難病と共に働く。浜松市で利用できる就労移行支援と相談窓口まとめ

「難病と診断されたけれど、働き続けたい」「自分のペースで働ける仕事を見つけたい」——。病気と向き合いながら働くことには、多くの不安や課題が伴います。特に、症状の変動や通院の必要性など、周囲の理解を得ながらキャリアを築くことは簡単ではありません。

しかし、諦める必要はありません。国や自治体には、難病のある方が安心して働き、社会で活躍するための様々な支援制度が用意されています。この記事では、特に静岡県浜松市にお住まいの難病患者の方やそのご家族を対象に、利用できる公的な相談窓口から、具体的な就職・復職をサポートする「就労移行支援」まで、網羅的に解説します。あなたに合った支援を見つけ、新たな一歩を踏み出すための手助けとなれば幸いです。

難病患者の就労を取り巻く現状と法的支援の枠組み

具体的な支援内容を見る前に、まずは難病のある方の就労がどのような状況にあり、どのような法律によって支えられているのかを理解することが重要です。客観的なデータと法的な背景を知ることで、支援の必要性や全体像を把握できます。

データで見る就労のリアル

障害者職業総合センターの調査によると、難病患者の就労状況は依然として厳しい側面があります。調査対象者のうち、失業率は15.4%と高く、さらに「就労を希望しているが現在は求職活動をしていない」潜在的な失業者を含めると、その割合は35.3%にものぼります。

このデータは、働きたいという意欲がありながらも、症状への不安や適切な支援との出会いの困難さから、就労に結びついていない方が多くいる現実を示しています。

障害者職業総合センターの調査データを基に作成。非労働力人口のうち就労希望者は22.2%だが、ここでは失業者と合わせて潜在的失業率として表現するため、構成比を調整。

支援の根拠となる法律

こうした状況を改善するため、国は複数の法律で難病患者の支援体制を整備しています。特に重要なのが以下の法律です。

  • 難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法): 医療費助成だけでなく、療養生活の質の向上を目指し、就労支援に関する施策の推進も明記されています。
  • 障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法): 企業に対して一定割合以上の障害者を雇用することを義務付ける「法定雇用率制度」を定めています。難病のある方も、障害者手帳の有無に関わらず、この法律に基づく支援の対象となる場合があります。
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法): この法律に基づき、難病患者は障害者手帳を持っていなくても、市区町村の判断により、就労移行支援などの障害福祉サービスを利用できることが定められています。

重要なのは、「障害者手帳がないと支援を受けられない」というわけではない点です。難病があることで就労に困難を抱えている場合、多くの支援制度の対象となり得ます。

全国共通で利用できる国の就労支援制度

浜松市で利用できる具体的な窓口を見る前に、全国どこでも共通で提供されている国の支援制度について知っておきましょう。これらの機関は連携しあって、一人ひとりの状況に合わせたサポートを提供しています。

最初の相談先となる主要な支援機関

「どこに相談すればいいかわからない」という方は、まず以下の機関に連絡してみるのがおすすめです。

  • ハローワーク(公共職業安定所): 全国のハローワークには、障害や難病のある方向けの専門援助窓口が設置されています。特にが配置されているハローワークでは、病気の特性を理解した専門員が、きめ細やかな職業相談や紹介、職場定着支援を行っています。
  • 難病相談支援センター: 各都道府県・指定都市に設置されており、療養生活全般の相談に応じる拠点です。ハローワークと連携して就労支援も行っており、医療と福祉、就労をつなぐ重要な役割を担っています。
  • 地域障害者職業センター: 職業能力の評価、職業準備訓練、職場復帰支援(リワーク支援)など、より専門的な職業リハビリテーションを提供する機関です。ハローワークと連携して、個別の支援計画を作成してくれます。
  • 障害者就業・生活支援センター(なかぽつ): 就職活動の支援から、就職後の生活面での相談まで、仕事と生活の両面から一体的なサポートを提供する身近な相談機関です。

