「自分に合った仕事を見つけたい」「安定して働き続けたい」——。障がいのある方が浜松市で就職を目指すとき、大きな支えとなるのが「就労移行支援」などの福祉サービスです。そして、これらのサービスを利用する上で重要な鍵となるのが「障害者手帳」です。
この記事では、浜松市で障害者手帳をこれから申請する方や、更新を考えている方に向けて、手帳の種類から具体的な手続き、相談窓口までを網羅的に解説します。この記事を読めば、ご自身の状況に合った手帳をスムーズに取得し、就労に向けた確かな一歩を踏み出すための知識が身につきます。
なぜ障害者手帳が就労への第一歩なのか?
障害者手帳は、単なる証明書ではありません。障がいのある方が社会で自立した生活を送るために、様々な支援を受けるための「パスポート」のような役割を果たします。特に就労においては、以下のような重要な意味を持ちます。
- 障害者雇用枠への応募:多くの企業が設けている「障害者雇用枠」は、障害者手帳を持つことが応募の条件です。この枠で採用されると、障がいの特性に合わせた業務内容や労働時間、通院への配慮など、を受けやすくなり、安定して働きやすい環境を得られます。
- 就労支援サービスの利用:就職に必要なスキルを学ぶ「就労移行支援」や、支援を受けながら働ける「就労継続支援(A型・B型)」といった障害福祉サービスを利用する際に、手帳を持っていることで手続きがスムーズに進む場合があります。
- 経済的支援の活用:税金の控除や公共料金の割引など、生活を支える経済的なメリットを受けることができます。これにより、安心して就職活動に専念できます。
浜松市では、に基づき、障がいのある方の自立と社会参加を推進しています。障害者手帳の取得は、市が提供する様々な支援を活用し、自分らしい働き方を見つけるための重要なスタートラインと言えるでしょう。
障害者手帳の3つの種類と対象者
障害者手帳には、障がいの種類に応じて主に3つのタイプがあります。ご自身の状況がどれに当てはまるかを確認しましょう。
身体障害者手帳
身体の機能に永続する一定以上の障がいがあると認められる方に交付されます。障がいの程度によって1級から6級までの等級があります。
- 対象となる障がいの例:視覚、聴覚・平衡機能、音声・言語・そしゃく機能、肢体不自由、心臓、じん臓、呼吸器、ぼうこう・直腸、小腸、免疫、肝臓機能の障がいなど。
- 特徴:原則として更新はありませんが、障がいの状態に変化が予想される場合は再認定が行われることがあります。
療育手帳
知的障がいがあると判定された方に交付される手帳です。児童相談所または障害者更生相談所によって判定が行われます。
- 対象となる方:発達期(おおむね18歳まで)に知的機能の障がいが現れ、日常生活に支障が生じている方。
- 等級:障がいの程度に応じてA(最重度・重度)とB(中度・軽度)に区分されます。
- 特徴:手帳には次期判定年月が記載されており、定期的な再判定が必要です。
精神障害者保健福祉手帳
精神疾患や発達障がいにより、長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある方に交付されます。障がいの程度により1級から3級までの等級があります。
- 対象となる障がいの例:統合失調症、うつ病、双極性障害、てんかん、薬物関連障害、高次脳機能障害、発達障がい(自閉症、学習障害など)など。
- 特徴:有効期間は2年間で、更新手続きが必要です。更新は有効期限の3ヶ月前から申請できます。
【種類別】浜松市での障害者手帳の申請手続きフロー
ここでは、浜松市で各手帳を新規に申請する際の基本的な流れを解説します。必要書類や手順は手帳の種類によって異なりますので、ご注意ください。
共通で必要なもの:
・写真1枚(タテ4cm×ヨコ3cm、1年以内に撮影した上半身・無帽・無背景のもの)
・マイナンバー(個人番号)が確認できる書類(マイナンバーカード、通知カードなど)
・身元確認書類(運転免許証、パスポートなど)
・印鑑(本人が署名する場合は不要なこともあります)
1. 身体障害者手帳の申請
- 診断書用紙の入手:お住まいの区の区役所(社会福祉課)で「身体障害者手帳診断書・意見書」の用紙を受け取ります。
- 指定医師の診断:身体障害者福祉法第15条の規定に基づく指定医師の診断を受け、診断書を作成してもらいます。
- 区役所へ申請:必要書類を揃えて、お住まいの区の区役所(社会福祉課)に申請します。代理人による申請も可能です。
- 審査・認定:浜松市リハビリテーション支援センター(旧:身体障害者更生相談所)で審査が行われ、障がいの等級が認定されます。
- 手帳の交付:申請から約1〜2ヶ月後に、区役所の窓口で手帳が交付されます。
2. 療育手帳の申請
- 区役所へ申請:必要書類を持参し、お住まいの区の区役所(社会福祉課)に申請します。本人の成育歴がわかる方の同席が必要です。
- 判定日の調整:後日、判定機関から連絡があり、面接の日程を調整します。
・18歳未満の方:浜松市児童相談所
・18歳以上の方:浜松市リハビリテーション支援センター(旧:障害者更生相談所) - 判定面接:指定された判定機関で、本人と保護者(成育歴のわかる方)が面接を受けます。知能検査や日常生活に関する聞き取りが行われます。
- 手帳の交付:面接から約3週間後に、区役所の窓口で手帳が交付されます。
3. 精神障害者保健福祉手帳の申請
- 診断書の準備:精神科の医師に「精神障害者保健福祉手帳用診断書」を作成してもらいます。初診日から6ヶ月以上経過している必要があります。
