自分の障害について、面接でどう説明する?伝え方のポイントと例文

障害者雇用枠での就職活動、特に「面接」に大きな不安を感じていませんか?中でも、「自分の障害について、どう説明すればいいんだろう…」「正直に話しすぎると不利になるかもしれない…」といった悩みは、多くの人が抱える共通の課題です。

実際に、障害のある方が就職活動で感じた困難として、『企業の障害に対する理解が不足している』『障害に適した求人情報が少ない』が同率1位(50%)という調査結果もあります。このデータは、企業と求職者の間に情報のギャップが存在することを示唆しています。

この記事では、浜松市で就職を目指す障害のある方に向けて、面接でご自身の障害を効果的に伝え、採用のミスマッチを防ぎ、自分らしく働ける職場を見つけるための具体的なポイントと例文を解説します。一人で抱え込まず、正しい準備と伝え方を身につけて、自信を持って面接に臨みましょう。

障害者雇用の面接、なぜ「障害の説明」が重要なのか?

障害者雇用の面接で障害について説明することは、単なる「義務」ではありません。これは、あなたと企業がお互いを理解し、入社後のミスマッチを防いで長く安定して働くための、最も重要な「コミュニケーション」です。

企業側が障害について質問するのは、決してあなたを値踏みするためではありません。むしろ、を提供し、あなたが能力を最大限に発揮できる環境を整えるために、正確な情報を必要としているのです。一方で、あなた自身も「配慮があれば、自分はこれだけのことができる」と伝えることで、企業に貢献できる人材であることをアピールできます。

この相互理解が不足すると、入社後に「こんなはずじゃなかった」という事態に陥りやすくなります。事実、精神障害者の1年後の職場定着率は約55%というデータもあり、半数近くが早期離職している現状があります。これは、採用段階でのミスマッチが一因と考えられています。

企業が知りたいこと vs. あなたが伝えるべきこと

面接官が知りたいのは、病名や障害の等級そのものよりも、「障害の特性が業務にどう影響し、そのためにどんな配慮があれば、安定して能力を発揮できるのか」という点です。これを踏まえ、あなたは以下の3点を整理して伝える必要があります。

  • 客観的な障害の状況:現在の状態や通院の必要性など。
  • 自己対処法:障害特性による困難に対し、自分で工夫していること。
  • 必要な配慮:企業にサポートしてほしい具体的な事柄。

この3点をセットで伝えることで、企業はあなたのことを「自己理解ができており、働く準備が整っている人材」と評価し、安心して採用を検討できるようになります。

面接前に必須!「戦略的自己開示」のための3つの準備

面接でうまく説明するためには、事前の準備が9割です。行き当たりばったりで話すのではなく、自分のことを深く理解し、伝えるべきことを整理しておく「戦略的自己開示」の準備を行いましょう。

1. 自分の障害特性を客観的に整理する

まずは、自分の障害について客観的に振り返ります。診断名だけでなく、それが具体的にどのような得意・不得意につながっているのかを書き出してみましょう。

  • 得意なこと・強み:(例:集中力が高く、単純作業を正確に続けられる。ユニークな発想ができる。)
  • 苦手なこと・課題:(例:同時に複数の指示を受けると混乱する。急な予定変更に対応するのが苦手。電話対応に強いストレスを感じる。)

2. 自分でできる工夫や対処法(セルフケア)を言語化する

次に、苦手なことに対して、これまでどのように自分で工夫してきたかを具体的にします。これは、あなたの問題解決能力や主体性をアピールする重要な要素です。

  • 工夫の例:「複数の指示が苦手」→「指示は一つずつメモを取り、終わったら報告するようにしています。」
  • 工夫の例:「ストレスを感じやすい」→「昼休みに5分間、静かな場所で目をつぶる時間を作り、気持ちをリセットしています。」

3. 必要な「合理的配慮」を具体的にする

自分の工夫だけではカバーしきれない部分について、企業にどのような配慮をしてもらえれば働きやすくなるかを考えます。ポイントは、具体的で、現実的、かつ過度な要求にならないことです。

  • 配慮の例:「口頭での指示は聞き漏らすことがあるため、チャットやメールなど、テキストで指示をいただけると助かります。」
  • 配慮の例:「週に一度、1時間程度の通院が必要です。業務に支障が出ないよう、フレックスタイム制度を活用させていただくことは可能でしょうか。」

