以下の記事は、双極性障害の方を読者と想定して作成した記事になります。あえて一人称目線で記事を作成しています。あくまで参考の一つとしてお読みいただけると嬉しいです。(必要な部分は取り入れていただき、そうでないと判断された部分は流し読みして頂く形で問題ございません。)
…こんにちは。私は浜松市に住む、双極性障害の当事者です。かつての私は、気分の波に翻弄され、仕事を続けることに絶望していました。「もう二度と、普通に働くことなんてできないんじゃないか」。そんな暗闇の中にいた私が、今、安定した毎日を送り、自分らしく働けているのは、浜松市の「就労移行支援」というサービスに出会えたからです。
この記事では、双極性障害という見えない障害と闘いながら、私がどのようにして就労移行支援を通じて自分らしい働き方を見つけたのか、その道のりを具体的にお話しします。もしあなたが今、同じような悩みや不安を抱えているなら、この記事が少しでも希望の光となれば幸いです。
働くことの難しさと向き合う日々
双極性障害と診断される前も、そして診断された後も、私にとって「働く」ことは常に困難との闘いでした。気分の波は、仕事のパフォーマンスだけでなく、人間関係や自己肯定感まで、すべてを蝕んでいきました。
双極性障害が仕事に与える深刻な影響
双極性障害は、気分が異常に高揚する「躁状態」と、深く落ち込む「うつ状態」を繰り返す病気です。この両極端な状態は、仕事に深刻な影響を及ぼします。
- 躁状態のとき:エネルギーに満ち溢れ、何でもできるような万能感に包まれます。睡眠時間が短くても平気で、次々とアイデアが浮かび、仕事が捗るように感じることもあります。しかし、その実態は注意散漫で、判断力が低下し、衝動的な行動で重大なミスや同僚との衝突を引き起こしがちでした。自信過剰な言動が、知らず知らずのうちに職場の人間関係を壊してしまうことも一度や二度ではありませんでした。
- うつ状態のとき:体は鉛のように重く、ベッドから起き上がることさえ困難になります。集中力や思考力は著しく低下し、簡単なメールの返信すらできません。何に対しても興味を失い、「自分は価値のない人間だ」という絶望感に苛まれ、出社できなくなる日が増えていきました。
ある調査では、双極性障害を持つ人の88%が「病気が仕事のパフォーマンスに影響した」と回答しています。また、半数以上が他の人より頻繁に転職やキャリア変更を余儀なくされたと感じているというデータもあります。これは、決して他人事ではありませんでした。
「もう無理かもしれない」―繰り返す休職と孤立感
気分の波に耐え切れず、私は何度も休職を繰り返しました。復職しても、周囲の視線が気になり、些細なことで落ち込み、再び体調を崩す。その悪循環でした。上司や同僚に病気のことを打ち明けるべきか悩みましたが、精神疾患への偏見や差別を恐れて、結局一人で抱え込むしかありませんでした。
ある日、うつ状態のどん底で、私はついに退職届を出しました。「社会人として失格だ」。そう自分を責め、社会から切り離されたような深い孤立感に苛まれました。収入は途絶え、将来への不安だけが募る毎日でした。
転機となった「就労移行支援」との出会い
絶望的な日々の中、インターネットで偶然見つけたのが「就労移行支援」という言葉でした。それは、私にとって暗闇に差し込んだ一筋の光のように思えました。
就労移行支援とは?―私にとっての希望の光
就労移行支援とは、私のような障害や難病のある人が、一般企業への就職を目指すために利用できる福祉サービスです。単に仕事を紹介するだけでなく、職業訓練や就職活動のサポート、さらには就職後の定着支援までを一貫して行ってくれると知りました。
就労移行支援は、発達障害や精神障害のある一般企業への就労を目指している方に向けて、スキルや資格の習得、生活リズムの安定、就職活動、就職後の定着を一貫してサポートする福祉事業です。
障害者手帳がなくても、医師の診断があれば利用できる可能性があることも、私にとっては大きな希望でした。一人で戦うのではなく、専門家のサポートを受けながら社会復帰を目指せる。その事実に、心が少し軽くなったのを覚えています。
なぜ浜松市の就労移行支援を選んだのか
私が住む浜松市は、多様な働き方を推進し、誰もが安心して働ける環境づくりに力を入れている都市です。実際に調べてみると、市内には多くの就労移行支援事業所があり、それぞれに特色があることがわかりました。
