子どもの「働きたくない」の裏にある本音とは?浜松市の専門家と考える、親としてできる具体的支援

  1. 先の見えない不安を抱える保護者の方へ
  2. 【核心分析】「働きたくない」はSOSのサイン。その裏に隠された5つの心理的背景
    1. 背景1:失敗への恐怖と社会への不信感(社会不安・対人恐怖型)
      1. 分析:
      2. 子どものサイン:
    2. 背景2:将来への絶望と目標の喪失(目標喪失・無気力型)
      1. 分析:
      2. 子どものサイン:
    3. 背景3:心身のエネルギー枯渇(メンタル不調型)
      1. 分析:
      2. 子どものサイン:
    4. 背景4:環境とのミスマッチ(発達特性・感覚過敏型)
      1. 分析:
      2. 子どものサイン:
    5. 背景5:支援への不信と諦め(支援経験・複合型)
      1. 分析:
      2. 子どものサイン:
  3. 親としてまずできること:焦りを手放し、信頼関係を再構築する
    1. ステップ1:聴く姿勢に徹する – 「ジャッジ」から「共感」へ
      1. 目的:
      2. 具体例:
    2. ステップ2:親自身の心のケア – 第三者の視点を取り入れる
      1. 目的:
      2. 具体例:
    3. ステップ3:小さな成功体験を積む – 「できること」に目を向ける
      1. 目的:
      2. 具体例:
  4. 【実践ガイド】浜松市で頼れる専門家と繋がるための3ステップ・アクションプラン
    1. 1. 「働きたくない」の裏にある5つの本音タイプ分けチェックリスト
    2. 2. 状況改善に向けた3ステップ・アクションプラン
    3. 3. 浜松市で相談できる専門機関・窓口リスト
  5. 解決策の有力な選択肢:「就労移行支援」という新しい道
    1. 就労移行支援とは?
    2. 就労移行支援でできること
    3. 浜松市での就労移行支援の現状
  6. まとめ:一人で抱え込まないで。浜松には、あなたと子どもを支える輪がある

先の見えない不安を抱える保護者の方へ

「うちの子、将来どうするんだろう…」「働きたくないなんて、甘えているだけ?」「一体、どう接すればいいのか分からない」。お子様の「働きたくない」という切実な言葉に、まるで出口のない暗いトンネルに迷い込んだような、深い不安や焦りを感じていらっしゃいませんか?

かつて多くの人が歩んできた「学校を卒業したら就職する」という道筋が、もはや誰にとっても当たり前ではなくなった現代社会。その背景には、長期化する経済の停滞、驚くべき速さで多様化する働き方、そして何よりも、若者たちが内面に抱える複雑で繊細な心理的課題が存在します。これは、単なる個人の意欲の問題ではなく、社会構造の変化がもたらした、時代特有の現象なのです。

この記事は、浜松市で同じような悩みを抱え、日々心を痛めている保護者の皆様のために、専門的な知見と地域に根差した具体的な情報を提供することを目的としています。以下の視点から、問題の深層に光を当て、次の一歩を踏み出すための羅針盤となることを目指します。

  • お子様の「働きたくない」という言葉の裏に隠された、5つの「本音」の可能性の深掘り
  • 感情的な対立を避け、状況を客観的に理解するための家庭でできる初期対応
  • 一人で抱え込まず、浜松市で実際に頼れる専門家や支援機関と繋がるための具体的なアクションプラン

これは、お子様を無理やり社会のレールに乗せるための手引書ではありません。お子様自身が、自分らしいペースで、納得のいく一歩を踏み出すために。そして何より、長引く悩みと不安に疲れ果ててしまった保護者ご自身が、少しでも心穏やかな日常を取り戻すために。専門的な分析と浜松市の確かな情報を基に、具体的で希望の持てる道筋を一緒に考えていきましょう。


【核心分析】「働きたくない」はSOSのサイン。その裏に隠された5つの心理的背景

お子様の「働きたくない」という言葉を、表層的に捉え、単なる「わがまま」や「怠け」と結論付けてしまうと、問題の根源を見過ごし、親子関係を悪化させる危険性があります。多くの場合、その言葉は、本人がうまく言語化できないほどの苦しさや困難さから発せられる、必死の**「SOS」**なのです。ここでは、若者支援の臨床現場で頻繁に見られる代表的な5つの心理的背景を、浜松市の地域的な状況も踏まえながら、深く掘り下げていきます。