この自己分析は一人で行うのが難しい場合もあります。そんな時こそ、就労移行支援事業所の専門スタッフが頼りになります。客観的な視点からあなたの強みや必要な配慮を一緒に整理し、面接で伝える言葉に磨きをかけてくれます。

【実践編】ミスマッチを防ぐ!障害の伝え方3ステップ

準備が整ったら、いよいよ面接での伝え方です。障害者雇用の専門家も推奨する、以下の3ステップで構成すると、分かりやすく、かつポジティブな印象を与えることができます。

ステップ1:客観的な事実を簡潔に伝える

まず、障害者手帳に記載されている障害名や等級、現在の状況について、事実を簡潔に伝えます。

例:「私は精神障害者保健福祉手帳の2級を所持しており、障害名はうつ病です。現在は症状も安定しており、月1回の通院を続けて体調管理に努めています。」

ステップ2:「苦手」と「工夫」をセットで説明する

次に、障害特性によって苦手なことと、それに対する自分なりの対処法をセットで説明します。これにより、「課題を自覚し、主体的に対策できる人材」という印象を与えられます。

例:「環境の変化や予期せぬ出来事が続くと、一時的に集中力が落ちてしまうことがあります。そのため、日頃からタスクをリスト化し、優先順位をつけて一つずつ着実に進めることを心がけています。また、こまめに進捗を上司に報告することで、業務の遅れを防ぐようにしています。」

ステップ3:前向きな言葉で「必要な配慮」を依頼する

最後に、自分の努力だけでは難しい部分について、企業にお願いしたい配慮を伝えます。この時、「〇〇ができないので、△△してください」という否定的な表現ではなく、「〇〇していただけると、より能力を発揮できます」という肯定的な表現を使いましょう。

例:「一度に多くの口頭指示を受けると混乱してしまうことがあるため、可能であれば、業務の指示をチャットやメールなどテキストでいただけると、正確に業務を遂行でき、より貢献できると考えております。」

【障害別】伝え方のポイントと例文

ここでは、障害の種別ごとに、伝え方のポイントと具体的な例文を紹介します。ご自身の状況に合わせてアレンジして活用してください。

発達障害(ASD・ADHDなど)の場合

発達障害のある方は、コミュニケーションやタスク管理の特性について、具体的な場面を想定して説明することが有効です。

例文(ASD傾向のある方)

【状況説明】「私は自閉スペクトラム症の特性があり、コミュニケーションにおいて、曖昧な表現や意図を察することが少し苦手です。一方で、ルールや手順が明確な作業については、高い集中力を維持し、正確にこなすことが得意です。」

【自己対処】「指示を受ける際は、必ずメモを取り、復唱して認識にズレがないか確認するようにしています。」

【求める配慮】「つきましては、業務のご指示をいただく際に、できるだけ具体的にお伝えいただけますと大変助かります。そうすることで、私の強みである正確性を最大限に活かせると考えております。」

例文(ADHD傾向のある方)

【状況説明】「私はADHD(注意欠如・多動症)の特性があり、単純作業が続くと注意が散漫になったり、タスクの優先順位付けに迷うことがあります。しかし、興味のある分野への過集中や、アイデアを出すことは得意です。」

【自己対処】「タスク管理ツールやタイマーを活用して、集中力を維持する工夫をしています。また、1日の始めにその日のタスクリストを作成し、上長に確認していただくことで、優先順位のズレを防いでいます。」

【求める配慮】「もし可能であれば、1日の終わりに5分ほど、業務の進捗を報告する時間をいただけると、計画的に仕事を進めやすくなります。」

精神障害(うつ病・双極性障害など)の場合

精神障害のある方は、体調の波があることを正直に伝えつつ、自己管理能力と安定して働くための工夫をアピールすることが重要です。

例文(うつ病の回復期にある方)

【状況説明】「私はうつ病の治療経験があり、現在は回復期で症状は安定しています。体調管理のため、月に一度の通院を継続しています。」

【自己対処】「ストレスのサインを早期に察知するため、日々の体調を記録しています。疲れを感じた際は、意識的に休憩を取るなどして、無理のないペースで働くことを心がけています。ストレス解消法は、休日に散歩をすることです。」

【求める配慮】「繁忙期が続く場合、一時的に業務負荷の調整についてご相談させていただくことがあるかもしれませんが、基本的には責任を持って業務を遂行します。また、通院のため、月に一度、半日休暇をいただくことへのご理解をいただけますと幸いです。」

