浜松市の外国人障がい者向け就労支援ガイド|専門機関フトゥーロの情報も解説

多文化共生の街・浜松で「働く」を考える

静岡県浜松市は、多くの外国籍市民が暮らす多文化共生の街として知られています。多様な文化が交差するこの街で、障がいを持つ外国籍の方が自分らしく働き、社会で活躍するためには、専門的なサポートが不可欠です。しかし、「どこに相談すればいいの?」「日本語に不安があるけど大丈夫?」「どんな支援が受けられるの?」といった疑問や不安を抱えている方も少なくありません。

この記事では、浜松市で就労を目指す障がいのある外国籍の方々に向けて、利用できる就労支援サービスの種類、具体的な相談窓口、そして特に外国人支援に特化した専門機関の情報を網羅的に解説します。言葉や文化の壁を越え、一人ひとりが持つ能力を最大限に発揮できる道筋を一緒に探していきましょう。

浜松市では、行政、民間企業、NPOが連携し、外国人市民と障がいのある方の両方に対する支援体制の構築を進めています。このガイドが、あなたにとって最適なサポートを見つけるための一助となれば幸いです。

障がい者就労支援の基本:3つのサービスを理解する

日本の障害福祉サービスには、働くことを支援するためのいくつかの種類があります。まずは、自分に合ったサービスを見つけるために、それぞれの特徴を理解することが重要です。主に「就労移行支援」「就労継続支援A型」「就労継続支援B型」の3つに分けられます。

就労移行支援:一般企業への就職を目指す

就労移行支援は、一般企業への就職を希望する18歳から65歳未満の障がいのある方が対象です。就職に必要な知識やスキルを身につけるためのトレーニング、職場探し、就職後の定着支援など、就職から職場定着までを一貫してサポートします。利用期間は原則2年間です。パソコンスキルやビジネスマナー、コミュニケーション能力の向上など、個々の目標に合わせたプログラムが提供されます。

  • 対象者:一般企業で働くことを目指す方
  • 支援内容:職業訓練、求職活動支援、職場実習、定着支援
  • 特徴:就職に向けた準備を包括的に行う。障害者手帳がなくても、医師の診断書などで利用できる場合があります。

就労継続支援A型:雇用契約を結んで働く

就労継続支援A型は、一般企業での就労が難しいものの、雇用契約に基づき継続して働くことが可能な方が対象です。利用者は事業所と雇用契約を結び、給与(最低賃金以上が保障)を受け取りながら働きます。仕事を通じてスキルアップを図り、将来的には一般就労を目指すことも可能です。

  • 対象者:雇用契約のもとで働きたい方
  • 支援内容:生産活動の機会提供、知識・能力向上のための訓練
  • 特徴:雇用契約があり、給与が支払われる。

就労継続支援B型:自分のペースで働く

就労継続支援B型は、年齢や体力の面で雇用契約を結んで働くことが難しい方が対象です。雇用契約は結ばず、比較的簡単な作業などを自分の体調やペースに合わせて行い、「工賃」を受け取ります。生産活動を通じて、社会参加や働く喜びを感じることを目的としています。

  • 対象者:自分のペースで働きたい方、就労経験を積みたい方
  • 支援内容:軽作業などの生産活動の機会提供
  • 特徴:雇用契約がなく、比較的自由な働き方が可能。工賃が支払われる。

浜松市の就労支援事業所の現状

浜松市内には、これらの障がい者就労支援サービスを提供する事業所が数多く存在します。特に、一般就労へのステップとして、あるいは地域社会とのつながりを持ちながら働く場として、就労継続支援B型事業所が多く設置されています。一方で、より専門的なスキル習得や就職活動の直接的なサポートを行う就労移行支援事業所も、市中心部を中心に複数あります。

外国人支援の専門機関:「外国人障害者就労支援事業所フトゥーロ」とは

浜松市には、特に外国籍の障がいを持つ方々を対象としたユニークな事業所があります。それが、中央区住吉にある「外国人障害者就労支援事業所フトゥーロ」です。

フトゥーロの強み:多言語対応と文化への配慮

「フトゥーロ(Futuro)」はポルトガル語で「未来」を意味します。その名の通り、利用者の未来を切り拓く支援を目指しています。この事業所は就労継続支援B型に分類され、利用者が自分のペースで働きながら社会参加できるようサポートしています。

最大の特色は、外国籍の利用者に特化したサポート体制です。特にブラジル人コミュニティとのつながりが深く、ポルトガル語の通訳が在籍しているため、言葉の壁を感じることなく安心して相談や作業に取り組むことができます。

  • 事業所名: 外国人障害者就労支援事業所フトゥーロ
  • サービス種別: 就労継続支援B型
  • 所在地: 静岡県浜松市中央区住吉3-22-12
  • 連絡先: 053-488-7008
  • 対象障害: 精神障害、知的障害、身体障害、発達障害、難病など
  • 特徴: ポルトガル語通訳が在籍。利用者の自立と社会経済活動への参加を促進。

フトゥーロでは、利用者が知識や能力を向上させるための訓練や、就労機会の提供を行っており、地域の保健・医療・福祉サービス機関とも連携し、総合的なサービス提供に努めています。

運営母体「伸栄総合サービス」の取り組み

フトゥーロを運営しているのは、1990年創業の有限会社伸栄総合サービスです。同社は浜松市を拠点に、日本人だけでなく外国人を対象とした人材派遣サービスを長年手掛けてきました。