浜松市自身も、障害のある方への就労支援に積極的に取り組んでおり、就労支援機関や障害者雇用を行う企業との連携イベントなどを開催しています。こうした地域のサポート体制が整っていることも、浜松市で就労移行支援を利用しようと決心した大きな理由の一つです。
浜松市の就労移行支援で始まった、自分を取り戻すプロセス
勇気を出して見学に行き、通い始めた浜松市内の就労移行支援事業所。そこでの日々は、まさに「自分を取り戻す」ためのプロセスそのものでした。
ステップ1:生活リズムの安定と自己理解
最初の目標は、「安定して通所すること」でした。双極性障害を持つ私にとって、不規則になりがちな生活リズムを整えることは最も重要な課題です。事業所では、週2〜3日の短時間利用から始めさせてくれました。焦らず、自分のペースで通う中で、徐々に生活リズムが整っていくのを実感しました。
また、スタッフとの面談やプログラムを通じて、自分の障害特性を客観的に理解する訓練も行いました。どんな時に気分の波が起きやすいのか、躁状態やうつ状態の兆候は何か。自分の「取扱説明書」を作るような作業は、今後のセルフケアに不可欠なものでした。
ステップ2:自分に合った仕事のスキルを学ぶ
生活が安定してくると、次は就職に向けた実践的な訓練が始まります。浜松市内の事業所はプログラムが豊富で、PCスキル(Word, Excel)、ビジネスマナー、コミュニケーション訓練など、社会で働くための基礎から学ぶことができました。特に、他の利用者と協力して作業を進めるグループワークは、対人関係の不安を克服する良い練習になりました。
事業所によっては、プログラミングやWebデザインといった専門的なITスキルに特化している場所もあり、自分の興味や特性に合わせて学ぶ内容を選べるのが大きな魅力です。
ステップ3:専門スタッフと二人三脚の就職活動
いよいよ就職活動の段階へ。ここでも、就労移行支援のサポートは心強いものでした。一人では心が折れてしまいそうな活動も、支援スタッフが二人三脚で支えてくれます。
- 自己分析と企業探し:自分の強みや弱み、希望する働き方をスタッフと一緒に整理し、自分に合った求人を探しました。
- 書類添削と面接練習:履歴書や職務経歴書の書き方を丁寧に指導してもらい、何度も面接の練習に付き合ってくれました。
- 企業実習(インターン):提携している企業で実際に働く「企業実習」の機会もありました。就職前に職場の雰囲気を体験できたことは、ミスマッチを防ぐ上で非常に有益でした。
就職後も続く「定着支援」という安心感
就職はゴールではありません。働き続けることこそが重要です。就労移行支援の最大のメリットの一つが、この「就労定着支援」です。就職後も、支援スタッフが定期的に面談を行ってくれます。職場での悩みや不安を相談したり、必要であればスタッフが会社との間に入って環境調整の働きかけをしてくれたりします。このサポートは、原則として就職後6ヶ月、事業所によっては最長で3年半も続きます。この「いつでも相談できる場所がある」という安心感が、今の私の安定した就労を支えています。
双極性障害と向き合いながら働くためのヒント
就労移行支援で学んだこと、そして今の職場で実践していることを基に、双極性障害と向き合いながら働くためのヒントをいくつかご紹介します。
自分に合った職場環境を見つける
「どんな仕事か」も大切ですが、「どんな環境で働くか」はそれ以上に重要です。双極性障害の特性を考えると、以下のような環境が望ましいとされています。
- 規則的な勤務時間:生活リズムの乱れは症状を悪化させる大きな要因です。夜勤や不規則なシフトは避け、日中の決まった時間で働ける職場が理想的です。
- 低ストレスな環境:過度なプレッシャーや人間関係のストレスは症状の引き金になります。静かで落ち着いた環境や、一人で集中できる業務が向いている場合があります。
- 柔軟な働き方:在宅勤務や時短勤務、フレックスタイムなど、体調に合わせて柔軟に働き方を調整できる制度があると、無理なく仕事を続けやすくなります。
職場でのセルフケアとコミュニケーション
働き続けるためには、日々のセルフケアが欠かせません。
- 服薬の継続:「調子が良いから」と自己判断で薬をやめるのは最も危険です。躁状態を防ぐためにも、主治医の指示通りに服薬を続けることが大前提です。
