うつ病や適応障害など、心身の不調で仕事を休職されている方の中には、「しっかり休んだはずなのに、職場に戻るのが怖い」「また同じことの繰り返しになるのでは…」といった不安を抱えている方も少なくないでしょう。その不安、決してあなた一人だけのものではありません。
この記事では、浜松市で休職中の方が安心して職場復帰を目指すための選択肢として、「リワークプログラム」と「就労移行支援」の2つのサービスを詳しく解説します。それぞれの違いやメリット、利用方法、そして浜松市で実際に利用できる事業所まで、あなたの「次の一歩」を後押しする情報をお届けします。
休職からの復職、なぜ専門的な支援が有効なのか?
十分な休養を経て体調が回復しても、いざ復職となると大きな壁を感じることがあります。生活リズムの乱れ、体力や集中力の低下、対人関係への不安など、休職前と同じように働くことへのハードルは決して低くありません。
事実、メンタルヘルスの不調で休職した方のうち、復職後に症状が再発し、再休職や退職に至るケースは少なくありません。このような事態を避けるためにも、専門的な支援(リワーク)を活用し、復職後も無理なく働き続けるためのスキルを身につけることが非常に重要です。
専門的な支援機関では、単に職場に戻ることだけをゴールにするのではなく、休職に至った原因を振り返り、ストレスへの対処法を学び、段階的に仕事の感覚を取り戻すためのプログラムが用意されています。一人で抱え込まずに専門家と伴走することで、より確実で持続可能な職場復帰を目指すことができるのです。
復職支援の2大選択肢:「リワーク」と「就労移行支援」
休職からの復職をサポートするサービスには、主に「リワーク」と「就労移行支援」があります。どちらも復職を目指す点では共通していますが、その目的や対象、仕組みに違いがあります。
「リワーク」とは?
リワーク(Return to Work)とは、その名の通り、精神疾患などを理由に休職している方が、元の職場への復帰を目指すためのリハビリテーションプログラムです。 職場復帰支援プログラムとも呼ばれ、医療機関や公的機関が主体となって実施されることが多く、治療の一環としての側面も持ち合わせています。
「就労移行支援」とは?
就労移行支援は、障害者総合支援法に基づく福祉サービスの一つです。本来は、障害や難病のある方が一般企業へ新たに就職することを目指すためのサービスですが、近年、制度の見直しにより、特定の条件を満たせば休職中の方が「復職」のために利用することも可能になりました。 これを「福祉リワーク」と呼ぶこともあります。
【比較表】リワークと就労移行支援(復職支援)の違い
両者の違いを理解するために、以下の表にまとめました。どちらが自分に合っているか考える際の参考にしてください。
項目 | リワークプログラム | 就労移行支援(復職支援として利用) |
---|---|---|
主な目的 | 元の職場への復帰、症状の回復・安定、再休職の予防 | 元の職場への復帰(条件付き)、働くためのスキル習得、安定就労 |
主な実施機関 | 医療機関、地域障害者職業センター、企業 | 就労移行支援事業所(民間企業、NPO法人など) |
根拠法 | 医療保険制度、労働保険など | 障害者総合支援法 |
対象者 | 精神疾患などで休職中の方(主にうつ病など) | 障害や難病があり、復職を目指す休職中の方(一定の条件あり) |
費用 | ・医療機関:健康保険適用(自己負担1〜3割) ・職業センター:無料 ・企業:企業負担 |
福祉サービス利用料(前年度の所得に応じて自己負担額が決定。多くの方が無料で利用) |
利用手続き | 主治医の紹介状が必要な場合が多い | 市区町村への申請と「障害福祉サービス受給者証」の交付が必要 |
【徹底解説】リワークプログラムの種類と具体的な内容
「リワーク」と一言で言っても、実施する機関によっていくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。
リワークプログラムの主な実施機関
- 医療リワーク: 病院やクリニックなどの医療機関が実施します。治療の一環として行われ、医師や看護師、作業療法士などの専門職が関わります。医学的リハビリテーションが中心で、健康保険や自立支援医療制度が利用できます。
- 職リハリワーク: 各都道府県に設置されている「地域障害者職業センター」が実施します。休職者、企業、主治医の3者間の調整(コーディネート)に重点を置き、円滑な職場復帰をサポートします。無料で利用できますが、公務員は対象外です。