さらに、多文化共生保育園「しんえい保育園」も運営しており、働く子育て世代を支援しています。このように、人材派遣、保育、そして障がい者支援という3つの柱で、地域に住む外国人材の多様なニーズに応える体制を整えているのが大きな特徴です。企業として、外国人材が浜松で共存共栄できる社会を目指すという強い理念が、フトゥーロの活動の基盤となっています。

支援を受けるまでのステップと相談窓口

実際に就労支援サービスを利用したい場合、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。ここでは、浜松市での主な相談窓口と、公的機関の役割について解説します。

浜松市の主な相談窓口

まずは専門の相談員に現状を話し、どのような支援が適しているかアドバイスをもらうことが第一歩です。浜松市には、障がいのある方の仕事に関する相談を受け付ける専門機関が複数あります。

  • 浜松市障害者就労支援センターふらっと
    病気や障がいがある方を対象に、仕事に関する相談や支援を行う浜松市の委託事業所です。就職後の定着支援や生活面のサポートも行っていますが、職業の斡旋は行いません。
    所在地:浜松市中央区中郡町474 / 電話:053-589-3028
  • 各区役所の福祉事業所(社会福祉課)
    お住まいの地域の区役所でも、障害福祉サービスの利用に関する相談が可能です。サービスの利用申請(受給者証の交付)などもここで行います。
  • 浜松市障がい者相談支援センター
    市内各所に設置されており、障がいのある方やその家族からの様々な相談に応じ、情報提供やサービス利用の援助を行っています。

ハローワークや行政の役割

公的な機関も、外国人や障がいのある方の就労支援において重要な役割を担っています。

  • ハローワーク浜松
    専門の職員が職業相談や紹介を行っています。特に「外国人雇用サービスコーナー」では、ポルトガル語やスペイン語などの通訳を配置した相談日を設けており、外国籍の方が利用しやすくなっています。
  • 浜松市外国人雇用サポートデスク
    仕事を探している外国人と、外国人の採用を希望する企業の両方からの相談に対応する専門窓口です。多言語での相談が可能です。
    所在地:クリエート浜松4F / 電話:053-458-2170
  • 静岡労働局
    労働条件に関する相談を受け付ける「外国人労働相談コーナー」を設置しており、多言語に対応しています。労働に関するトラブルなどがあった場合に相談できます。

浜松の支援エコシステム:行政・NPOの連携

浜松市における外国人障がい者支援は、個々の事業所だけでなく、行政やNPOなどが連携して作り上げる大きなエコシステムによって支えられています。

浜松市と静岡県の連携施策

浜松市と静岡労働局は「雇用対策協定」を締結し、地域の雇用課題に取り組んでいます。令和6年度の事業計画では、「外国人労働者の就労支援」や「障がい者の就労支援」が重点項目として挙げられています。具体的には、企業と外国人留学生のマッチング支援や、ハローワークと連携した障がい者向け就労支援窓口の設置などが計画されており、行政が積極的に支援体制を強化していることがわかります。

また、静岡県としても、障害のある人の就労を支援するための「ジョブコーチ派遣制度」や、企業向けの助成金制度などを設けています。

NPO法人の役割としずおか障害者就労支援ネットワーク

行政サービスを補完し、よりきめ細やかな支援を提供するのがNPO法人の役割です。浜松市では、多くのNPOが障がい者の自立支援や就労支援に取り組んでいます。

中でも特筆すべきは「しずおか障害者就労支援ネットワーク」の存在です。これは、県内各地の支援団体が連携して組織されたネットワークで、専門的な訓練を受けた「ジョブコーチ」が所属しています。ジョブコーチは、障がいのある方が職場にスムーズに適応できるよう、本人と企業の間に立って支援を行う専門家です。

このネットワークの事務局的な役割を担っているのが「特定非営利活動法人 浜松NPOネットワークセンター」であり、県からの委託を受けてジョブコーチの派遣事業などを実施しています。地域に根差したNPOが連携することで、より効果的な支援体制が築かれています。

事業主の方へ:外国籍の障がい者雇用を支える制度

外国籍の障がい者を雇用することは、企業のダイバーシティ推進や人材確保において大きな意味を持ちます。しかし、受け入れにあたって環境整備やコミュニケーションの課題を感じることもあるでしょう。国や県は、そうした企業を支援するための助成金制度を用意しています。

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
外国人労働者の職場定着を図るため、就労環境の整備(就業規則の多言語化、苦情・相談体制の整備など)を行った事業主に対して、かかった経費の一部を助成する制度です。障がい者雇用と組み合わせることで、よりインクルーシブな職場環境を実現できます。

このほかにも、障がい者を雇用する際に利用できる各種助成金があります。詳しくは、静岡労働局やハローワークにお問い合わせください。適切な制度を活用することで、受け入れ側の負担を軽減し、スムーズな雇用と職場定着を促進できます。

まとめ:あなたに合ったサポートを見つけるために

浜松市には、障がいを持つ外国籍の方が「働きたい」という思いを実現するための、多様な支援の選択肢があります。言葉の壁に対応する「フトゥーロ」のような専門機関から、行政の相談窓口、NPOによるきめ細やかなサポートまで、あなたを支えるネットワークが確かに存在します。

重要なのは、一人で抱え込まず、まずは一歩を踏出して相談してみることです。この記事で紹介した情報を参考に、あなたに最も合った支援機関やサービスを見つけてください。自分らしい働き方を実現するための道は、きっと開かれています。

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