パートナーがうつ病で休職…浜松市で利用できる社会復帰支援と家族の関わり方

「パートナーがうつ病と診断され、会社を休職することになった…」

突然の出来事に戸惑い、ご本人はもちろん、支えるご家族も大きな不安を抱えていることでしょう。「これからどうなるのだろう」「自分に何ができるだろう」と、先の見えない状況に悩んでいるかもしれません。

うつ病からの回復、そして社会復帰は、ご本人のペースで一歩ずつ進めることが何よりも大切です。そして、その過程でご家族の理解と適切なサポートが大きな力となります。

この記事では、うつ病で休職中の方を支えるご家族に向けて、浜松市で利用できる社会復帰支援サービス、特に「就労移行支援」を中心に、治療の基本から家族の関わり方までを詳しく解説します。正しい知識を得て、パートナーと共に回復への道を歩むための一助となれば幸いです。

うつ病治療の基本:「休養」「薬物療法」「精神療法」の三本柱

うつ病の治療は、主に「休養」「薬物療法」「精神療法・カウンセリング」の3つを柱として進められます。これは、身体の病気の治療と同じように、科学的根拠に基づいたアプローチです。まずは、この基本を理解することが、ご本人とご家族の安心につながります。

うつ病の治療には、「休養」、「薬物療法」、「精神療法・カウンセリング」という大きな3つの柱があります。こころの病気の治療は特別なものと考えがちですが、実はこの治療の3本柱は身体疾患と基本的に同じです。

最も重要な「休養」

うつ病治療の根幹をなすのが「休養」です。うつ病は「脳のエネルギーが枯渇した状態」と表現されることがあります。ストレスや過労で疲弊した脳をしっかりと休ませ、エネルギーを再充電する時間が必要です。この期間は、仕事や家事など、ストレスの原因から物理的・心理的に距離を置くことが求められます。

「何もしない」ことに罪悪感を覚えるかもしれませんが、この「何もしない時間」こそが、脳の自然治癒力を最大限に引き出すための最も効果的な治療なのです。ある調査では、メンタルヘルス不調による1回目の休職期間の平均は107日(約3.5か月)というデータもあり、回復には相応の時間が必要であることがわかります。

症状を和らげる「薬物療法」

薬物療法は、抗うつ薬などを使い、脳内の神経伝達物質のバランスを整えることで、つらい症状を和らげることを目的とします。不眠、不安、気分の落ち込みといった症状が軽減されると、ご本人の苦痛が和らぎ、休養に専念しやすくなります。

薬は根本治療ではないものの、症状の悪化を防ぎ、回復を早めるための重要なサポート役です。ただし、ご本人の意向や症状の特性によっては、薬を使わずに精神療法を中心に治療を進めるケースもあります。治療方針については、主治医とよく相談することが不可欠です。

再発を防ぐ「精神療法・カウンセリング」

精神療法は、専門家(医師やカウンセラー)との対話を通じて、ストレスへの対処法や考え方の癖を見直していく治療法です。代表的なものに「認知行動療法(CBT)」があり、ストレスを感じやすい思考パターンや行動パターンに気づき、より柔軟な考え方ができるようになることを目指します。

このアプローチは、うつ病の再発予防に特に効果的とされています。多くの場合、急性期を過ぎて心身が少し落ち着いてきた回復期から始められます。

社会復帰へのステップ:リワーク支援と就労移行支援

十分な休養と治療によって症状が安定してくると、次のステップとして社会復帰が視野に入ってきます。しかし、焦りは禁物です。再発を防ぎ、安定して働き続けるためには、リハビリ期間を設けることが非常に重要です。そのための代表的な支援として「リワーク支援」と「就労移行支援」があります。

復職を目指すリハビリ:「リワーク支援」

リワーク支援(復職支援プログラム)は、主に休職している元の職場への復帰を目指す方のためのリハビリテーションプログラムです。医療機関や障害者職業センターなどで提供されています。

プログラムでは、オフィスに似た環境で軽作業を行ったり、ストレス対処法を学ぶグループワークに参加したりすることで、生活リズムを整え、体力や集中力を回復させ、再発予防のスキルを身につけます。あるリワーク支援機関のデータでは、利用者の95%が復職後に再休職・離職していないという高い効果も報告されています。

新しい「働く」を見つける:「就労移行支援」

就労移行支援は、障害者総合支援法に基づく福祉サービスの一つです。「元の職場に戻るのは難しい」「これを機に新しい仕事に挑戦したい」と考える方が、一般企業への就職を目指すための支援を提供します。

全国各地にある「就労移行支援事業所」に通いながら、個別の支援計画に基づき、職業訓練や就職活動のサポートを受けられます。元の職場への復帰だけでなく、自分に合った新しい働き方を見つけるための選択肢として、近年利用者が増えています。

リワーク支援と就労移行支援の違い

どちらのサービスを選ぶかは、ご本人の希望や状況によって異なります。主な違いを以下の表にまとめました。

項目 リワーク支援 就労移行支援
主な目的 元の職場への復職 一般企業への就職(転職・新規)
対象者 休職中で、復職の意思がある方 離職中で、就職の意思がある方(65歳未満)
支援内容 生活リズム改善、ストレス対処、模擬業務、職場との連携 職業スキル訓練、自己理解、就職活動支援、職場定着支援
根拠法 医療保険制度、公的サービスなど様々 障害者総合支援法(福祉サービス)
実施場所 医療機関、地域障害者職業センターなど 就労移行支援事業所

浜松市で利用できる就労移行支援事業所【広告】

パートナーが「新しい環境で再スタートしたい」と考えている場合、就労移行支援は非常に有効な選択肢です。浜松市内にも、それぞれ特色のある就労移行支援事業所が複数存在します。

