本人が就労に意欲がない時、家族はどうすれば?浜松市の相談窓口と対応法

「働きたくない」は本心か?ご家族の悩みに寄り添う

「子どもが仕事に就かず、家に引きこもりがちになっている」「病気や障害を理由に、働く意欲を失ってしまったようだ」「どう接すればいいのか、何から始めればいいのか分からない」。

ご本人の就労について、このような深い悩みを抱えているご家族は少なくありません。先の見えない状況に、不安や焦りを感じるのは当然のことです。しかし、ご本人が口にする「働きたくない」という言葉は、必ずしも本心ではないかもしれません。

その言葉の裏には、過去の失敗体験による自信の喪失、対人関係への強い不安、あるいは心身のエネルギーが枯渇している状態など、様々な要因が隠されていることが多くあります。単に「怠けている」と捉えるのではなく、その背景にある「動けない理由」を理解しようとすることが、解決への第一歩となります。

この記事では、静岡県浜松市でご家族の就労問題に悩む方々に向けて、ご本人の心理的背景を読み解きながら、ご家族としてできる具体的な対応法、そして浜松市で利用できる公的な相談窓口を詳しく解説します。一人で抱え込まず、適切な支援とつながることで、状況は必ず良い方向へ動き出します。

なぜ本人は動けないのか?考えられる5つの心理的背景

ご本人が就労への一歩を踏み出せない背景には、複雑な心理が絡み合っています。ご家族がその要因を理解することは、適切なサポートを見つける上で非常に重要です。

1. 失敗への恐怖と自信の喪失

過去に仕事が長続きしなかったり、職場でつらい経験をしたりしたことが、トラウマになっているケースです。「また失敗するのではないか」「自分には何もできない」という無力感に苛まれ、新しい挑戦を恐れてしまいます。これは、「仕事に就いても長続きがしない方」が抱える典型的な悩みです。

2. 心身の不調とエネルギー不足

障害や病気の症状そのものが、働く意欲を削いでいる可能性があります。生活リズムの乱れ、慢性的な疲労感、気分の落ち込みなどにより、就職活動に必要なエネルギーが枯渇している状態です。まずは治療に専念し、心身の状態を安定させることが最優先課題となります。

3. 社会や人との関わりへの不安

「職場での人付き合いがうまくいかない」「人前で話すのが極度に怖い」といった、コミュニケーションに対する強い不安も大きな障壁です。不安障害などを抱える方にとっては、職場という環境自体が大きなストレス源となり得ます。社会との接点を長期間失っている場合、その不安はさらに増大します。

4. 将来への見通しの欠如

「自分にどんな仕事が向いているのか分からない」「何をしたいのかが見つからない」という状態です。特に、就労経験が少ない場合やブランクが長い場合、自分の強みや適性を自己分析することは困難です。キャリアプランを描けないままでは、行動に移す動機が生まれません。

5. 支援への不信感や情報不足

過去に支援機関に相談したものの、良い結果に繋がらなかった経験から、「どうせ相談しても無駄だ」という不信感を抱いていることがあります。また、そもそもどのような支援サービスが存在するのか、情報が本人に届いていないケースも少なくありません。自ら助けを求める声を上げられない状態にあることも考えられます。

家族ができること・してはいけないこと:信頼関係を築く4つの原則

ご本人の意欲がない時、ご家族の対応一つで状況は大きく変わります。焦りからくる言動が、かえって本人を追い詰めてしまうこともあります。ここでは、信頼関係を再構築し、次の一歩を後押しするための基本原則をご紹介します。

ご家族にまず心がけていただきたいのは、「一番の理解者であるために、まずは『見守る』」ということです。そして、「専門家と連携し、一人で抱え込まない」こと。この2つが非常に重要になります。

  1. 【Do】安心できる環境を作り、見守る
    まずは本人が安心して過ごせる家庭環境を整えることが最優先です。規則正しい生活を無理強いするのではなく、本人のペースを尊重し、小さな変化や努力を認めましょう。「あなたの味方だよ」というメッセージを伝え続けることで、本人の孤立感は和らぎます。
  2. 【Don’t】一方的に責めたり、問い詰めたりしない
    「なぜ働かないの?」「いつになったら働くの?」といった言葉は、本人を追い詰めるだけです。本人はすでに自分自身を責めていることが多く、家族からのプレッシャーは逆効果になります。原因追及ではなく、本人の気持ちに寄り添う姿勢が大切です。
  3. 【Do】家族が先に情報を集め、選択肢を提示する
    本人が情報収集する気力がない場合、ご家族が先に動くことが有効です。浜松市にはどのような相談窓口や支援サービスがあるのかを調べ、「こんな場所があるみたいだけど、一度話だけでも聞いてみない?」と、あくまで選択肢の一つとして穏やかに提示してみましょう。
  4. 【Do】一人で抱え込まず、専門家と連携する
    ご家族だけで問題を解決しようとすると、共倒れになりかねません。客観的な視点を持つ専門家の力を借りることで、糸口が見つかることが多々あります。ご家族自身が相談できる場所を知っておくことも、心の余裕につながります。

【浜松市版】焦らず相談できる公的機関・支援窓口リスト

浜松市には、障害のある方の就労をサポートする様々な機関が連携して支援体制を築いています。いきなり就職を目指すのではなく、まずは気軽に相談できる場所から訪ねてみることが大切です。

浜松市の就労支援ネットワーク:どこで何を相談できる?

