大事業所の比較

どちらの事業所も素晴らしい実績を持っています。以下の比較表を参考に、お子さまの特性や希望により合いそうな方へ、まずは見学・相談に行ってみることをお勧めします。

就労移行支援だけじゃない！浜松市の公的サポート体制

就労移行支援事業所は強力な味方ですが、それ以外にも浜松市には頼れる公的機関があります。これらを連携して利用することで、より多角的なサポートが受けられます。

国の制度：4つの就労系福祉サービス

障害者総合支援法には、就労移行支援の他に以下のサービスがあります。お子さまの状態に合わせて選択することが可能です。

• 就労継続支援A型：企業等で働くことが困難な方に、雇用契約を結んで働く場所を提供。
• 就労継続支援B型：雇用契約を結ばずに、比較的簡単な作業を自分のペースで行い、工賃を得る。
• 就労定着支援：就職後6ヶ月以降も、生活面や仕事上の課題について相談・支援を受けるサービス。

浜松市の相談窓口

どこに相談すれば良いか分からない場合、まずは以下の窓口に連絡してみましょう。

• 浜松市発達相談支援センター「ルピロ」：発達障害に関する専門的な相談窓口。ライフステージ全般にわたる相談が可能です。（TEL: 053-459-2721）
• 障害者就業・生活支援センター「だんだん」：就業面と生活面の両方から一体的な支援を提供。企業や福祉機関とのネットワークを持っています。（TEL: 053-482-7227）
• ハローワーク浜松（専門援助部門）：障害のある方のための専門窓口があり、求人紹介や就職相談に応じてくれます。

また、浜松市では毎年「ともにはたらくフェア」といった就労支援イベントも開催されており、事業所や企業の担当者と直接話せる良い機会となっています。

専門的な支援につながることは非常に重要ですが、同時に親自身の心構えも、子どもの自立を後押しする大きな力となります。

「自助・共助・公助」の視点を持つ

子育ての責任を一人で、あるいは家庭内だけで背負う必要はありません。「自助（自分で頑張る）」には限界があります。積極的に「共助（就労移行支援事業所などの民間サポート）」や「公助（行政の福祉サービス）」とつながり、チームで子どもを支えるという視点を持ちましょう。抱え込まずに外部の力を借りることは、親自身の心の健康を守るためにも不可欠です。

子どもの力を信じ、過干渉にならない

心配のあまり、子どものやることに先回りして手や口を出してしまう「過保護・過干渉」は、かえって子どもの自立を妨げる悪循環につながることがあります。

失敗する経験も、成長には欠かせない要素です。少し距離を置いて見守り、本人が助けを求めてきたときにサポートする。そんな「手放す勇気」が、子どもの中に「自分でやり遂げる力」を育てます。

「お金」の問題と向き合う

「親なき後」の最大の不安要素であるお金の問題にも、早めに向き合っておきましょう。具体的には、以下の制度の活用を検討することが有効です。

• 障害年金：病気やけがによって生活や仕事などが制限される場合に受け取れる年金。就労していても受給できる場合があります。
• 成年後見制度・家族信託：本人の判断能力が不十分な場合に、財産管理や契約などを代行してもらう制度。将来の安心につながります。

これらの制度についても、前述の相談窓口や、LITALICOライフのような専門機関で相談することができます。

まとめ：最初の一歩は「相談」から

発達障害のあるお子さまの将来、特に就労への道は、決して平坦ではないかもしれません。しかし、この記事でご紹介したように、浜松市にはお子さまの「働きたい」という思いを現実に変えるための、力強いサポート体制が整っています。

重要なのは、一人で抱え込まず、早期に専門家とつながることです。就労移行支援事業所は、そのための最も頼りになるパートナーです。高い専門性と豊富な実績を持つスタッフが、お子さま一人ひとりの可能性を最大限に引き出し、自立への道を共に歩んでくれます。

漠然とした不安を抱え続ける日々から、具体的な希望を見出す未来へ。そのための最初の一歩は、とてもシンプルです。まずは、気になる事業所の「無料相談・見学」に足を運んでみませんか？ 専門家と話すことで、きっと心の霧が晴れ、進むべき道が見えてくるはずです。