障害者手帳だけではガソリン代は安くならない
「障害者手帳を提示すれば、ガソリン代が割引になる」という話を聞いたことがあるかもしれません。しかし、結論から言うと、全国一律でガソリンスタンドの支払いが直接割引になる制度は存在しません。
一方で、多くの自治体が障がいのある方の移動を支援するため、独自の助成制度を設けています。その一つとして「ガソリン代の助成」が含まれる場合があります。これらの制度は、自治体への事前の申請が必要であり、対象者や助成額、条件は様々です。
この記事では、静岡県、特に浜松市にお住まいの障害者手帳をお持ちの方を対象に、ガソリン代に関連する支援制度を詳しく解説します。ご自身の状況に合った制度を見つけ、賢く活用するための一助となれば幸いです。
浜松市のガソリン代助成「外出支援助成券」とは?
浜松市では、障がいのある方の外出を支援する「外出支援助成券」という制度があります。これは、バスカードやタクシー券など6種類の選択肢の中から、利用者が自分のライフスタイルに合わせて毎年1つだけ選べるものです。その選択肢の一つに「ガソリン券」が含まれています。
この制度を利用すると、年間7,000円分のガソリン券が交付され、市と協定を結んだガソリンスタンドで利用することができます。
対象者と3つの重要条件
浜松市でガソリン券の交付を受けるには、以下のすべての条件を満たす必要があります。特に注意が必要な点が3つあります。
- 対象地域に在住していること【最重要注意点】
ガソリン券の交付対象は、公共交通機関の便が少ない中山間地域に限定されています。具体的には、旧天竜市の一部、引佐町の一部、春野町、佐久間町、水窪町、龍山町にお住まいの方が対象です。 - 対象となる手帳を所持していること
以下のいずれかの手帳をお持ちの方が対象です。- 身体障害者手帳:1級~4級
- 療育手帳:A1~B1
- 精神障害者保健福祉手帳:1級~2級
- 自動車税・軽自動車税の減免を受けていないこと【最重要注意点】
これが最も重要な条件です。後述する自動車税(種別割)または軽自動車税(種別割)の減免制度を利用している場合、このガソリン券を含む外出支援助成券は一切交付されません。申請時には、手帳に「(軽)自動車税減免申請済」のスタンプが押されていないか確認されます。
その他、毎年度4月1日から申請時まで継続して浜松市内に住所があることも条件となります。
申請方法と必要なもの
申請は、毎年度定められた期間内に、お住まいの区の区役所社会福祉課または行政センターで行います。日程や会場の詳細は、年度初めに市のウェブサイトや広報で公開されるため、必ず確認しましょう。
【主な必要書類】
- 外出支援助成券交付申請書(窓口にあります)
- 障害者手帳(身体・療育・精神のいずれか)
- 認印
- マイナンバーカードまたは通知カード(本人確認のため)
代理人が申請する場合は、委任状などが別途必要になることがあります。詳細は事前に窓口へお問い合わせください。
【最重要】ガソリン券 vs 自動車税減免 どちらを選ぶべきか
浜松市では、年間7,000円のガソリン券と、自動車税・軽自動車税の減免は併用できません。自家用車を利用する方は、どちらの制度がご自身にとってメリットが大きいかを慎重に判断する必要があります。
メリット大!自動車税・軽自動車税の減免制度
これは、障がいのある方が所有する自動車(一定の条件あり)にかかる税金が減免される、静岡県が主体となる制度です。減免額は以下の通りで、ガソリン券の助成額を大きく上回ります。
- 自動車税(種別割):最大で45,000円が減免されます。
- 軽自動車税(種別割):全額免除されます。
- 自動車税(環境性能割):自動車取得時にかかる税金も、取得価額300万円を上限として減免されます。
対象となる障がいの範囲は、手帳の種類や等級、運転者(本人か、生計を同一にする家族か)によって細かく定められています。この制度は浜松市全域(静岡県内共通)で利用可能です。
あなたにとって最適な選択は?
