浜松ホトニクスの障害者雇用戦略:法定雇用率達成から特例子会社、DE&I推進まで

はじめに:企業の社会的責任と多様性の時代

近年、企業の社会的責任(CSR)やダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)への関心が高まる中、障害者雇用は単なる法的義務を超え、企業の持続的成長を支える重要な経営戦略として位置づけられています。特に、少子高齢化による労働力不足が深刻化する日本において、多様な人材がその能力を最大限に発揮できる環境を整備することは、企業にとって喫緊の課題です。

この記事では、世界的な光技術のリーディングカンパニーである浜松ホトニクス株式会社に焦点を当て、同社の障害者雇用に関する取り組みを多角的に分析します。国の法改正の動向を踏まえつつ、法定雇用率の達成、特例子会社の設立・運営、そして多様性を尊重する企業文化の醸成まで、その具体的なアプローチを深掘りします。浜松市で就職・転職を考える障害のある方々はもちろん、企業のDE&I担当者にとっても有益な情報を提供することを目指します。

障害者雇用の現状と法改正のインパクト

浜松ホトニクスの取り組みを理解する上で、まず障害者雇用を取り巻くマクロな環境、特に国の法制度の動向を把握することが不可欠です。

国の動向:段階的に引き上げられる法定雇用率

障害者雇用促進法に基づき、企業には従業員数に応じて一定割合以上の障害者を雇用することが義務付けられています。この「法定雇用率」は、社会情勢を反映して定期的に見直されており、近年、その引き上げが加速しています。

具体的には、民間企業の法定雇用率は2024年4月に2.3%から2.5%へ、さらに2026年7月には2.7%へと段階的に引き上げられる予定です。これに伴い、雇用義務の対象となる事業主の範囲も、従業員40.0人以上から37.5人以上へと拡大されます。これにより、これまで対象外だった中小企業にも新たに雇用義務が発生し、障害者雇用の裾野が大きく広がることが予想されます。

出典: パーソルダイバース株式会社、SPOOLの情報を基に作成

障害者雇用促進法の主な改正点(2024年以降)

  • 法定雇用率の引き上げ: 2024年4月に2.5%、2026年7月に2.7%へ。
  • 短時間労働者の算定: 週10時間以上20時間未満で働く重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者も「0.5人」として算定可能に。
  • 除外率の引き下げ: 2025年4月から、障害者の就業が困難とされる業種で雇用義務を軽減する「除外率」が一律10ポイント引き下げられ、企業の雇用責任が強化。

出典: 障害者雇用促進法の改正点に関する解説記事

企業の対応状況と今後の課題

出典: 厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」

厚生労働省が発表した「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業に雇用されている障害者の数は約67.7万人、実雇用率は2.41%となり、いずれも過去最高を更新しました。これは、企業の意識向上と法制度の後押しが着実に実を結んでいることを示しています。

しかし、法定雇用率を達成している企業の割合は46.0%と、依然として半数以上の企業が未達成であるのが現状です。特に、未達成企業のうち約64%は不足数が1人未満であり、「あと一歩」の状況にある企業が多いことが分かります。これは、求職者にとって、今後採用活動を強化する可能性のある企業が数多く存在することを示唆しています。

浜松市が位置する静岡県では、実雇用率が2.43%と全国平均をわずかに上回っており、特に自動車関連などの製造業が障害者雇用を牽引しています。地域産業の特性を理解することは、浜松市での就職活動において重要なポイントとなります。

浜松ホトニクスの障害者雇用への多角的なアプローチ

浜松ホトニクスは、こうした法制度の動向や社会の要請に対し、先進的かつ多角的なアプローチで応えています。その取り組みは、単なる法令遵守にとどまらず、企業の基本理念に根差したものです。

基本理念:「人はそれぞれ違う」から始まるDEIB方針

浜松ホトニクスは、サステナビリティ経営を推進する中で、「幸福度の高い雇用制度と職場づくり」と「グループの成長と社会への貢献を支える人づくり」をマテリアリティ(重要課題)として掲げています。障害者雇用は、この重要課題を達成するための具体的な施策の一つとして明確に位置づけられています。

同社は2025年10月に、DEIB(Diversity, Equity, Inclusion & Belonging)方針を社内外に公表する予定です。この方針は、「人はそれぞれ違う」という前提に立ち、マイノリティへの理解促進や制度面での支援強化、そしてすべての社員が自分らしく挑戦し続けられる職場環境の整備を目指すものです。この理念は、障害の有無に関わらず、一人ひとりの個性を尊重し、その能力を最大限に活かそうとする同社の姿勢を象徴しています。

性別、年齢、国籍、人種、宗教、障がい、性的指向・性自認、文化、価値観、ライフスタイル、家庭環境、経験などの一人ひとりの違いを尊重します。違いや個性、これまでのやり方にとらわれることなく、公平に声をあげ変化をもたらす機会を創っていきます。
出典: 浜松ホトニクス サステナビリティサイト

雇用実績:法定雇用率の達成と継続的な取り組み

浜松ホトニクスは、理念を掲げるだけでなく、具体的な行動で障害者雇用を推進しています。同社のESGデータによると、障害者雇用率は着実に上昇しており、法定雇用率の改定にも迅速に対応しています。

出典: 浜松ホトニクス ESGデータ(各年6月1日時点)

上のグラフは各年6月時点のデータですが、同社のサステナビリティ報告によれば、2024年12月時点での障害者雇用率は2.5%に達しており、同年に改定された法定雇用率(2.5%)を達成しています。これは、法改正を見据えて計画的に採用活動を進めてきた成果と言えるでしょう。2025年には2.53%という目標を掲げており、今後も継続的な雇用拡大が見込まれます。

特例子会社「浜松ホトアグリ」:農福連携による新たな活躍の場

浜松ホトニクスの障害者雇用における特筆すべき取り組みが、2017年4月に設立された特例子会社「株式会社浜松ホトアグリ」です。

特例子会社とは?
障害者の雇用促進と安定を図ることを目的に、企業が設立する子会社のこと。親会社やグループ全体の障害者雇用率に算入できる制度上のメリットがあります。障害特性に配慮した設備や手厚いサポート体制が整っていることが多く、安心して働ける環境が提供されます。
出典: 特例子会社に関する解説記事

浜松ホトアグリは、「農業」と「福祉」を連携させた「農福連携」を実践するユニークな特例子会社です。障害のある社員が主体となり、健康野菜「リッチリーフ」の栽培、農場管理、研究開発、さらには収穫した野菜の販売までを手がけています。2024年12月現在で9名の障害のある方が活躍しており、単に作業をこなすだけでなく、自ら課題を見つけ、研究活動を行うなど、主体的に仕事に取り組める環境が整えられています。

この取り組みは、障害のある人々に安定した雇用の場を提供するだけでなく、農業というフィールドで新たなスキルを習得し、社会と直接関わる機会を創出している点で非常に意義深いものです。

働きやすい職場環境の構築と採用方針

浜松ホトニクス本体においても、障害のある社員が能力を最大限に発揮できる環境づくりが進められています。採用サイトでは、「ご本人の能力・適性に応じて、能力を最大限発揮できる仕事を応募者と相談しながら決めております」と明記されており、画一的な職務を割り当てるのではなく、対話を通じて個々に合った職域を開拓する姿勢がうかがえます。募集職種も技術職から事務職まで幅広く、多様なキャリアパスの可能性が開かれています。

また、同社は「合理的配慮」の提供にも注力しており、ハラスメント対策の強化や、障害に関する実態調査を通じて、職場環境の継続的な改善に取り組んでいます。こうした地道な努力が、すべての社員にとって働きやすいインクルーシブな職場風土を醸成しています。

法定雇用率達成の先へ:ニューロダイバーシティという新たな視点

障害者雇用をめぐる議論は、近年「雇用率の達成」という量的な側面から、「いかに活躍してもらうか」という質的な側面へとシフトしています。その中で注目されているのが「ニューロダイバーシティ(神経多様性)」という考え方です。

ニューロダイバーシティとは?
発達障害やADHDなどの神経発達上の特性を「障害」ではなく「人間の自然な多様性」の一つとして捉え、その個性を組織の強みに変えていこうとする考え方。高い集中力、パターン認識能力、細部への注意力といった特性を活かすことで、イノベーションや生産性向上に繋げます。
出典: Works Human Intelligence ニューロダイバーシティ解説

海外では、SAP社やJPモルガン・チェース社などが、自閉スペクトラム症(ASD)の特性に配慮した独自の採用・支援プログラムを導入し、生産性や品質向上で大きな成果を上げています。日本でも富士通などが取り組みを始めており、新たな人材活用の潮流として広がりつつあります。

浜松ホトニクスが掲げる「人はそれぞれ違う」という理念や、創業以来受け継がれる「失敗を許容する文化」は、このニューロダイバーシティの考え方と非常に高い親和性を持っています。個々の特性を深く理解し、適材適所の配置や合理的な配慮を行うことで、法定雇用率の達成にとどまらず、障害のある社員のユニークな能力を企業の競争力へと転換していくポテンシャルを秘めていると言えるでしょう。

浜松市で自分に合った仕事を見つけるための具体的なステップ

浜松ホトニクスのような先進的な企業への就職を目指すには、戦略的な情報収集と準備が不可欠です。浜松市で障害者雇用枠の仕事を探すための主な方法を紹介します。

  • ハローワーク(公共職業安定所): 障害のある方向けの専門窓口が設置されており、求人紹介から職業相談、就職後のフォローまで一貫した支援を受けられます。浜松市内の企業の求人が最も多く集まる場所です。
  • 障害者専門の転職エージェント: atGP、dodaチャレンジ、クローバーナビといった民間のサービスです。非公開求人を含む大手企業の求人を多く扱い、キャリア相談や書類添削、面接対策など、専門的なサポートが強みです。
  • 就労移行支援事業所: PCスキルやビジネスマナーの習得、企業実習などを通じて、就職に必要なスキルと自信を身につけることができます。事業所には企業からの求人情報も集まり、特に浜松ホトアグリのような特例子会社への就職を目指す場合にも有効な選択肢です。
  • 地域の支援機関: 静岡障害者職業センターや浜松市障害者就労支援センター「ふらっと」なども、職業能力の評価や生活面を含めた総合的なサポートを提供しています。

これらの支援機関を複数活用し、自分の希望や特性に合った企業や職種を見極めていくことが、納得のいくキャリアを築くための鍵となります。

まとめ

浜松ホトニクスは、光技術の探求という本業と同様に、障害者雇用においても先進的かつ真摯な取り組みを続けています。法定雇用率の着実な達成はもちろんのこと、特例子会社「浜松ホトアグリ」の設立によるユニークな活躍の場の創出、そして「人はそれぞれ違う」というDEIBの理念に基づいたインクルーシブな職場環境の構築は、多くの企業にとってのモデルケースとなり得ます。

国が法定雇用率の引き上げを進め、社会全体で多様な人材の活躍が求められる中、浜松ホトニクスのような企業の動向は、障害のある方々にとって大きな希望となります。求職者一人ひとりが、自らの可能性を信じ、適切な支援を活用しながら、自分らしく輝ける場所を見つけ出すことが、これまで以上に重要になっています。この記事が、その一助となれば幸いです。

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