就職を目指すための福祉サービス「就労移行支援」とは

一般企業への就職を目指す難病のある方にとって、非常に心強いサービスが「就労移行支援」です。これは障害者総合支援法に基づく福祉サービスの一つで、障害者手帳の有無にかかわらず、必要性が認められれば利用できます。

就労移行支援事業所では、最長2年間の利用期間の中で、以下のようなサポートを受けられます。

  • 個別支援計画の作成: 一人ひとりの病状、体力、希望する働き方に合わせて、支援計画を作成します。
  • 職業訓練: パソコンスキル、ビジネスマナー、コミュニケーションスキルなど、働く上で必要な能力を高めるためのプログラムが提供されます。
  • 自己理解の深化: 自分の得意なこと、苦手なこと、必要な配慮などを整理し、長く働き続けるための自己管理能力を養います。
  • 職場探しと実習: ハローワークと連携した求人紹介のほか、企業での職場実習(インターン)を通じて、実際の仕事を体験し、自分に合った職場環境を見つけます。
  • 就職後の定着支援: 就職後も、職場での悩みや課題について相談に乗ってもらい、企業との間に入って調整を行うなど、安定して働き続けられるようサポートします。

企業側のメリット:雇用を後押しする助成金

企業が難病のある方を雇用する際には、国からの助成金制度が用意されています。これを理解しておくことは、就職活動においても有利に働くことがあります。代表的なものがです。

これは、ハローワーク等の紹介により、対象となる難病患者を継続して雇用する事業主に対して助成金が支給される制度です。企業側の経済的負担を軽減し、雇用へのハードルを下げることで、採用の機会を広げる効果が期待されます。

【浜松市】具体的な相談窓口と就労移行支援事業所

それでは、浜松市で利用できる具体的な相談窓口や支援機関を見ていきましょう。身近な場所に頼れる専門家がいます。

浜松市の主要な相談窓口

まずは、総合的な相談ができる窓口です。どこに相談すればよいか迷ったら、こちらに連絡してみましょう。

浜松市難病相談支援センター

病気のこと、治療、療養生活、利用できる制度など、難病に関するあらゆる相談に対応してくれます。必要に応じて専門機関を紹介してくれる、まさに最初の駆け込み寺です。

  • 住所: 浜松市中央区鴨江二丁目11番2号(浜松市保健所2階 健康増進課内)
  • 電話番号: 053-453-6127
  • 相談日時: 月~金曜日(祝日・年末年始を除く)午前9時~午後5時(電話受付は午後4時まで)
  • 情報源: 浜松市公式ウェブサイト

ハローワーク浜松

専門援助部門(障害者窓口)では、難病患者就職サポーターと連携し、専門的な就労支援を行っています。求人情報の提供だけでなく、応募書類の添削や面接練習などもサポートしてくれます。

浜松医科大学医学部附属病院 難病医療相談支援室

医療機関ならではの専門的な視点から相談が可能です。特に、治療と仕事の両立に関する具体的な悩みについて、労働の専門家である両立支援促進員やハローワーク職員と連携した就労相談会を定期的に開催しています。

浜松市で自分に合った就労移行支援事業所を探す

浜松市内には、難病のある方も利用できる就労移行支援事業所が複数あります。それぞれに特色があるため、見学や体験利用を通じて、自分に合った場所を見つけることが大切です。ここではいくつかの事業所を例として紹介します。

アクセスジョブ浜松駅前

「新浜松駅」から徒歩1分という抜群のアクセスが魅力です。『完全個別支援制』を掲げ、約500種類以上のプログラムから一人ひとりに合ったカリキュラムを作成してくれます。MOSなどの資格取得プログラムや、eラーニングも充実。栄養バランスの整ったランチが無料で提供されるのも嬉しいポイントです。難病や障害者手帳のないグレーゾーンの方のサポート実績も豊富です。