背景1:失敗への恐怖と社会への不信感(社会不安・対人恐怖型)

分析:

このタイプの根底にあるのは、過去のネガティブな経験によって深く傷つけられた自己肯定感です。例えば、学校でのいじめ、長期にわたる不登校、あるいは受験や就職活動での手痛い失敗。これらの経験は、「どうせ自分は何をやってもうまくいかない」「また失敗して傷つくのが怖い」という強烈な予期不安を生み出します。社会とは、彼らにとって「再び自分を評価し、傷つけるかもしれない場所」として認識されているのです。

特に、他者からの評価に過度に敏感であったり、人との円滑なコミュニケーションに強いストレスを感じる特性を持つ場合、組織や集団に所属すること自体が、耐え難いほどの精神的苦痛を伴うハードルとなります。面接で自分をアピールすること、職場で同僚と雑談をすること、上司に報告・連絡・相談をすること。これら一つひとつが、彼らにとっては乗り越えるべき高い壁なのです。

児童養護施設を退所した若者の支援を行うNPOの調査報告が示すように、家庭や学校といった本来であれば安全基地であるはずの場所で「頼れる大人がいない」という孤立感を経験した子どもは、社会全体に対して根強い不信感を抱きやすくなります。大人や社会に期待することを諦めてしまった結果、新しい環境に自ら飛び込んでいこうとする意欲そのものが削がれてしまうのです。

子どものサイン:

  • 「どうせ自分なんて、何をやってもダメだよ」といった自己否定的な発言が頻繁に聞かれる。
  • 就職活動の面接や、単に人が多く集まる場所(例:ショッピングモール、電車)を極端に避ける傾向がある。
  • 新しい趣味や活動への挑戦を促しても、「面倒くさい」「やりたくない」と強い抵抗を示す。
  • 他人との比較を極度に嫌い、自分の能力や容姿について悲観的な見方をする。

背景2:将来への絶望と目標の喪失(目標喪失・無気力型)

分析:

現代の若者を取り巻く経済環境は、彼らの親世代が経験したものとは大きく異なります。経済学者・山田昌弘氏が指摘するように、非正規雇用の増大や深刻化する経済格差は、若者世代に「どれだけ真面目に頑張っても、親世代が享受したような安定した生活は手に入らないのではないか」という根深い不安、いわゆる**「中流転落不安」**を植え付けています。終身雇用と年功序列賃金に守られ、比較的豊かな生活を送ってきた親世代と、不安定な雇用形態の中で将来の経済的見通しが立てにくい自分たちとのギャップ。この現実が、働くことへの希望を奪います。

このような社会状況の中で、子どもたちは「こうなりたい」と思える魅力的なロールモデルや、具体的な将来の目標を見失いがちです。「良い会社に入れば安泰」という神話は崩壊し、かといって新しい時代の成功モデルはあまりに多様で、自分に当てはめて考えることが難しい。その結果、「何のために働くのか」「働くことにどんな意味があるのか」という根源的な問いに対する答えが見つからず、深刻な無気力状態に陥ってしまうのです。これは意欲の問題というより、行動を起こすための精神的エネルギーそのものが枯渇してしまった状態と言えます。

子どものサイン:

  • 一日中、自室にこもり、目的もなくスマートフォンで動画を見たり、オンラインゲームに没頭して過ごす。
  • 将来の夢や目標について尋ねても、「特にない」「何もしたいことが分からない」と力なく答える。
  • 表情が乏しくなり、喜怒哀楽の感情の起伏が以前に比べて著しく少なくなる。
  • 身だしなみや部屋の整理整頓に無頓着になるなど、セルフケアへの関心が低下する。

背景3:心身のエネルギー枯渇(メンタル不調型)

分析:

「働きたくない」という状態の背後に、うつ病、不安障害、適応障害、あるいは統合失調症といった精神疾患が隠れているケースは決して少なくありません。これらの疾患は、脳の機能的な不調により、意欲、思考力、集中力、判断力といった社会生活を送る上で不可欠な精神機能を著しく低下させます。これは本人の「気合」や「根性」「やる気」で解決できる問題ではなく、風邪をひいたら熱が出るのと同じように、専門的な治療を必要とする医学的な状態です。浜松市の調査でも、若年層の自殺者数の増加傾向が指摘されており、思春期のメンタルヘルス対策が重要な課題とされています。