どちらの制度を選ぶべきか、判断のポイントは明確です。金額的なメリットは圧倒的に自動車税・軽自動車税の減免制度の方が大きいです。
したがって、ほとんどの方は自動車税の減免を選択することになります。では、ガソリン券はどのような場合に選択肢となるのでしょうか。
- 自動車税減免の対象となる障がいの等級や条件に当てはまらない場合。
- しかし、外出支援助成券(ガソリン券)の対象手帳・等級には該当し、かつ対象地域に住んでいる場合。
上記のような限定的なケースにおいて、ガソリン券が有効な選択肢となります。ご自身の状況がどちらに当てはまるか不明な場合は、区役所の福祉担当窓口で相談することをお勧めします。
ガソリン券以外の交通関連支援制度
ガソリン券の対象外であったり、自動車税減免を選択したりした場合でも、利用できる交通関連の支援は他にもあります。
【浜松市】障害者施設通所交通費の助成
この制度は、外出支援助成券の交付対象から外れた方を補完する目的があります。就労移行支援事業所などの障害福祉サービス施設へ、公共交通機関を利用して通所する際の交通費の一部が助成されます。
- 助成額:年間最大7,000円
- 主な対象者:
- 自動車税・軽自動車税の減免を受けているため、外出支援助成券が受けられない方
- 手帳の等級が外出支援助成券の対象外の方(例:身体5級・6級など)
- 申請方法:通所している事業所を通じて申請します。個人で市役所に申請するわけではない点に注意が必要です。
浜松市にはこの他にも、視覚障がい者等を対象とした年間20,000円分のタクシー券など、特定のニーズに応える制度も存在します。
【全国共通】有料道路の通行料金50%割引
これは全国共通の制度で、NEXCOなどが管轄する有料道路の通行料金が50%割引になります。自家用車での移動が多い方には非常に大きなメリットがあります。
- 対象者:
- 身体障害者手帳をお持ちの方(本人が運転)
- 重度の身体障がい(第1種)または重度の知的障がい(療育手帳A)の方が同乗し、家族などが運転する場合
- 注意点:現在のところ、精神障害者保健福祉手帳は対象外です。
- 手続き:事前に市区町村の福祉担当窓口で、手帳と車検証、ETCカード情報などを登録する必要があります。
その他の購入・改造・融資に関する支援
自動車の利用に関連して、以下のような支援制度も存在します。これらは各自治体で制度の有無や内容が異なるため、お住まいの市区町村への確認が必要です。
- 自動車改造費・運転免許取得費の助成:手動運転装置の取り付けや、免許取得費用の一部が助成されます。浜松市にも制度があります。
- 福祉車両購入時の消費税非課税:車いす昇降リフトなどが付いた福祉車両の購入時に消費税が非課税になります。
- 社会福祉協議会による低金利融資:静岡県社会福祉協議会では、福祉車両の購入費用として最大250万円までの貸付制度があります(連帯保証人がいる場合は無利子)。
静岡県内の他市の状況(参考)
静岡県内の他の市でも、交通に関する独自の支援策が講じられています。ただし、浜松市と同様に、自動車税減免との併用ができないケースがほとんどです。
| 市 | 主な交通関連支援(自動車税減免と併用不可の場合が多い) | 出典 |
|---|---|---|
| 伊東市 | 重度心身障がい者向けにタクシー料金を助成(基本料金相当額の助成券を年間24枚交付)。 | 伊東市 障害福祉のしおり |
| 焼津市 | 軽自動車税の減免を受ける年度は、タクシー券の交付は受けられないと明記。 | 焼津市 軽自動車税減免申請 |
| 藤枝市 | 令和7年4月から、障害福祉施設への公共交通機関利用による通所交通費を助成する制度を開始。 | 藤枝市 障害福祉施設通所交通費の助成 |
| 静岡市 | 独自の交通費助成制度は令和6年度で廃止。ただし、令和7年4月以降、JRで精神障害者手帳所持者への割引が開始されるなど、公共交通機関の割引は拡充。 | 静岡市 よくある質問 |
このように、各市で支援内容は異なります。詳細はお住まいの自治体の障害福祉担当課にご確認ください。
制度だけじゃない!浜松市内の「障がい者に優しいガソリンスタンド」
セルフサービスのガソリンスタンドが増え、給油作業に不安を感じる方もいるかもしれません。浜松市内には、制度とは別に、障がいのある方や高齢者に対して配慮あるサービスを提供しているガソリンスタンドがあります。
スズキグループの「スズキビジネス」が運営する一部のガソリンスタンドでは、セルフ価格のままスタッフが給油や精算を代行してくれるサービスを実施しています。
- 対象者:65歳以上の方、障がい者の方、女性の方
- サービス時間:平日(月~金)の13:00~17:00限定
- 実施店舗例:「R-1 浜松セルフSS」「プラザ湖西セルフSS」など
車から降りることなく給油が完了するため、給油作業に不安がある方は、こうしたサービスの活用も一つの有効な手段です。
まとめ:最適な支援を見つけるために
この記事では、静岡県浜松市を中心に、障害者手帳を持つ方が利用できるガソリン代関連の支援制度について解説しました。最後に重要なポイントをまとめます。
- 障害者手帳を提示するだけでガソリン代が直接割引になる全国一律の制度はありません。
- 浜松市のガソリン代助成は「外出支援助成券」の一つで年間7,000円分ですが、対象地域が限定されており、自動車税・軽自動車税の減免との併用はできません。
- 多くの場合、減免額が大きい自動車税・軽自動車税の減免(最大45,000円または全額)を選ぶ方が経済的メリットは大きいです。
- 税減免を選んだ場合でも、浜松市の「障害者施設通所交通費の助成(年間最大7,000円)」や、全国共通の「有料道路50%割引」など、併用可能な支援制度があります。
どの制度が自分にとって最適か、判断に迷う場合は、お住まいの区役所社会福祉課や行政センターの窓口に相談することが最も確実です。利用できる制度を正しく理解し、賢く活用することで、日々の生活の負担を軽減することができます。


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