家族だからこそできること:パートナーを支えるための5つのポイント

ご本人が安心して治療と回復に専念するためには、ご家族のサポートが不可欠です。しかし、「どう接すればいいのか」と悩むことも多いでしょう。ここでは、ご家族ができる5つの大切なポイントをご紹介します。

1. うつ病を正しく理解し、励まさない

うつ病は「心の風邪」と例えられることがありますが、実際は脳の機能障害が関わる病気です。本人の「甘え」や「気の持ちよう」の問題ではありません。この点を理解することが、全てのサポートの出発点です。

特に「頑張れ」という励ましは禁物です。ご本人はすでに頑張りすぎてエネルギーを使い果たしている状態。「これ以上頑張れない」と自分を責め、症状を悪化させてしまうことがあります。温かく見守る姿勢が大切です。

2. 安心できる休養環境を整える

治療の基本である「休養」を最大限に効果的なものにするため、家庭が安心できる場所であることが重要です。大きな決断を迫らない、静かに過ごせる時間と空間を確保するなど、ストレスを減らす工夫をしましょう。ただし、過度に気を使いすぎたり、何でもやってあげたりすると、かえってご本人の負担になることもあります。本人の状態を見ながら、少しずつできることを任せるなど、バランスを取ることが大切です。

3. 専門家との連携を促し、時には同席する

ご本人の同意を得た上で、診察に同席させてもらうのも良い方法です。医師から直接、病状や治療方針について説明を受けることで、ご家族の理解が深まり、不安も軽減されます。また、家庭での様子を医師に伝えることで、より適切な治療につながることもあります。

4. 浜松市の相談窓口や家族会を活用する

ご家族だけで悩みを抱え込む必要はありません。浜松市には、専門の相談窓口や、同じ悩みを持つ家族が集う「家族会」があります。

  • 浜松市精神保健福祉センター:市民のこころの健康に関する専門相談機関です。ご家族からの相談も受け付けています。どこに相談すれば良いか分からない場合、まずはこちらに連絡してみましょう。
  • 家族会:同じような経験を持つ家族と悩みを分かち合い、支え合う場です。病気や福祉制度について学び、孤立感を和らげることができます。

5. 支える側も自分を大切にする(セルフケア)

最も見過ごされがちですが、非常に重要なのが「支えるご家族自身のケア」です。パートナーを支える中で、ご家族も心身ともに疲弊してしまうことがあります。「共倒れ」を防ぐためにも、自分の時間を持つ、友人と話す、趣味を楽しむなど、意識的にリフレッシュする時間を作りましょう。ご家族が心身ともに健康でいることが、結果的にご本人にとって最善のサポートになります。

就労移行支援の利用手続きと費用

「就労移行支援に興味があるけれど、手続きが難しそう」「費用はどのくらいかかるの?」といった疑問にお答えします。

利用までの流れ

就労移行支援の利用は、以下のステップで進めるのが一般的です。

  1. 相談・見学:気になる事業所に連絡し、見学や相談をします。多くの事業所で無料の体験利用も可能です。
  2. 受給者証の申請:お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口(浜松市の場合は各区役所の社会福祉課)で、「障害福祉サービス受給者証」の申請を行います。
  3. サービス等利用計画の作成:相談支援事業所と協力し、どのような支援を受けるかの計画案を作成します。
  4. 支給決定・受給者証の交付:市からサービスの支給が決定されると、受給者証が交付されます。申請から交付まで1〜2か月程度かかる場合があります。
  5. 契約・利用開始:利用したい事業所と契約を結び、通所を開始します。

手続きについては、事業所のスタッフがサポートしてくれることが多いので、まずは気軽に相談してみましょう。

利用料金について

就労移行支援は福祉サービスのため、利用料金には国の基準が設けられています。前年の世帯収入(ご本人と配偶者の収入の合計)に応じて、自己負担上限月額が定められています。

多くの事業所では、利用者の9割以上が自己負担0円で利用していると報告されています。これは、市町村民税非課税世帯の場合、自己負担が0円になるためです。課税世帯であっても、上限額以上の負担は発生しません。

障害者手帳は必要?

「就労移行支援を利用するには、障害者手帳が必須」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。

医師の診断書や意見書があり、自治体が「就労に困難がある」と判断すれば、手帳がなくてもサービスを利用できる場合があります。

ただし、就職活動において企業の「障害者雇用枠」に応募する場合は、「精神障害者保健福祉手帳」が必要になることがほとんどです。手帳の取得は、税金の控除や各種割引など、様々なメリットもあります。申請は、初診日から6か月以上経過していることが条件となります。手続きについては、主治医や浜松市の障害福祉担当窓口にご相談ください。

まとめ:焦らず、一歩ずつ前へ

パートナーがうつ病で休職するという経験は、ご本人にとってもご家族にとっても、心身ともに大きな負担がかかるものです。しかし、決して一人で抱え込む必要はありません。

うつ病はつらい病気ですが、治療法があります。できるだけ早期に正しい治療を受け、再発させないようにするためには家族や周囲のサポートが大きな力になります。

うつ病の治療には「休養・薬物療法・精神療法」という確立された基本があり、社会復帰のためには「リワーク支援」「就労移行支援」といった心強いサポートが存在します。そして、浜松市には、これらの支援を提供する専門機関や相談窓口が整っています。

最も大切なのは、ご本人のペースを尊重し、焦らないことです。そして、支えるご家族自身も、利用できる社会資源を積極的に活用し、自分を大切にすることを忘れないでください。

この記事が、暗闇の中にいるように感じているあなたとパートナーにとって、未来への道を照らす小さな光となれば幸いです。まずは、一歩踏み出して、専門機関に相談することから始めてみませんか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました