初めての就労移行支援、浜松市で知っておくべき10の基本

「働きたいけれど、ブランクがあって不安」「自分に合う仕事がわからない」「障害や病気のことを理解してもらえる職場で働きたい」——。そんな悩みを抱える浜松市民の皆さんへ。その一歩を後押しする公的な福祉サービスが「就労移行支援」です。

この記事では、浜松市で初めて就労移行支援の利用を検討する方に向けて、知っておくべき10の基本を、国の制度から市内の具体的な情報まで、わかりやすく解説します。あなたの「働きたい」を叶えるための羅針盤として、ぜひご活用ください。

基本1:就労移行支援とは?国の制度を正しく理解する

就労移行支援とは、障害者総合支援法に基づいた国の福祉サービスの一つです。障害や難病のある方が、一般企業への就職を目指すために必要な知識やスキルを身につけ、就職活動から就職後の職場定着まで、一貫したサポートを受けることができます。

目的は、単に仕事を見つけることだけではありません。訓練を通じて自分自身の得意・不得意を理解し、体調管理能力やコミュニケーションスキルを高め、自分らしく、安定して働き続ける力を養うことにあります。

このサービスは、ハローワークのような職業紹介(あっせん)を直接行うものではなく、利用者が主体的に就職活動を進められるよう、専門のスタッフが伴走しながら支援する点が大きな特徴です。

基本2:どんな人が利用できる?対象者の条件

就労移行支援は、以下の3つの条件を満たす方が対象となります。

  • 年齢:利用開始時に18歳以上65歳未満の方
  • 障害・難病:身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、または指定難病のある方
  • 意欲:一般企業への就職(復職)を希望しており、就労が見込まれる方

休職中の方も、自治体の判断によっては利用が可能です。また、利用する事業所によって、対象とする障害種別が異なる場合があります(例:精神障害専門など)。

障害者手帳がなくても利用できる?

はい、障害者手帳は必須ではありません。 医師の診断書や意見書、定期的な通院の事実などに基づき、お住まいの市区町村(浜松市)が「就労に困難があり、サービスの必要性が認められる」と判断すれば、利用が可能です。実際に、手帳を持たずにサービスを利用している方は多くいます。

基本3:どんなサポートが受けられる?具体的な支援内容

就労移行支援事業所では、一人ひとりの状況や目標に合わせて個別支援計画が作成され、多岐にわたるサポートが提供されます。内容は事業所によって特色がありますが、主に以下のような支援が行われます。

  • 自己理解・体調管理:ストレスコントロール、生活リズムの構築、自身の障害特性の理解など。
  • 職業スキル訓練:PCスキル(Word, Excel)、ビジネスマナー、軽作業、専門スキル(プログラミング、デザインなど)。
  • コミュニケーション訓練:SST(社会生活技能訓練)やグループワークを通じて、報告・連絡・相談などを学びます。
  • 就職活動サポート:求人検索、履歴書・職務経歴書の添削、模擬面接、企業研究。
  • 職場体験実習(インターン):提携企業で実際に働く体験をし、仕事への適性や課題を確認します。
  • 職場定着支援:就職後も、悩み相談や企業との調整など、長く働き続けるためのサポートを受けられます。

浜松市内には、500種類以上のプログラムから自分に合った訓練を選べる事業所もあり、個別支援に力を入れているのが特徴です。

基本4:利用できる期間は?原則2年間の意味

就労移行支援の利用期間は、原則として最長24ヶ月(2年間)です。この期間内に、就職に必要な準備を整え、一般就労を目指します。

ただし、自治体の審査により必要性が認められた場合には、最大1年間の延長が可能で、合計3年間利用できるケースもあります。また、一度就職して退職した場合など、再度利用が必要になった際には、自治体の判断で改めて2年間利用できる「期間リセット」の可能性があります。

基本5:費用はかかる?利用料金の仕組み

就労移行支援は福祉サービスのため、利用料金は前年度の世帯収入によって決まります。しかし、約9割の方が自己負担額0円で利用しています。

具体的な負担上限月額は以下の通りです。

区分 / 世帯の収入状況 負担上限月額
生活保護受給世帯 0円
市町村民税非課税世帯(低所得) 0円
市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) 9,300円
上記以外(一般2) 37,200円

※「世帯」の範囲は、本人と配偶者です。親や兄弟の収入は含まれません。交通費や昼食代の補助がある事業所もありますので、見学時に確認してみましょう。

基本6:相談から就職までの流れ

就労移行支援の利用開始から就職までは、一般的に以下のステップで進みます。

  1. 事業所を探し、相談・見学・体験
    まずは通える範囲にある事業所をインターネットなどで探し、電話やウェブサイトから見学を申し込みます。事業所の雰囲気やプログラムを実際に体験することが重要です。
  2. 市役所への利用申請
    利用したい事業所が決まったら、浜松市の障害福祉担当窓口(各区の社会福祉課など)にサービスの利用を申請します。
  3. サービス等利用計画案の作成
    指定特定相談支援事業者に依頼し、どのような支援が必要かをまとめた「サービス等利用計画案」を作成してもらいます。
  4. 支給決定・受給者証の交付
    市の調査や審査を経て、サービスの支給が決定されると、「障害福祉サービス受給者証」が交付されます。
  5. 事業所との契約・利用開始
    受給者証を持って事業所と契約を結び、個別支援計画を作成して、いよいよ利用開始です。
  6. 訓練・就職活動・就職
    個別支援計画に沿って訓練を進め、準備が整ったら就職活動を開始。内定獲得を目指します。