LITALICOワークス浜松

JR「浜松駅」から徒歩5分のアクトタワー内にあります。業界トップクラスの累計就職者数を誇り、そのノウハウを活かしたサポートが強みです。障害者手帳がなくても利用相談が可能で、障害を開示せずに働く「クローズ就労」を目指す方のサポートも行っています。多様なプログラムや企業インターンを通じて、自分らしい働き方を見つける手助けをしてくれます。

ウェルビー浜松駅前センター

浜松プレスタワーの14階にあり、見晴らしの良い環境で訓練に取り組めます。「働きたいけど、どう進めていいかわからない」といった悩みに寄り添い、職員が一緒に考え、一人ひとりのペースに合わせた支援を提供しています。協力医療機関との連携も特徴の一つです。

事業所選びのポイント

  • 通いやすさ: 自宅からの距離や交通の便は、継続して通う上で重要です。
  • プログラム内容: PCスキル、コミュニケーション、軽作業など、自分が学びたい内容があるか確認しましょう。
  • 事業所の雰囲気: スタッフや他の利用者との相性も大切です。見学や体験で実際の雰囲気を感じてみましょう。
  • 実績: 就職率や就職後の定着率、どのような職種への就職実績があるかも参考にしましょう。

地域に根差したその他の支援とイベント

浜松市では、就労移行支援事業所以外にも、働くことを応援する独自の取り組みがあります。

  • ともにはたらくフェア: 浜松市が開催する就労支援イベントです。市内の障害福祉サービス事業所や障害者雇用に積極的な企業が多数出展し、直接話を聞いたり相談したりできる貴重な機会です。例年7月頃に開催されています。
  • 浜松市ジョブサポートセンター: 浜松市役所内に設置されており、ハローワークの相談員が常駐しています。就労意欲がありながら生活に困難を抱える方に対し、職業相談・紹介を行っています。
  • 重度障害者等就労支援特別事業: 通勤や職場での介助が必要な重度の障害のある方に対し、ヘルパー派遣などの支援を行う浜松市独自の事業です。

支援利用開始までの3ステップ

「支援がたくさんあるのはわかったけど、何から始めればいいの?」という方のために、利用開始までの大まかな流れをまとめました。

  1. 相談と情報収集
    まずは「浜松市難病相談支援センター」や「ハローワーク浜松」の専門窓口に相談し、自分の状況や希望を伝えます。ここで、利用できそうな制度や支援機関について具体的な情報を得ることができます。
  2. 利用に必要な手続き
    就労移行支援などの障害福祉サービスを利用するには、お住まいの区役所の社会福祉課などで申請を行い、「障害福祉サービス受給者証」の交付を受ける必要があります。申請手続きについても、相談窓口で詳しく教えてもらえます。また、2024年4月から始まったをマイナンバーカードと連携させておくと、ハローワークなどで指定難病患者であることをスムーズに証明でき、手続きが円滑になります。
  3. 事業所の見学・体験と契約
    受給者証が交付されたら、気になる就労移行支援事業所に見学や体験に行きます。複数の事業所を比較検討し、自分に最も合うと感じた場所と利用契約を結び、支援がスタートします。

まとめ:一人で悩まず、まずは相談から

難病と共に働く道は、決して平坦ではないかもしれません。しかし、浜松市には、あなたの「働きたい」という気持ちを支えるための相談窓口、専門機関、そして共に歩んでくれる就労移行支援事業所が数多く存在します。

症状や体力への不安、キャリアに関する悩み、利用できる制度の疑問など、どんな些細なことでも構いません。大切なのは、一人で抱え込まずに、専門の支援機関に相談してみることです。そこから、あなたに合ったサポートが見つかり、自分らしい働き方を実現するための道が開けていくはずです。

この記事が、あなたが次の一歩を踏み出すきっかけとなることを心から願っています。

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