浜松市の支援機関は、それぞれ役割が異なります。ご本人やご家族の状況に合わせて、適切な窓口を選ぶことが重要です。以下の図は、相談の段階に応じた主な支援機関の役割を示しています。

具体的な相談窓口

上記の図で示した各段階に対応する、浜松市の主要な相談窓口です。ご家族だけでも相談可能な場合が多いので、まずは電話で問い合わせてみましょう。

相談段階 機関名 特徴 連絡先
① 初期相談
(生活・就労全般)
浜松市障害者就労支援センター ふらっと 浜松市の委託事業。仕事に関する幅広い相談に対応。これから就職を目指す方、在職中の方、ご家族からの相談も可能。 053-589-3028
① 初期相談
(生活・就労全般)
障害者就業・生活支援センター だんだん 国・県の委託事業。就業面と生活面を一体的に支援。「働きたいけどどうしたら…」という悩みから相談できる。 053-545-3150
② 制度利用
(福祉サービス申請)
各区役所の社会福祉課 就労移行支援などの障害福祉サービスを利用するための申請窓口。制度に関する正式な説明を受けられる。 中央区: 053-457-2058 他
④ 就職活動
(求人紹介)
ハローワーク浜松 障害のある方向けの専門窓口があり、職業相談、職業紹介、就職後のフォローアップを行う。 053-457-5158

「就労移行支援」が、意欲がない状態からの一歩になり得る理由

様々な相談窓口がある中で、特にご本人が就労への意欲や自信を失っている場合に有効な選択肢となるのが「就労移行支援」です。

就労移行支援は、障害者総合支援法に基づく国の福祉サービスで、一般企業への就職を目指すための準備を行う場所です。ハローワークのように直接仕事を紹介するのではなく、就職に必要なスキルや自信を、本人のペースに合わせて育んでいくことに重点を置いています。

就労移行支援とは?
一般企業への就職を希望する65歳未満の障害のある方が対象。原則2年間、職業訓練や自己理解プログラム、職場体験などを通じて、就職準備から就職後の定着までをサポートするサービスです。利用者の約9割は自己負担なく利用しています。

なぜ、意欲がない状態からでも就労移行支援が有効なのでしょうか。その理由は以下の通りです。

  • 理由1:いきなり「働く」のではなく「準備」から始められる
    まずは事業所に通って生活リズムを整えることからスタートできます。ビジネスマナーやPCスキルといった職業訓練だけでなく、ストレス対処法を学んだり、自分の障害特性を理解したりと、働くための土台をじっくり作ることができます。
  • 理由2:同じ悩みを持つ「仲間」と出会える
    事業所には、同じように就労に悩みを抱える仲間がいます。一人ではないと感じられる環境は、孤立感を和らげ、「自分も頑張ってみよう」という前向きな気持ちを引き出すきっかけになります。
  • 理由3:多様なプログラムで「できること」を発見できる
    軽作業、事務作業、プログラミング、デザインなど、事業所によって特色あるプログラムが用意されています。様々な体験を通じて、これまで気づかなかった自分の興味や得意なこと(適性)を発見し、自信を取り戻すことができます。
  • 理由4:専門スタッフが伴走してくれる安心感
    支援員が一人ひとりに合わせた「個別支援計画」を作成し、本人と家族に寄り添いながらサポートを進めます。定期的な面談を通じて、悩みや不安をいつでも相談できる専門家がいることは、大きな心の支えとなります。

浜松市内には、大手から地域密着型、IT特化型まで、20か所以上の就労移行支援事業所が存在します。まずは見学や体験利用を通じて、ご本人に合った雰囲気の場所を探すことから始めてみてはいかがでしょうか。

まとめ:ご家族がまず一歩を踏み出すことが、未来を変える鍵

ご本人が就労への意欲を失い、動けなくなっている時、ご家族が感じる焦りや不安は計り知れません。しかし、その状況を動かす力は、ご家族の「正しい情報」と「適切な行動」の中にあります。

大切なのは、一人で、そして家族だけで抱え込まないことです。浜松市には、あなたの家族を支えるための支援ネットワークが確かに存在します。

まずは、この記事でご紹介した「ふらっと」や「だんだん」といった相談しやすい窓口に、ご家族だけでも連絡を取ってみてください。専門家と話すことで、客観的なアドバイスが得られ、ご家族自身の心も軽くなるはずです。

そして、もしご本人が少しでも前向きな兆しを見せたら、「就労移行支援」という選択肢をそっと提示してみてください。そこは、社会復帰へのプレッシャーを感じることなく、自分のペースで自信を回復できる場所です。

焦らず、比べず、諦めず。ご家族が踏み出すその小さな一歩が、ご本人の未来を照らす大きな光となります。まずは相談することから、始めてみましょう。

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