本人も周囲も、その不調が病気によるものだと気づかず、「自分が弱いからだ」「もっと頑張らなければ」と自分を責め続けてしまうことが、問題をさらに深刻化させます。「働かなければならない」という社会的圧力や親からの期待が、本人の焦りを増幅させ、症状をさらに悪化させるという負のスパイラルに陥ることも多いのです。まずは「休むこと」「治療に専念すること」が最優先であるにもかかわらず、それが許されない状況が、回復を妨げている可能性があります。

子どものサイン:

  • 不眠(寝付けない、夜中に何度も目が覚める)や過眠(一日10時間以上寝てしまう)など、睡眠リズムの乱れが顕著。
  • * 食欲不振または過食、体重の急激な増減が見られる。 * 以前は熱中していた趣味や友人との交流にも全く興味を示さなくなる(興味・関心の喪失)。 * 明確な医学的原因が見つからないにもかかわらず、頭痛、腹痛、めまい、吐き気などの身体的な不調を頻繁に訴える。

背景4:環境とのミスマッチ(発達特性・感覚過敏型)

分析:

発達障害(自閉スペクトラム症:ASD、注意欠如・多動症:ADHDなど)の特性は、決して本人の「努力不足」や「性格の問題」ではありません。脳機能の特性上、多くの人が「当たり前」と感じる環境に適応することが、本人にとっては極めて困難な場合があるのです。例えば、

  • 感覚過敏:オフィスの蛍光灯の光やキーボードの打鍵音が耐えられないほど苦痛に感じる。
  • 情報処理の特性:複数の指示を同時に出されると混乱してしまう。口頭での指示を記憶するのが苦手。
  • 社会的コミュニケーションの困難:職場の「暗黙のルール」や相手の表情・声色から意図を汲み取ることが難しい。「空気が読めない」と誤解されやすい。

これらの困難さが周囲から理解されず、「仕事ができない人」「やる気がない人」「変わった人」といったネガティブなレッテルを貼られ続ける経験は、働くこと自体への強いトラウマや苦手意識を植え付けます。浜松市には、発達に関する相談支援を行う専門機関として「発達相談支援センター ルピロ」が設置されており、地域社会全体で専門的なサポートの必要性が認識されています。本人の特性に合った適切な環境調整や、業務内容の工夫、そして周囲の理解があれば、彼らが持つ独自の能力や集中力を存分に発揮できる可能性は十分にあります。

子どものサイン:

  • 特定の音(例:掃除機の音)、光、匂い、あるいは服のタグの感触などを極端に嫌がる。
  • 会話が一方的になりがちであったり、逆に人と視線を合わせることを極端に避けたりする。
  • 部屋の片付けが極端に苦手、時間管理ができない、忘れ物や失くしものが非常に多いなど、日常生活での困難が目立つ。
  • 興味のあることには驚異的な集中力を示すが、関心のないことには全く手が付かない。

背景5:支援への不信と諦め(支援経験・複合型)

分析:

このタイプは、問題が長期化・複雑化しているケースに多く見られます。過去に勇気を出して学校のカウンセラーや地域の相談機関、あるいは医療機関にかかったものの、「期待していた支援を受けられなかった」「話をちゃんと聞いてもらえなかった」「型通りのアドバイスをされただけだった」といったネガティブな経験が、支援という行為そのものへの深い不信感や諦めにつながっている状態です。

また、これまで述べてきた1から4までの要因が、複数、複雑に絡み合っていることも少なくありません。例えば、発達特性をベースに持ちながら、学校でのいじめを経験して対人恐怖を抱き、二次障害としてうつ病を発症し、将来にも絶望している、といった具合です。このような状態では、本人自身も「なぜ自分は動けないのか」をうまく説明することができず、混乱と自己嫌悪の中にいます。

この場合、保護者や支援者が性急な解決(=就労)を求めることは逆効果です。最も優先されるべきは、本人が「この人になら話しても大丈夫かもしれない」と感じられる、安全で信頼できる第三者との関係性を再構築すること。そして、絡み合った問題を一つひとつ丁寧に紐解き、本人が安心して本音を吐き出せる環境を整えることが、次への一歩を踏み出すための不可欠な土台となります。

子どものサイン:

  • 「相談したってどうせ無駄」「誰も分かってくれない」と、外部の専門家や機関との接触を頑なに拒否する。
  • 働けない理由を尋ねても、「分からない」「別に」「うるさい」といった短い言葉で対話を打ち切ろうとする。
  • 複数の問題を同時に抱えているように見え、何から手をつけていいか分からない混乱状態にあるように感じられる。
  • 過去の支援者や教師、医師などに対する批判的な言動が多い。

親としてまずできること:焦りを手放し、信頼関係を再構築する

お子様が抱える苦しみの背景には、様々な要因が複雑に絡み合っていることをご理解いただけたかと思います。では、次の一歩をどう踏み出すべきか。ここで最も重要なのは、**焦って「こうあるべきだ」という正論をぶつけないこと**です。正論は、追い詰められている本人にとっては、時に刃物のように心を傷つけます。まずは、家庭という「安全基地」の機能を回復させ、お子様が安心して傷ついた羽を休め、エネルギーを再充電できる環境を整えることから始めましょう。

ステップ1:聴く姿勢に徹する – 「ジャッジ」から「共感」へ

目的:

お子様の感情や言葉を、良い・悪いで判断(ジャッジ)せず、ありのままに受け止めること。これにより、「自分の気持ちを分かってもらえた」という安心感が生まれ、硬く閉ざされた心の扉が少しずつ開くきっかけになります。

具体例:

  • オウム返しで受け止める:子どもが「もう働きたくない…」と呟いたら、「働きたくないんだね」と、まずはその言葉をそのまま繰り返して受け止めます。これは、「あなたの言葉をちゃんと聞いていますよ」というサインになります。
  • 詰問ではなく質問する:「なぜ?」「どうして働かないの?」という詰問口調は、相手を追い詰めます。代わりに、「そう感じるんだね」「何か辛いことでもあるの?」と、相手の気持ちに寄り添うような、開かれた質問を心がけましょう。
  • 沈黙を恐れない:沈黙は、気まずいものではなく、本人が自分の気持ちを整理している大切な時間です。無理に言葉を引き出そうとせず、ただ静かにそばにいて、お茶を淹れるだけでも、無言のサポートになります。

ステップ2:親自身の心のケア – 第三者の視点を取り入れる

目的:

子どもの問題は、親自身の心にも大きな負担をかけます。親が一人で抱え込み、不安と焦りで心身ともに疲弊してしまうと、その緊張感は家庭内に伝播し、状況をさらに悪化させかねません。共倒れを防ぎ、客観的な視点を取り入れて冷静さを取り戻すことが不可欠です。浜松市の調査では、悩みを抱える人が「相談したいが相談できない」「相談する人が誰もいない」と感じている実態も指摘されており、これは子どもだけでなく親にも当てはまる課題です。

具体例:

  • 信頼できる人に話す:配偶者や、事情を理解してくれる友人・親族に、まずは自分の辛い気持ちを吐き出してみましょう。「大変だね」と共感してもらうだけでも、心は軽くなります。
  • 公的な相談窓口を利用する:後述する浜松市の公的な相談窓口や、民間のカウンセリングサービスは、子どものためだけでなく、親自身のためにもあります。専門家と話すことで、問題が整理され、具体的な対処法が見えてくることもあります。
  • 親の会に参加する:同じような悩みを持つ親たちが集まる会に参加し、経験や情報を共有することも有効です。自分だけではないと知ることは、大きな支えになります。

ステップ3:小さな成功体験を積む – 「できること」に目を向ける

目的:

失敗体験の積み重ねによって失われた自己肯定感を、少しずつ回復させるためのアプローチです。「働けない自分はダメだ」という自己否定のループから抜け出すには、「自分にもできることがある」という感覚を取り戻すことが重要です。ハードルは極限まで低く設定しましょう。

具体例:

  • 感謝を具体的に伝える:お子様が何かをしてくれた時、それがどんなに些細なことであっても、「〇〇してくれて助かったよ、ありがとう」と具体的に感謝の気持ちを言葉で伝えます。(例:「ゴミ出ししてくれてありがとう、おかげで朝の時間が楽になったよ」)
  • 本人の興味を尊重する:本人が少しでも興味を示したこと(例えば、特定のゲームの攻略、好きなアニメの考察、イラストを描くことなど)を、無価値なものと否定せず、尊重し、時には「すごいね!」「面白いね」と関心を示します。
  • ごく小さな共同作業を行う:「働く」という大きな目標の前に、「一緒に5分だけ散歩に行く」「一緒に夕食の準備をする」「決まった時間に一緒に朝食を食べる」など、ごくごく小さな目標を立て、達成できたら「今日はできたね」と一緒に喜びを分かち合います。この積み重ねが、次へのエネルギーとなります。

