「一般企業への就職を目指して、就労移行支援を利用したい。でも、訓練期間中の生活費が心配…アルバイトをしながら通うことはできないだろうか？」
静岡県浜松市で障害や難病を抱えながら就職を目指す方にとって、これは非常に切実な悩みです。就労移行支援は、就職に向けたスキルアップや準備を行うための強力なサポーターですが、その利用と収入確保の両立は簡単な問題ではありません。
この記事では、「浜松市で就労移行支援を利用しながらアルバイトはできるのか？」という疑問に真正面からお答えします。制度の基本的なルールから、例外的に認められるケース、そしてアルバイト以外の現実的な選択肢まで、あなたの不安を解消し、次の一歩を踏み出すための情報を網羅的に解説します。
結論：就労移行支援とアルバイトの併用は「原則禁止」
まず最も重要な結論からお伝えします。就労移行支援の利用期間中に、アルバイトをすることは原則として認められていません。
これは、就労移行支援が「一般企業等に雇用されていない方」を対象とした福祉サービスであるためです。厚生労働省の指針に基づき、多くの自治体や事業所では、訓練に専念し、安定した就労を目指すという制度の趣旨を重視しています。
就労移行支援は、一般就労を目指すための訓練に集中するためのサービスです。そのため、利用中にアルバイトを行うことは、制度の目的から外れると判断されるのが一般的です。無断でアルバイトを始めると、サービスの利用停止につながる可能性もあるため、注意が必要です。
ただし、これは絶対的なルールではありません。「原則」とある通り、やむを得ない事情がある場合には、自治体（浜松市）や利用する事業所の判断によって、例外的に許可されるケースも存在します。しかし、その判断は非常に慎重に行われるため、まずは「原則禁止」と理解しておくことが重要です。
なぜアルバイトは原則禁止？制度の目的から理解する
なぜ、生活費の足しにしたいという切実なニーズがあるにもかかわらず、アルバイトは原則として認められないのでしょうか。その理由は、就労移行支援という制度が持つ「目的」にあります。
厚生労働省が定める「対象者」の条件
就労移行支援は、障害者総合支援法に基づく福祉サービスです。その対象者は、一般企業への就職を希望する18歳以上65歳未満の障害や難病のある方で、「就労を行っていないこと」が条件の一つとされています。
アルバイトは法的に「就労」とみなされるため、この条件から外れてしまうのです。制度の根幹に関わる部分であるため、厳格に運用されています。
訓練への専念と安定した就労というゴール
就労移行支援の最大の目的は、利用者が最長2年間という限られた期間で、就職に必要なスキルや知識を習得し、長く安定して働き続けるための土台を作ることです。
もしアルバイトを併用すると、以下のような懸念が生じます。
- 体調管理の困難：訓練とアルバイトのダブルワークは心身に大きな負担をかけ、生活リズムを崩す原因になりかねません。
- 訓練への集中力低下：疲労により、事業所でのプログラムに集中できず、スキル習得が遅れてしまう可能性があります。
- 本来の目的とのズレ：目先の収入を得ることが優先され、長期的なキャリア形成という本来の目的を見失ってしまうリスクがあります。
事業所は、利用者が万全の状態で訓練に臨み、着実に就職へのステップを歩めるよう支援する責任があります。そのため、訓練の効果を最大化する観点から、アルバイトの併用を制限しているのです。
例外的にアルバイトが認められるケースと注意点
原則禁止とはいえ、全ての道が閉ざされているわけではありません。以下のような特定の条件下では、浜松市や事業所の判断により、例外的にアルバイトが許可されることがあります。
- 経済的な困窮：アルバイト収入がなければ、訓練の継続自体が困難になるなど、やむを得ない経済的な理由が認められる場合。
- 訓練の一環として：就職を目指す職種に関連する短時間のアルバイトが、実践的な訓練として有効だと事業所が判断した場合。
- 自治体独自の判断：浜松市が、利用者の自立を促すために柔軟な対応を認めている場合。
【最重要】必ず事前に相談すること
どのような理由であれ、自分の判断で勝手にアルバイトを始めることは絶対に避けてください。まずは利用を検討している、あるいは利用中の就労移行支援事業所のスタッフ（サービス管理責任者など）に正直に状況を話しましょう。「こんなことを相談していいのだろうか」とためらう必要はありません。専門家として、あなたの状況を理解し、最善の道を一緒に考えてくれます。