- 企業内リワーク: 休職者が所属する企業内で実施されるプログラムです。試し出勤(リハビリ出勤)制度などがこれにあたります。最も実践的な環境ですが、制度を導入しているのは主に大企業に限られます。
リワークで受けられる主なプログラム
リワークプログラムは、単に施設に通うだけでなく、復職と再発予防に向けた多角的なアプローチが組まれています。以下はその代表例です。
- 生活リズムの改善:決まった時間に施設へ通うことで、乱れがちな生活リズムを整え、通勤に必要な体力を回復させます。
- 認知行動療法(CBT):うつ病などの治療に効果的とされる心理療法。自分の考え方の癖(認知の歪み)に気づき、より柔軟な考え方ができるようトレーニングします。
- ソーシャルスキルトレーニング(SST):職場での円滑なコミュニケーションを目指し、上手な報告・連絡・相談の仕方、依頼の仕方、断り方などをロールプレイング形式で学びます。
- オフィスワーク・軽作業:パソコンでのデータ入力や書類作成、軽作業などを通じて、集中力や作業能力の回復を図ります。
休職中でも利用可能!就労移行支援による「復職支援」
前述の通り、就労移行支援は本来、離職中の方の「就職」を支援するサービスです。しかし、会社の復職支援制度がなかったり、近くに適切なリワーク施設がなかったりする場合、復職を目指す休職中の方も利用できる道が開かれています。
休職中に就労移行支援を利用するための4つの条件
休職中に就労移行支援を利用するには、以下の条件をすべて満たす必要があります。これは厚生労働省からの通知にもとづくもので、自治体(浜松市)が最終的に判断します。
- 65歳未満で、障害や難病があること。(医師の診断書や意見書があれば、障害者手帳がなくても申請可能な場合があります)
- 企業や地域の就労支援機関、医療機関による復職支援(リワーク)を受けることが困難であること。
- 本人が復職を強く希望しており、企業(雇用主)や主治医が、就労移行支援の利用が復職に有効であると認めていること。
- 上記の状況を踏まえ、市区町村(浜松市)が「就労移行支援の利用が復職に繋がる」と判断すること。
これらの条件は、サービスが本当に必要な人に届くように定められています。手続きは少し複雑に感じるかもしれませんが、利用を希望する事業所のスタッフが相談に乗ってくれる場合がほとんどです。
就労移行支援で復職を目指すメリット
- 豊富な事業所数:リワーク施設に比べ、就労移行支援事業所は全国に数多く存在します。浜松市内にも複数の事業所があり、自宅から通いやすい場所を選べます。
- 多様なプログラム:PCスキル、コミュニケーション、ビジネスマナーなど、就職後に役立つ実践的なプログラムが豊富に用意されています。IT特化型など、特色ある事業所も選べます。
- 個別支援計画:一人ひとりの状況や目標に合わせて、専門の支援員が個別の支援計画を作成し、きめ細やかなサポートを提供します。
- 就職後の定着支援:復職後も、最大3年半にわたって職場での悩みを相談できる「就労定着支援」というサービスに繋げることが可能です。
注意点:転職目的での利用は原則不可
休職中に就労移行支援を利用する場合、あくまで「現在の職場への復職」が目的となります。そのため、休職中に「復職ではなく転職したい」と考えて就労移行支援を利用することは原則として認められていません。 もし、利用中に退職が決まった場合は、速やかに事業所と自治体に報告し、今後の支援について相談する必要があります。
自分に合った支援を見つけるには?利用までのステップ
「リワークと就労移行支援、結局どっちがいいの?」と迷われる方もいるでしょう。ここでは、自分に合った支援を見つけるためのフローチャートと、利用開始までの具体的な流れをご紹介します。
あなたに合った復職支援は?簡単フローチャート
【スタート】あなたは現在、メンタル不調などで会社を休職中ですか?
YES → 次の質問へ
Q1. 勤務先に、復職支援プログラム(リハビリ出勤など)はありますか?
- YES → まずは会社の制度を利用することを検討しましょう。人事部や上司に相談してみてください。
- NO → 次の質問へ
Q2. 主治医から、特定の医療機関でのリワーク(医療リワーク)を勧められていますか?
- YES → 主治医の指示に従い、医療リワークの利用を検討するのが第一選択です。
- NO → 次の質問へ
Q3. 公務員ですか?
- YES → 職リハリワークは利用できません。医療リワークか、条件を満たせば就労移行支援が選択肢になります。
- NO → 次の質問へ
Q4. 近くに地域障害者職業センターがあり、通所可能ですか?