身体障害・内部障害の場合

身体障害や内部障害のある方は、物理的な環境や業務内容に関する配慮を具体的に伝えることが中心となります。

例文(下肢障害・車椅子利用の方)

【状況説明】「私は下肢に障害があり、日常的に車椅子を使用しています。PCスキルや事務処理能力には自信があり、前職ではデータ入力や資料作成で高い評価をいただいておりました。」

【自己対処】「通勤ラッシュを避けることで、体力的な負担を軽減し、始業時から集中して業務に取り組めるようにしています。」

【求める配慮】「社内のバリアフリー環境(スロープや多目的トイレ)は事前に拝見し、問題なく業務ができることを確認しております。もし可能であれば、時差出勤制度を活用させていただくことで、より安定した勤務が可能になると考えております。」

一人で悩まないで。浜松市で頼れる就労支援のプロフェッショナル

ここまで面接での伝え方を解説してきましたが、「自分一人で準備するのは難しい」「客観的なアドバイスが欲しい」と感じる方も多いでしょう。そんな時、あなたの就職活動を力強くサポートしてくれるのが、浜松市内にある就労移行支援事業所です。

就労移行支援事業所とは?

就労移行支援事業所は、障害のある方が一般企業へ就職するために必要なスキル習得や就職活動のサポート、就職後の定着支援までを一貫して行う福祉サービスです。利用者は、専門の支援員と共に、以下のようなサポートを受けられます。

  • 個別支援計画の作成:一人ひとりの特性や希望に合わせた支援プランを作成。
  • 職業訓練:PCスキル、ビジネスマナー、ストレスコントロールなど。
  • 就職活動サポート:自己分析、履歴書添削、模擬面接、求人探し、面接同行。
  • 職場定着支援:就職後も定期的な面談で、職場での悩みをサポート。

面接対策はもちろん、その前段階の自己分析から、就職後のフォローまで、トータルで支援を受けられるのが最大のメリットです。

浜松市で相談できる主な就労移行支援事業所

浜松市内には、それぞれ特色のある就労移行支援事業所が複数あります。自分に合った事業所を見つけるために、まずは見学や相談をしてみることをお勧めします。

  • LITALICOワークス 浜松:全国展開で豊富な実績とノウハウを持つ大手事業所。多様なプログラムが魅力です。
  • ウェルビー なゆた浜北センター:地域に根差した手厚いサポートが特徴。駅からのアクセスも良好です。
  • アクセスジョブ 浜松田町:教育分野で実績のある企業が運営。個別支援とeラーニングが充実しています。
  • 聖隷チャレンジ工房浜北:社会福祉法人が運営。就労移行支援のほか、継続支援B型なども併設しています。

※上記は一例です。他にも多くの事業所があります。各事業所のウェブサイトを確認したり、直接問い合わせてみましょう。

公的な相談窓口も活用しよう

就労移行支援事業所のほかにも、浜松市には就労に関する相談ができる公的な窓口があります。

  • ハローワーク(公共職業安定所):障害者専門の窓口があり、求人紹介や相談ができます。
  • 浜松市 障がい者就労支援担当:市の公式サイトで各種支援策や相談窓口の情報を確認できます。
  • 障害者就業・生活支援センター:就労と生活の両面から一体的な支援を提供しています。

また、浜松市では定期的に障害者雇用に関心のある企業と求職者をつなぐ「ともにはたらくフェア」などのイベントも開催されています。こうした機会を活用するのも良いでしょう。

まとめ:障害開示は「自分らしく働く」ための第一歩

面接で自分の障害について話すことは、不安や緊張を伴うかもしれません。しかし、それは決してあなたを不利にするためのものではなく、あなたと企業が最適なパートナーシップを築き、あなたが自分らしく、そして長く活躍できる場所を見つけるための、非常に重要なプロセスです。

大切なのは、①自分の特性を正しく理解し、②自分なりの工夫を伝え、③必要な配慮を具体的に依頼すること。そして、この準備を一人で抱え込まず、浜松市の就労移行支援事業所のような専門家の力を借りることです。

正しい準備と伝え方を身につければ、面接は「試される場」から「相互理解を深める場」に変わります。自信を持って、あなたらしい働き方を実現するための第一歩を踏み出してください。

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