【実践ガイド】浜松市で頼れる専門家と繋がるための3ステップ・アクションプラン

家庭での関わり方を見直すと同時に、専門的なサポートへと繋がるための具体的な行動計画を立てることが、状況を打開する鍵となります。以下のテンプレートは、お子様の状況を客観的に整理し、広大な情報の中から浜松市で最適な支援先を見つけ出すための羅針盤としてご活用ください。

1. 「働きたくない」の裏にある5つの本音タイプ分けチェックリスト

まずはお子様の状況を客観的に把握するため、以下のリストで最も近いと思われるタイプにチェックを入れてみてください。複数のタイプに当てはまることも珍しくありません。これは厳密な診断ではなく、相談先を選ぶ上での「当たり」をつけるためのツールです。

チェック 子どもの言動・サイン(例) 考えられる「本音」・心理的背景 親としてまずできること(初期対応)
「面接が怖い」「人が多い場所は無理」と口にし、アルバイトの誘いなども含め、人との交流や新しい環境を極端に避ける。 タイプA:社会不安・対人恐怖型
過去の失敗への強い不安や、他者からのネガティブな評価への恐怖心が根底にある。
まずは不安な気持ちを否定せずに傾聴し、「何があってもあなたの味方だよ」というメッセージを言葉と態度で伝え続ける。
「何がしたいかわからない」「どうせ自分なんて」「生きていても意味がない」など、無気力で悲観的な発言が多い。 タイプB:目標喪失・無気力型
自己肯定感が著しく低下し、将来への希望や働くことへのポジティブなイメージが見いだせない状態。
過去の小さな成功体験(部活、趣味など)を一緒に振り返り、本人が少しでも興味を持つことを一緒に探す手伝いをする。
昼夜逆転が激しい。特定の物事への強いこだわりや、特定の音・光・匂いなどへの感覚の過敏さが見られる。 タイプC:発達特性・感覚過敏型
発達における生まれ持った特性により、一般的な社会生活や職場環境に適応すること自体に困難を抱えている。
本人が不快に感じる刺激(騒音、強い光など)を減らす環境調整を行い、発達障害の専門家への相談を検討する。
過去のいじめや失敗体験を繰り返し話したり、逆にその話題を頑なに避けたりする。特定の状況(例:学校の前を通る)を避ける。 タイプD:過去のトラウマ・失敗体験型
過去の心的外傷(トラウマ)が原因で、関連する状況に対して強い心理的ブロックがかかっている。
辛かった感情を否定せず、「それは辛かったね」と受け止め、「家は絶対に安全な場所だ」と伝え続ける。
明確な理由を語らず「とにかく働きたくない」と一点張りで、対話を拒否する。複数の問題を抱えているように見える。 タイプE:複合・言語化困難型
複数の要因が複雑に絡み合い、本人自身も自分の苦しさをうまく言葉にできない混乱状態。
無理に原因を問いたださず、本人が話しやすいと感じる可能性のある第三者(カウンセラー、年の近い支援員など)の介入を検討する。

2. 状況改善に向けた3ステップ・アクションプラン

チェックリストの結果を参考に、漠然とした不安を具体的な行動に変えていきましょう。一度にすべてをやろうとせず、一歩ずつ進めることが大切です。

ステップ やること(ToDo) 具体的なアクション例 完了目安
STEP 1
現状把握
現状の客観的な記録 ・お子様の様子(表情、言動、睡眠時間、食事量)を感情を交えずに事実として1〜2週間記録する。
・「働きたくない」に関連する本人の具体的な発言を、日付と共にメモする。
・食事や入浴、外出の頻度など、生活リズムの変化を記録する。
2週間
STEP 2
情報収集
相談先のリストアップと絞り込み ・浜松市の公的相談窓口、就労移行支援事業所、メンタルクリニックなどをインターネットで3つ以上リストアップする。
・各機関のウェブサイトを熟読し、特徴(対象者、支援内容、費用、雰囲気)を比較検討する。
・チェックリストのタイプに基づき、最も合いそうな相談先を1〜2つに絞り込む。
1週間
STEP 3
行動開始
専門家への相談と初期プランの実行 ・絞り込んだ機関に電話またはメールで初回相談(または見学)を予約する。まずは保護者のみの相談でも可能か確認する。
・STEP1で記録した情報を持参し、専門家に客観的な状況を伝える。
・専門家から提案された次のステップ(例:体験利用への参加、心理検査の受診、福祉サービス申請)を1つ実行してみる。
1ヶ月以内