- YES → 職リハリワークも有力な選択肢です。無料で利用でき、企業との調整に強みがあります。
- NO / 通うのが難しい → 就労移行支援事業所の利用を検討してみましょう。浜松市内にも複数の事業所があり、通いやすい場所が見つかる可能性が高いです。
利用開始までの5ステップ
就労移行支援を利用する場合、一般的に以下の流れで進みます。
- 相談(会社・主治医):まず、会社の担当者(人事部など)と主治医に「復職のために就労移行支援を利用したい」と相談し、理解と協力を得ます。これが利用の前提条件となります。
- 事業所を探し、見学・体験:インターネットなどで浜松市内の事業所を探し、気になる場所へ見学や体験利用を申し込みます。事業所の雰囲気やプログラム内容が自分に合うかを確認しましょう。
- 利用申請(市役所へ):利用したい事業所が決まったら、浜松市の障害福祉担当窓口で「障害福祉サービス受給者証」の申請を行います。この際、会社や主治医の意見書などが必要になる場合があります。
- 受給者証の交付:市の調査や審査を経て、サービスの利用が認められると「受給者証」が交付されます。
- 契約・利用開始:受給者証を持って事業所と利用契約を結び、いよいよプログラムの利用がスタートします。
浜松市で復職支援が受けられる就労移行支援事業所
浜松市内には、それぞれ特色のある就労移行支援事業所が複数あります。ここでは、復職支援にも対応している可能性のある事業所をいくつかご紹介します。
※復職支援の受け入れ状況は変動する可能性があるため、必ず各事業所に直接お問い合わせください。
浜松市では、毎年「ともにはたらくフェア」といったイベントも開催されており、市内の障害福祉サービス事業所と直接話せる機会もあります。市の広報などもチェックしてみると良いでしょう。
業界最大手で安心!「LITALICOワークス 浜松」
全国に120以上の事業所を展開する業界最大手。豊富な支援ノウハウと、累計17,000人以上の就職実績が強みです。企業インターン(職場実習)先も4,500社以上と豊富で、復職前のウォーミングアップとして実践的な経験を積むことも可能です。就職後の定着支援も手厚く、安心して長く働き続けるためのサポートが受けられます。
- 特徴:業界最大手、豊富な実績、手厚い定着支援
- アクセス:JR「浜松駅」南口より徒歩約5分
ITスキル特化型!「ランプ浜松」
プログラミングやWebデザインなど、ITスキルに特化した訓練が受けられる事業所です。専門スキルを身につけて復職したい方や、将来的にIT関連の業務に挑戦したい方に適しています。卒業生の約4割がIT企業へ就職しており、高い専門性と実績を誇ります。
- 特徴:ITスキル特化、高い専門性、高い職場定着率(96%)
- アクセス:JR「浜松駅」南口より徒歩約3分
駅チカで多様なプログラム!「アクセスジョブ 浜松駅前」
浜松駅から徒歩圏内で通いやすい事業所です。PC訓練や軽作業、コミュニケーション、ストレス対処法など、一人ひとりのニーズに合わせた多様なプログラムを提供しています。eラーニングシステムや在宅訓練のサポート体制も整っており、柔軟な学び方が可能です。
- 特徴:駅チカ、個別支援重視、在宅訓練対応
- アクセス:JR「浜松駅」南口より徒歩約4分
発達・精神障害に特化!「ウェルビー 浜松駅前センター」
発達障害や精神障害のある方への支援に強みを持つ、全国展開の事業所です。障害特性に合わせた独自のカリキュラムを通じて、自己理解を深めながら、働く上で必要なスキルを段階的に習得することを目指します。同じ悩みを持つ仲間と出会えることも心強い点です。
- 特徴:発達・精神障害に特化、独自のカリキュラム
- アクセス:JR「浜松駅」南口より徒歩約3分
よくある質問(Q&A)
- Q1. 費用はどのくらいかかりますか?
- A1. 就労移行支援は福祉サービスのため、前年度の世帯所得に応じて自己負担額が決まりますが、約9割の方が無料で利用しています。リワークの場合、医療リワークは健康保険適用(1〜3割負担)、職リハリワークは無料です。
- Q2. 利用期間はどれくらいですか?
- A2. 就労移行支援の利用期間は原則2年間です。復職を目指す場合、3ヶ月〜1年程度で復職される方が多いですが、個人のペースに合わせて計画を立てます。リワークも同様に3ヶ月〜半年程度の利用が一般的です。
- Q3. 在宅での利用は可能ですか?
- A3. はい、可能です。多くの就労移行支援事業所では、通所が困難な方向けに在宅訓練プログラムを提供しています。 オンラインツールを活用し、自宅からプログラムに参加できます。希望する場合は、見学時に相談してみましょう。
- Q4. 利用している間の給料や手当はありますか?
- A4. 休職中の場合、会社の規定や加入している健康保険組合によっては「傷病手当金」が支給される場合があります。就労移行支援やリワークの利用自体から給料や工賃が発生することはありません。傷病手当金の受給については、会社の担当者や健康保険組合にご確認ください。
まとめ:一人で悩まず、まずは相談から始めよう
休職からの復職は、一人で乗り越えるには大きなエネルギーが必要です。しかし、浜松市にはあなたの再スタートを支えるための専門的なサービスが用意されています。
リワークプログラムや就労移行支援は、単に職場に戻るための訓練の場ではありません。自分自身と向き合い、ストレスへの対処法を学び、自信を取り戻すための大切な時間です。この記事でご紹介した情報を参考に、まずは「自分に合うかもしれない」と感じた事業所に、見学や相談の連絡をしてみてはいかがでしょうか。
その一歩が、あなたの明るい未来へと繋がる確かな道筋になるはずです。
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