相談の結果、もしアルバイトが認められなかったとしても、後述する公的な経済支援など、他の解決策を提案してくれるはずです。正直に相談することが、信頼関係を築き、より良い支援を受けるための第一歩となります。
アルバイトの前に検討したい！収入と就労の選択肢
「アルバイトがダメなら、どうやって生活すればいいのか…」と不安に思うかもしれません。しかし、浜松市には就労を目指すあなたを支える、アルバイト以外の選択肢が用意されています。自分の目標や状況に合わせて、最適なサービスを検討しましょう。
選択肢①：障害年金や生活保護などの公的制度
まず検討すべきは、国や自治体が提供する経済的な支援制度です。これらは、就労移行支援のような福祉サービスと併用できる場合があります。
- 障害年金：病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に受け取れる年金です。
- 生活保護：資産や能力などすべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度です。
これらの制度を利用することで、収入面の不安を軽減し、安心して就職準備に専念できる可能性があります。利用条件や手続きについては、お住まいの区役所の担当窓口や、利用中の事業所に相談してみましょう。
選択肢②：工賃を得ながら働く「就労継続支援B型」
すぐに一般企業で働くことに不安がある場合や、自分のペースで働く練習から始めたい場合には「就労継続支援B型」が選択肢になります。B型は事業所と雇用契約を結ばず、体調に合わせて軽作業などを行い、その対価として「工賃」を受け取ります。
- メリット：自分のペースで無理なく働ける。工賃を得られるため、収入の足しになる。
- デメリット：工賃は最低賃金を下回ることが多く、それだけで生計を立てるのは難しい。一般就労への移行率は就労移行支援より低い傾向にある。
浜松市内にも多くのB型事業所があります。LITALICO仕事ナビなどのサイトで探すことができます。
選択肢③：給与を得ながら働く「就労継続支援A型」
「就労継続支援A型」は、事業所と雇用契約を結び、最低賃金以上の給与を受け取りながら働くサービスです。社会保険の対象にもなるため、より安定した環境で働く経験を積むことができます。
- メリット：安定した給与と社会保険が得られる。一般就労に近い形で働く経験が積める。
- デメリット：雇用契約を結ぶため、一定の勤務時間や責任が求められる。利用には面接などがあり、誰でもすぐに利用できるわけではない。
一般就労へのステップとしてA型事業所を活用するのも有効な手段です。浜松市の障害福祉サービス事業所一覧などで情報を確認できます。
浜松市で信頼できる就労移行支援事業所の見つけ方
アルバイトの可否も重要ですが、それ以上に大切なのは、あなたを確実に就職へと導き、長く働き続けられるようサポートしてくれる信頼できる事業所を見つけることです。浜松市内には29件以上の就労移行支援事業所があり、それぞれに特色があります。
「就職率」と「定着率」で見る事業所の実力
事業所選びで最も重要な指標が「就職率」と「職場定着率」です。
- 就職率：利用者が実際に就職できた割合。事業所の「就職させる力」を示します。
- 定着率：就職後、半年や1年以上働き続けている人の割合。就職後の「サポートの質」を示します。
理想的なのは、高い就職率と高い定着率を両立させている事業所です。それは、利用者を確実に就職へと導く力と、その人が職場で長く活躍し続けられるよう支える力の両方を兼ね備えていることの証明です。
厚生労働省の調査によると、全国の就労移行支援からの就職率は約57%です。この数値を基準に、各事業所が公表している実績を比較することが、質の高い事業所を見抜く鍵となります。
浜松市の実績豊富な主要事業所
浜松市には、全国平均を大きく上回る高い実績を誇る事業所が複数存在します。ここでは代表的な事業所をいくつか紹介します。
- LITALICOワークス（浜松・新浜松・浜松市役所前）：業界最大手で、累計18,000人以上の就職実績を誇ります。豊富なプログラムと企業ネットワークが強みで、就職後6ヶ月の定着率は約90%と非常に高い水準です。
- アクセスジョブ（浜松駅前・浜松田町）：教育分野で培ったノウハウを活かした「完全個別支援」が特徴。就職率・定着率ともに90%以上という驚異的な実績を公表しており、一人ひとりに合わせた手厚いサポートが期待できます。