手続きが複雑に感じるかもしれませんが、事業所のスタッフが申請手続きをサポートしてくれる場合がほとんどなので、安心して相談してください。

基本7:ゴールは「就職」と、その先の「職場定着」

就労移行支援の最大の目標は、就職して終わりではなく、その職場で長く安定して働き続けることです。そのため、多くの事業所では就職後の「職場定着支援」に力を入れています。

就職後6ヶ月が経過すると、希望者は「就労定着支援」という別の福祉サービスに切り替えることができます。これにより、最長で3年間、定期的な面談や職場訪問を通じて、仕事上の悩みや生活面の課題について継続的なサポートを受けられます。

就職後に生じる環境の変化や人間関係の悩みは誰にでもあるものです。支援員が本人と企業の間に立って調整することで、問題を早期に解決し、安心して働き続けられる環境を整えます。

実際に、就労移行支援を利用した方の半年後の職場定着率は、全国平均を大きく上回る高い水準にあります。

基本8:浜松市での事業所の探し方と選び方のポイント

浜松市内には、2024年時点で28件以上の就労移行支援事業所があり、それぞれに特色があります。自分に合った事業所を見つけることが、就職成功への近道です。

浜松市にある代表的な就労移行支援事業所

浜松市には、全国展開する大手から、地域密着型、IT特化型まで多様な事業所が存在します。

  • LITALICOワークス 浜松:業界最大手で、豊富な実績とノウハウが強み。JR浜松駅からのアクセスも良く、一人ひとりに合わせた丁寧な支援計画を提案。
  • アクセスジョブ 浜松駅前:完全個別支援と500種類以上の豊富なプログラムが特徴。就職率・定着率ともに90%以上という高い実績を誇る。
  • ランプ浜松 (旧 就労移行ITスクール浜松):プログラミングやWebデザインなど、ITスキルに特化した訓練を提供。IT業界での就職を目指す方に人気。

自分に合った事業所を選ぶ4つの視点

事業所選びで失敗しないために、以下の4つのポイントをチェックしましょう。

  1. プログラム内容:自分が学びたいスキル(PC、専門技術など)のプログラムが充実しているか。
  2. 事業所の雰囲気:スタッフや他の利用者の様子、事業所の清潔さなど、自分が安心して通えそうか。
  3. 就職実績と定着率:希望する職種への就職実績があるか。就職後の定着率も重要な指標です。
  4. 立地と通いやすさ:自宅からのアクセス、交通費の負担などを考慮し、無理なく通える場所か。

パンフレットやウェブサイトの情報だけではわからないことがたくさんあります。必ず複数の事業所を見学・体験し、自分の目で見て、スタッフと話して比較検討することが何よりも大切です。

基本9:浜松市の充実した連携サポート体制

浜松市では、就労移行支援事業所だけでなく、様々な機関が連携して障害のある方の就労をサポートしています。これらの機関と事業所が連携することで、よりきめ細やかな支援が実現します。

  • 浜松市障害者就労支援センター「ふらっと」:浜松市からの委託を受け、仕事に関する総合的な相談や支援を行う機関。
  • 障害者就業・生活支援センター「なかぽつ」:ハローワークや福祉施設と連携し、就業面と生活面の一体的な支援を提供。
  • ハローワーク浜松(公共職業安定所):障害者専門の窓口があり、求人紹介や就職面接会などを実施。
  • 浜松市主催のイベント:毎年「ともにはたらくフェア」などの就労支援イベントが開催され、事業所や企業と直接話せる機会が設けられています。

浜松市は、国の基本指針に基づき、令和8年度(2026年度)までに就労移行支援からの一般就労への移行者数を年間189人にするという具体的な目標を掲げ、支援体制の強化に取り組んでいます。

基本10:最初の一歩は「見学・相談」から

ここまで読んで、就労移行支援について少しイメージが湧いてきたでしょうか。しかし、一番大切なのは、あなた自身が「ここなら頑張れそう」と感じられる場所を見つけることです。

多くの事業所では、無料で見学や相談、体験利用を受け付けています。利用を前提としていなくても、話を聞くだけでも大丈夫です。家族や支援者の方との同伴も歓迎されます。

「自分に合う仕事がわからない」「体調に合わせた働き方を相談したい」「どんなプログラムがあるか知りたい」——。どんな小さな疑問や不安でも、専門のスタッフが親身に相談に乗ってくれます。

一人で悩まず、まずは一歩踏み出してみませんか。その勇気が、あなたの「働きたい」という思いを現実に変える大きな力になります。浜松市には、あなたを応援するたくさんのサポーターが待っています。

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