- ストレス管理:疲れたと感じる前にこまめに休憩を取る、リラックスできる時間を作るなど、意識的にストレスを溜めない工夫をしましょう。
- オープンかクローズか:職場に病気のことを伝えるか(オープン就労)、伝えないか(クローズ就労)は、非常に悩ましい問題です。伝えることで配慮を得やすくなるメリットがありますが、偏見を招くリスクもゼロではありません。これは個人の判断ですが、就労移行支援のスタッフや主治医とよく相談して決めることをお勧めします。
浜松市であなたに合う就労移行支援事業所を見つけるには
浜松市内には、それぞれ特色のある就労移行支援事業所が複数あります。自分に合った場所を見つけるためには、実際に見学に行き、雰囲気やプログラム内容を確かめることが大切です。ここでは、参考としていくつかの事業所をご紹介します。
LITALICOワークス 浜松
業界最大手で、全国に事業所を展開しています。豊富な実績とノウハウが強みで、安定したサービスが期待できます。企業インターンの機会も多く、実際に働きながら自分に合う仕事を見つけられるのが大きな特徴です。浜松駅からのアクセスも良好です。
ランプ浜松
プログラミングやWebデザイン、動画編集など、ITスキルに特化した訓練が受けられるのが最大の特徴です。IT業界への就職実績も豊富で、専門スキルを身につけて就職したい方に適しています。卒業生の就職後定着率が96%と非常に高いのも安心材料です。
アクセスジョブ 浜松駅前
個別支援を重視し、500種類以上という非常に豊富なプログラムから、自分に合った訓練を選べるのが特徴です。PC訓練から軽作業、ストレスコントロールまで、幅広いニーズに対応しています。eラーニングシステムや在宅訓練のサポートも整っており、柔軟な学び方が可能です。
ウェルビー 浜松駅前センター
全国展開している大手の事業所で、特に発達障害や精神障害のある方の特性に合わせた支援に強みを持っています。「障害は”隠す”ものではなく”生かす”ものである」という理念のもと、自己理解を深めながら、働く上で必要なスキルを段階的に習得することを目指します。浜松駅からのアクセスも便利です。
経済的な不安を抱える方へ:利用できる公的制度
働けない期間の生活費は、大きな不安の種です。しかし、日本にはそうした状況を支えるための公的な制度がいくつかあります。
障害年金
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事が制限される場合に受け取れる公的な年金です。双極性障害も対象となり、一定の要件を満たせば、働きながらでも受給できる場合があります。治療に専念するため、また安定した生活の基盤として、非常に重要な制度です。申請には初診日の証明などが必要になるため、専門家である社会保険労務士や支援機関に相談することをお勧めします。
その他の支援制度
障害年金の他にも、状況に応じて利用できる制度があります。
- 傷病手当金:健康保険の被保険者が、病気やけがで会社を休み、給与が十分に受けられない場合に支給されます。
- 自立支援医療制度:精神疾患の治療にかかる医療費の自己負担額を軽減する制度です。
- 失業保険(雇用保険):退職した場合、次の仕事が見つかるまでの一定期間、給付金を受けられます。
これらの制度について、まずはお住まいの市区町村の窓口やハローワークに問い合わせてみましょう。
まとめ:最初の一歩を踏み出す勇気
双極性障害と共に働くことは、決して平坦な道ではありません。しかし、適切な治療とサポートがあれば、自分らしく、安定して働き続けることは十分に可能です。私にとって、浜松市の就労移行支援事業所は、単に就職するための場所ではなく、自分自身を理解し、自信を取り戻し、社会と再び繋がるための「リハビリの場」でした。
もしあなたが今、一人で悩み、先の見えない不安の中にいるのなら、どうか諦めないでください。助けを求めることは、弱さではありません。それは、より良い未来へ向かうための、最も勇気ある一歩です。あなたを支えてくれる場所は、必ずあります。まずは、お近くの就労移行支援事業所に「見学したいのですが」と、一本の電話をかけることから始めてみませんか。
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