- ウェルビー（浜松駅前センター）：全国展開する大手の一つで、特に就職後の定着支援に定評があります。2023年度の定着率は91.0%と高く、安心して働き続けるためのサポートが充実しています。
- 就労移行ITスクール浜松：プログラミングやWebデザインなど、ITスキルに特化した訓練を提供。専門職としてのキャリアを目指す方に適しています。
これらの情報はあくまで一部です。事業所選びで最も大切なのは、実際に自分の目で見て、雰囲気やスタッフとの相性を確かめることです。気になる事業所が見つかったら、必ず見学や体験利用を申し込みましょう。
【2025年10月開始】新制度「就労選択支援」でミスマッチを防ぐ
アルバイトを考える前に、もう一つ知っておくべき重要な動きがあります。それが、2025年10月から本格的にスタートする新制度「就労選択支援」です。
これは、「自分にどんな仕事や働き方が合っているかわからない」という方が、就労移行支援などの福祉サービスを利用する前に、短期間の作業体験などを通じて自分の得意・不得意や希望を整理（アセスメント）するための新しいサービスです。
就労選択支援は、障害のあるご本人の希望や適性・能力に合った就職先や就労支援サービスが選べるよう、支援者が「アセスメント」を行いサポートするのが目的です。これにより、サービスのミスマッチを防ぎ、より納得感のある選択ができるようになることが期待されています。
2025年10月以降、就労移行支援などを新たに利用する方は、原則としてこの就労選択支援を受けることになります。アルバイトで場当たり的に仕事を探すのではなく、まずはこの制度を活用して専門家と一緒に自分のキャリアをじっくり考えることが、結果的に安定した就労への近道となるでしょう。
よくある質問（Q&A）
- Q1. 就労移行支援の利用料金はかかりますか？
- A. 約9割の方が自己負担0円で利用しています。就労移行支援は公的な福祉サービスであり、前年の世帯所得に応じて負担上限額が定められています。生活保護受給世帯や市町村民税非課税世帯は自己負担なしで利用できます。
- Q2. 障害者手帳がないと利用できませんか？
- A. いいえ、必須ではありません。医師の診断書や意見書など、障害や疾患の存在を客観的に証明できる書類があれば、浜松市の判断によって利用が認められるケースが多くあります。まずは相談窓口に問い合わせてみてください。
- Q3. 週に何日くらい通う必要がありますか？
- A. 無理のないペースから始められます。最終的には週5日の安定した通所を目指しますが、利用開始当初は体調に合わせて週2〜3日や半日からのスタートも可能です。事業所のスタッフと相談しながら、柔軟に計画を立てることができます。
まとめ：一人で悩まず、まずは浜松市の相談窓口へ
この記事では、浜松市で就労移行支援を利用しながらアルバイトができるか、という疑問について詳しく解説しました。最後に、重要なポイントを振り返ります。
- 就労移行支援の利用とアルバイトの併用は、訓練への専念を目的として原則禁止されています。
- ただし、経済的な理由などやむを得ない場合は例外的に許可される可能性もあります。必ず事前に事業所へ相談しましょう。
- 収入面に不安がある場合は、障害年金などの公的制度や、工賃・給与が得られる就労継続支援（A型/B型）の利用も検討できます。
- 最も重要なのは、アルバイトの可否に固執せず、自分に合った信頼できる就労移行支援事業所を見つけることです。浜松市には「LITALICOワークス」や「アクセスジョブ」など、高い実績を持つ事業所が多数あります。
- 2025年10月からは「就労選択支援」が始まり、自分に合った働き方をより見つけやすくなります。
「働きたい」というあなたの気持ちを、一人で抱え込む必要はありません。浜松市には、あなたの状況に寄り添い、最適な道筋を一緒に考えてくれる専門家がたくさんいます。
まずは、お住まいの区役所の社会福祉課や、浜松市障害者就労支援センター「ふらっと」といった公的な相談窓口に連絡することから始めてみませんか。その一歩が、あなたの未来を拓く確かなきっかけになるはずです。
【浜松市の主な相談窓口】
- 各区役所の社会福祉課：最も身近な公的相談窓口です。
- 浜松市障害者就労支援センター「ふらっと」：就労に関する専門的な相談が無料でできます。（電話: 053-589-3028）
- 各就労移行支援事業所：気になる事業所に直接連絡し、無料相談や見学会に参加するのも有効です。
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