3. 浜松市で相談できる専門機関・窓口リスト

浜松市には、様々な状況に対応できる専門機関が存在します。お子様のタイプや状況に合わせて、適切な相談先を選びましょう。いきなり本人を連れて行くのが難しい場合は、まず保護者だけで相談することから始めてください。それが解決への大きな一歩です。

機関カテゴリ 機関名(例) 対象者・特徴 まずやるべきこと(連絡先/アクセス方法)
就労移行支援事業所 LITALICOワークス 浜松
アクセスジョブ 浜松 など
障害のある方(精神・発達・身体・知的など。医師の診断書がなくても相談可能な場合が多い)。一般企業への就職を目指し、スキル訓練、自己理解、就活、職場定着までを一貫してサポート。事業所ごとに特色(IT特化、精神障害に強い、豊富なプログラム等)がある。浜松市内には28件以上存在。 各事業所の公式サイトから無料の見学・個別相談を予約するのが第一歩。複数の事業所を見学し、本人との相性や雰囲気、プログラム内容を比較検討するのが成功の鍵。
公的相談窓口
(発達支援)
浜松市 発達相談支援センター「ルピロ」 発達が気になる子ども・若者とその家族。臨床心理士などの専門家による相談、発達検査、関係機関との連携支援が受けられる。浜松市の発達支援の中核的機関。 まずは電話で相談予約。保護者だけでも相談可能。ザザシティ中央館5階にありアクセスしやすい。
公的相談窓口
(福祉全般)
浜松市役所 障害保健福祉課
各区の福祉事業所(社会福祉課)
障害のある方全般。障害者手帳の申請、福祉サービスの利用に関する総合的な相談窓口。制度に関する正確な情報を得られる。 まずは市役所の代表電話から障害保健福祉課へ。またはお住まいの区役所の福祉事業所へ電話で状況を伝え、適切な窓口や利用可能な制度について情報を得る。
若者支援機関
(ひきこもり等)
NPO法人 ワークセンター大きな木 ひきこもりや不登校など、様々な困難を抱える若者。生活訓練や就労移行支援、就労定着支援など、社会参加に向けた段階的なプログラムを提供。専門職(作業療法士、公認心理師等)が在籍。 公式サイトを確認し、電話やメールで活動内容について問い合わせ、見学を申し込む。
医療機関 市内のメンタルクリニック・精神科 不眠、強い不安、抑うつ気分、幻覚・幻聴など、精神的な不調が明らかな場合。診断と治療、薬物療法、カウンセリングなど、医学的アプローチを行う。 インターネット等で医療機関を探し、まずは電話で新患の受付状況や、どのような相談が可能かを確認。かかりつけの内科医などからの紹介状が必要な場合もある。

解決策の有力な選択肢:「就労移行支援」という新しい道

様々な支援機関の中でも、特に「働く」というゴールに向けて、具体的かつ継続的なサポートを受けられるのが**「就労移行支援」**です。これは、単に求人情報を紹介する場所(ハローワークなど)とは根本的に異なります。就労移行支援は、いわば**「社会に出て働き続けるために必要なスキルと自信を身につけるための、個別最適化された訓練の場」**なのです。

就労移行支援とは?

一般企業への就職を目指す65歳未満の障害のある方を対象に、就職に必要な知識・能力の向上のための訓練や準備、職場探しから就職後の定着支援までを一貫して行う、障害者総合支援法に基づく福祉サービスです。

