障害のある方やそのご家族が、地域で安心して暮らしていくためには、同じ悩みや経験を持つ「仲間」とのつながりが大きな力になります。前回の記事では、浜松市における家族会やピアサポートの基本的な役割についてご紹介しました。今回はその続編として、より専門的なグループの紹介から、ピアサポートの経験を「働く」ことへどう繋げていくか、そしてその具体的なステップとなる就労移行支援について深く掘り下げていきます。
浜松市の多様なニーズに応える専門グループ
浜松市には、特定の障害や課題に焦点を当てた、さまざまな自助グループや支援団体が存在します。自分と同じような状況にある人々と出会うことで、より深い共感や具体的な情報の交換が期待できます。
精神障害に特化したグループ
精神障害のある方やそのご家族が、孤立せずに支え合える場が浜松市には複数あります。
- NPO法人 浜松地区精神保健福祉会明生会
家族会活動の中心的な役割を担う団体です。家族同士の話し合いや相談、学習会などを通じて、当事者の回復と家族の生活の質向上を目指しています。特に「メンタルヘルスグループ結(ゆい)の会」は、当事者と家族が気軽に集える参加無料の会として、毎月第3日曜日に開催されています。連絡先: 浜松市中央区西浅田1-9-9 / 電話: 053-442-1988 - 公益社団法人静岡県精神保健福祉会連合会(もくせい会)
県内各地の家族会の連合組織で、浜松市にも事業所を構えています。浜松事業所では、就労継続支援B型事業も行っており、働くことを通じた社会参加も支援しています。連絡先: 浜松市南区小沢渡町2923-4 / 電話: 053-449-4681 - ソーシャルフットボールチーム「はまかぜciao’s」
スポーツを通じて仲間との絆を深め、自信を回復する場です。精神障害のある方を対象としており、浜松市を中心に活動しています。体を動かすことが好きな方におすすめです。
発達障害や特定の課題を持つ方のためのグループ
発達障害の特性や、家族の中での立場など、より細分化されたニーズに応えるグループも活動しています。
- 静岡きょうだい会
病気や障害のある兄弟姉妹を持つ「きょうだい」のためのピアサポートグループです。オンラインと静岡県内での座談会を定期的に開催し、特有の悩みや経験を共有できる貴重な場となっています。 - 摂食障害のピアサポート
浜松医科大学の医師や心理士と連携し、摂食障害からの回復者をピアサポーターとして養成するプロジェクトが始動しています。専門的な知見に基づいた安心できるサポートが期待されます。
身体障害や難病、その他のグループ
身体的な障害や難病を抱える方々、またそのご家族にとっても、仲間との交流は大きな支えとなります。
- 浜松ボッチャ倶楽部COOL
パラリンピックの正式種目でもある「ボッチャ」を通じて、障害の有無や年齢に関わらず交流できる場を提供しています。重度の身体障害がある方でも楽しめるスポーツです。 - 浜松脳卒中友の会(あゆみの会)
脳卒中の後遺症を持つ当事者と家族が集い、講演会や旅行、食事会などを通じて交流を深めています。専門医から学ぶ機会も設けられています。 - 静岡がんセンターのピア・サポート
浜松市外ですが、がん患者やその家族を対象とした質の高いピアサポートを提供しています。オンライン参加や、浜松から通える範囲でのイベントもあり、がんという共通の体験を持つ人々と語り合えます。
「仲間」から「スキル」へ:ピアサポートを学ぶ・活かす
ピアサポートは、支援を受けるだけでなく、自らが支援する側に回ることで、新たな自己肯定感やスキルの獲得につながることがあります。浜松市周辺でも、ピアサポーターとしての知識や技術を学べる機会が提供されています。
「ピア」とは仲間を意味しています。「サポート」とは支援することを意味しています。専門家による「支援」とは違い、仲間として互いに助け合うという意味での「支援」のこと言います。
ピアサポーターになるには?浜松市周辺の養成講座
ピアサポーターになるために必須の資格はありませんが、体系的に学ぶことで、より効果的な支援ができるようになります。
- 日本ピア・サポート学会静岡支部
浜松市内で「ピア・サポートトレーナー養成講座」を定期的に開催しています。コミュニケーションスキルや傾聴の技法など、対人支援の基礎を実践的に学べます。 - 静岡県のピアカウンセラー養成講座
県が主催する講座で、例えば聴覚に障害のあるお子さんを持つ保護者を対象とした講座など、特定の分野に特化したものもあります。 - はままつミモザ・ピア・アクティビスト養成講座
女性の健康問題(生理、避妊など)に関する知識を学び、仲間と交流しながら学ぶ講座です。特定のテーマに関心がある方におすすめです。
大学での取り組み:静岡大学のピアサポート活動
静岡大学では、障害のある学生を支援するためのピアサポート活動が活発です。「共生社会とピアサポート」という講義を開講し、支援に必要な知識や方法を学ぶ機会を提供しています。こうしたアカデミックな場での取り組みは、ピアサポートの質の向上と社会的な認知度アップに貢献しています。
ピアサポートから見えてくる「働く」という選択肢
仲間と支え合う経験は、自己理解を深め、自信を回復させる大きなきっかけとなります。そして、その自信は「社会の中で自分の役割を見つけたい」「経済的に自立したい」という、「働く」ことへの意欲につながっていきます。
なぜ「働く」ことが次のステップになるのか?