※精神障がいを理由に障害年金を受給している場合は、年金証書の写しなどで診断書を省略できることがあります。 - 区役所へ申請:必要書類を揃えて、お住まいの区の区役所(社会福祉課)に申請します。
- 審査・認定:静岡県精神保健福祉センターで審査が行われます。
- 手帳の交付:申請から約2ヶ月後に、区役所の窓口で手帳が交付されます。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、郵送での申請も受け付けられています。詳細は市のウェブサイトをご確認ください。
浜松市の相談・申請窓口一覧
障害者手帳に関する相談や申請は、お住まいの区を担当する福祉事業所の社会福祉課が窓口となります。ご不明な点があれば、まずはお電話で問い合わせてみましょう。
担当事業所 | 窓口 | 所在地 | 電話番号 |
---|---|---|---|
中央福祉事業所 | 中央区役所内 | 中央区元城町103-2 | 053-457-2057 |
東行政センター内 | 中央区流通元町20-3 | 053-424-0176 | |
西行政センター内 | 中央区雄踏一丁目31-1 | 053-597-1159 | |
南行政センター内 | 中央区江之島町600-1 | 053-425-1485 | |
浜名福祉事業所 | 浜名区役所内 | 浜名区貴布祢3000 | 053-585-1697 |
北行政センター内 | 浜名区細江町気賀305 | 053-523-2898 | |
天竜福祉事業所 | 天竜区役所内 | 天竜区二俣町二俣481 | 053-922-0024 |
障害者手帳がもたらすメリット:就労支援を中心に
障害者手帳を取得すると、就労を目指す上で様々なメリットがあります。これらを活用することで、経済的な負担を軽減し、より自分に合った働き方を見つけやすくなります。
- 就労支援サービスの利用促進: 浜松市内の就労移行支援事業所や就労継続支援事業所では、手帳を持つことで利用手続きが円滑に進むことが多く、専門的な訓練やサポートを受けやすくなります。
- 障害者雇用枠での就職: 手帳を持つことで、障害への配慮がある企業への就職の道が拓けます。これは、一般枠とは別の採用ルートであり、安定した就労に繋がりやすいという大きな利点があります。
- 税金の控除・減免: 所得税や住民税において、本人または扶養者がを受けることができます。また、相続税や贈与税の優遇措置もあります。
- 公共料金等の割引: JRやバスなどの公共交通機関の運賃割引、携帯電話の基本使用料割引、有料道路の通行料金割引など、生活に密着した割引サービスが受けられます。
これらの支援は、就職活動中や就職後の生活の安定に直結します。手帳の取得は、社会的なサポートを活用して自立を目指すための有効な手段です。
よくある質問(FAQ)
手帳がなくても就労移行支援は利用できますか?
はい、利用できる場合があります。 障害者手帳を持っていなくても、医師の診断書や意見書、あるいは自立支援医療を受けていることなどを証明できれば、自治体の判断で就労移行支援などの福祉サービスを利用できることがあります。ただし、サービス利用には「障害福祉サービス受給者証」が別途必要です。手帳があった方が利用できるサービスの選択肢が広がったり、手続きがスムーズに進んだりするメリットは大きいです。まずは事業所や市区町村の窓口に相談してみることをお勧めします。
手帳を持つことのデメリットはありますか?
手帳を持つこと自体に法的な不利益はありません。手帳を持っていることを職場や他人に伝える義務もありません。しかし、一部には「障がい者というレッテルを貼られるのではないか」という心理的な抵抗を感じる方もいらっしゃいます。一方で、手帳を開示して障害者雇用枠で働くことで、必要な配慮を受けながら安心して働けるという大きなメリットがあります。ご自身の状況や考え方に応じて、手帳をどのように活用するかを選択することが大切です。
申請から交付までどのくらいかかりますか?
手帳の種類や審査状況によって異なりますが、浜松市の情報によると、おおよその目安は以下の通りです。
- 身体障害者手帳:申請から約1ヶ月~2ヶ月程度
- 療育手帳:判定面接から約3週間
- 精神障害者保健福祉手帳:申請から約2ヶ月程度
診断書の準備期間なども考慮し、余裕を持って手続きを進めることをお勧めします。
まとめ:自分に合った働き方を見つけるために、まずは相談から
障害者手帳は、浜松市で就労を目指すあなたにとって、心強い味方となります。手帳を取得することで、障害者雇用枠という選択肢が生まれ、就労移行支援をはじめとする様々な福祉サービスを活用しやすくなります。
手続きが複雑に感じられるかもしれませんが、この記事で紹介したように、浜松市には各区役所に頼れる相談窓口があります。一人で悩まず、まずは専門の職員に相談することから始めてみましょう。
あなたの「働きたい」という気持ちをサポートするための第一歩が、障害者手帳の申請です。このガイドが、あなたの新しいキャリアへの扉を開く一助となれば幸いです。
そして、手帳の取得が見えてきたら、次は具体的な就職活動の準備です。浜松市内には、あなたの状況や希望に寄り添い、就職から職場定着までをサポートしてくれる就労移行支援事業所が数多くあります。自分に合った事業所を見つけることが、成功への近道です。
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