就労移行支援でできること

就労移行支援事業所では、一人ひとりの特性や課題に合わせて、多岐にわたるプログラムが提供されます。

  • 自己理解の深化: 専門の支援員との定期的な面談や、心理検査、グループワークを通じて、自分自身の得意なこと・苦手なこと、ストレスを感じる原因、働く上で必要な配慮などを客観的に、そして深く理解します。「なぜ自分はうまくいかなかったのか」を他責・自責ではなく、特性として理解することから始めます。
  • 実践的なスキルアップ: 基礎的なPCスキル(Word, Excel)から、ビジネスマナー、ストレスコントロール、アンガーマネジメント、コミュニケーション術など、働く上で直接的に役立つ実践的なスキルを、本人のペースに合わせて体系的に学ぶことができます。事業所によってはプログラミングやデザインなど専門的なスキルを学べる場所もあります。
  • リアルな職場体験(企業実習): 地域の協力企業で実際に働く体験(実習)をすることが可能です。これにより、求人票だけでは分からない職場の雰囲気や業務内容を肌で感じ、自分に本当に合う職種や職場環境を見極めることができます。
  • 個別化された就職活動サポート: 支援員が本人の希望や特性を深く理解した上で、履歴書・職務経歴書の添削や模擬面接を繰り返し行います。ハローワークに同行して一緒に求人を探したり、企業との面接に同席して本人が伝えきれない配慮事項を補足説明したりと、一人ひとりに合わせた手厚いサポートを受けられます。
  • 最も重要な「就職後の定着支援」: これが就労移行支援の最大の強みと言えます。就職はゴールではなくスタートです。多くの事業所では、就職後も定期的に本人と面談し、職場で困っていることはないか、人間関係は良好かなどをヒアリングします。問題があれば、本人と企業の間に入って環境調整を行うなど、長く安心して働き続けるためのサポート(就労定着支援)が受けられます。浜松市の障がい福祉計画でも、この「就労定着率」は重要な成果目標として掲げられています。

浜松市での就労移行支援の現状

浜松市における就労移行支援は、非常に重要な役割を担っており、そのニーズは年々高まっています。

  • 豊富な選択肢: 2025年7月時点で、浜松市内には28件以上の就労移行支援事業所が存在し、利用者は自分の目的や特性に合った事業所を選ぶことが可能です。駅近くでアクセスしやすい事業所や、特定の障害に特化したプログラムを持つ事業所など、選択肢は多様です。
  • 高まる需要と供給の課題: 浜松市の障がい福祉サービスに関する需要動向分析によると、就労移行支援は「不足傾向」にあり、充足率は110%と供給が需要を下回っていると指摘されています。これは、特に若年層や発達障害のある方の利用ニーズが増加していることを示唆しており、サービスの重要性がうかがえます。

図:浜松市における一部障がい福祉サービスの需要充足状況のイメージ
(出典:sabikanjob.comの情報を基に作成)

お子様が今すぐ「働きたい」という気持ちになっていなくても、あるいは「何か新しいことを始めたい」と少しでも思い始めた時に、スムーズに次の一歩へ進めるよう、有力な選択肢の一つとして「就労移行支援」の情報を事前に集めておくことは、決して無駄にはなりません。多くの事業所では無料で見学や体験利用が可能です。まずは保護者の方だけでも話を聞きに行き、その雰囲気を感じてみることが、未来への扉を開くきっかけになるかもしれません。


まとめ:一人で抱え込まないで。浜松には、あなたと子どもを支える輪がある

お子様の「働きたくない」という、たった一言の裏には、本人の声にならない苦しみ、社会構造の変化、そして未来への深い不安が、複雑な模様を描くように絡み合っています。それを「甘え」や「怠け」の一言で片付けてしまうのは、あまりに酷なことです。

親として、家族としてできる最初の、そして最も大切なことは、そのSOSを真正面から受け止め、家庭を再び「何を言っても大丈夫」な安全基地にすることです。そして、決して一人で、一家族だけで抱え込まないでください。その重荷は、あまりにも大きすぎます。勇気を出して、外部の専門家や支援機関の扉を叩いてみてください。

浜松市には、この記事でご紹介したように、公的な相談窓口から、地域に根差したNPO、そして私たちのような就労移行支援事業所まで、困難な状況にあるあなたとご家族を支えるための、多様で専門的な「支援の輪」が確かに存在します。浜松市自身も「第4次障がい者計画」を策定し、市民一人ひとりが自立し、社会参加できるための体制づくりを進めています。

この記事で紹介したチェックリストやアクションプランが、先の見えない不安という濃い霧の中にいるあなたの足元を照らす、小さな灯りとなれば、これに勝る喜びはありません。解決への道のりは、一直線ではないかもしれません。しかし、最初の一歩を踏み出さなければ、景色は決して変わりません。その最初の一歩は、保護者の方が、今日、相談機関に一本電話をかけてみることかもしれません。その小さな、しかし勇気ある行動が、お子様の、そしてご家族全員の未来を、より明るい方向へと変える大きなきっかけになるはずです。

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