ピアサポート活動を通じて得られるものは、安心感だけではありません。
- 自己肯定感の向上: 誰かの役に立つ経験は、「自分も社会に貢献できる」という実感をもたらします。
- コミュニケーション能力の向上: 人の話を聴き、自分の経験を語る中で、自然と対話のスキルが磨かれます。
- 問題解決能力の育成: 仲間と共に課題に向き合うことで、一人では見つけられなかった解決策を発見する力が養われます。
これらの力は、すべて「働く」上で非常に重要なスキルです。ピアサポートは、社会復帰や就労への貴重な準備期間となり得るのです。
ピアサポートの経験が活かせる職場とは?
ピアサポートの経験は、特に「人」と関わる仕事で大きな強みとなります。ピアカウンセラーや支援員としての道も開かれています。
浜松市で「働く」を具体的にサポートする就労移行支援事業所
「働きたい」という気持ちが芽生えたとき、次の一歩を具体的に後押ししてくれるのが就労移行支援事業所です。浜松市内にも、あなたの「働きたい」を力強くサポートする事業所が数多く存在します。
就労移行支援とは?家族会やピアサポートとの違い
家族会やピアサポートが「支え合い、共感し合う場」であるのに対し、就労移行支援は「就職するためのスキルを身につけ、就職活動を成功させるための場」です。主な違いは以下の通りです。
- 目的: 就労移行支援のゴールは、一般企業への就職とその後の定着です。
- 内容: 個別の支援計画に基づき、ビジネスマナー、PCスキル、コミュニケーション訓練、職場実習など、就職に直結するプログラムが提供されます。
- 専門性: 専門の支援員が、求人探しから応募書類の作成、面接対策、就職後のフォローまで一貫してサポートします。
家族会で得た安心感を土台に、就労移行支援で具体的なスキルを身につける。このステップが、社会への大きな一歩となります。
浜松市でピアサポートに理解のある就労移行支援事業所の例
浜松市内には、ピアサポートの重要性を理解し、プログラムに取り入れている事業所もあります。当事者同士で悩みを共有する時間が設けられているなど、安心して通える環境が整っています。
- LITALICOワークス(浜松・新浜松・浜松市役所前)
業界最大手で、浜松市内に3つの事業所を展開しています。豊富なプログラムと実績が魅力です。ブログでは「ぴあトーク」という利用者同士の交流会について触れられており、仲間とのつながりを大切にしていることが伺えます。拠点: 浜松駅、新浜松駅、市役所前などアクセス良好な立地。 - ディーキャリア浜松オフィス
発達障害のある方の支援に特化しているのが特徴です。「働き続けるためのプログラム」を提供しており、ピアサポートに関するコラムを発信するなど、当事者目線の支援を重視しています。場所: JR「浜松駅」より徒歩4分。
これらの事業所以外にも、浜松市には多くの就労移行支援事業所があります。大切なのは、見学や体験を利用して、自分に合った雰囲気やプログラムの場所を見つけることです。
まとめ:あなたに合った「つながり」と「次の一歩」を見つけよう
一人で悩みを抱え込まず、まずは同じ経験を持つ仲間とつながること。浜松市には、そのための家族会やピアサポートグループが数多く活動しています。そこで得られる安心感や自己肯定感は、あなたの次の一歩を踏み出すための大きなエネルギーになるはずです。
そして、「働きたい」という気持ちが生まれたら、ぜひ就労移行支援という選択肢を検討してみてください。専門的なスキルを学び、手厚いサポートを受けながら就職を目指すことができます。
ステップ1: 家族会やピアサポートで、安心できる「居場所」と「仲間」を見つける。
ステップ2: 自信がついてきたら、就労移行支援事業所を見学・体験し、「働く」ための準備を始める。
ステップ3: 自分に合った職場で、社会の一員として新たな一歩を踏み出す。
この道のりは一人ではありません。浜松市には、あなたを支える多くの人々や場所があります。まずは、この記事で紹介したグループや事業所に、気軽に問い合わせてみてはいかがでしょうか。あなたの「次の一歩」を、私たちは応援しています。
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