「就労移行支援」と「B型」の違い、正しく理解していますか?
浜松市で障害のある方が「働きたい」と考えたとき、「就労移行支援」と「就労継続支援B型(B型事業所)」という言葉を耳にすることが多いでしょう。しかし、この2つのサービスの名前が似ているため、その目的や内容の違いが分かりにくく、「自分にはどちらが合っているのだろう?」と悩んでしまう方も少なくありません。
この違いを正しく理解しないままサービスを選んでしまうと、「思っていた支援と違った」「自分には合わなかった」ということになりかねません。あなたの大切な一歩を確かなものにするためには、まず、それぞれの制度を正確に知ることが不可欠です。
この記事では、浜松市で就労支援サービスの利用を検討している方に向けて、以下の点を専門的な視点から、そして分かりやすく徹底的に解説します。
- 「就労移行支援」と「就労継続支援B型」の明確な違い
- それぞれのサービスがどのような目的を持ち、どんな人に向いているのか
- 浜松市における就労支援の最新動向と、具体的な事業所の探し方
- あなたに最適なサービスと事業所を見つけるための、実践的なチェックポイント
この記事を最後まで読めば、複雑に見える制度の全体像がクリアになり、あなたに合ったサービスを見つけるための具体的な道筋が見えてくるはずです。
【結論】目的が違う!就労移行支援と就労継続支援B型の決定的違い
まず結論からお伝えします。これら2つのサービスの最も大きな違いは、その「目的」にあります。この根本的な目的の違いが、対象者や支援内容、利用期間、収入の有無といった具体的な違いにつながっています。
- 就労移行支援:一般企業などへの就職を目指すための「訓練・準備の場」です。
- 就労継続支援B型:支援を受けながら実際に「働く場」です。
この「訓練の場」か「働く場」かという視点を持つだけで、制度の理解が格段に進みます。就労移行支援はゴールが「就職」であるのに対し、就労継続支援B型は「自分のペースで働くことそのもの」が目的の中心となります。
一目でわかる!就労支援サービス比較表
以下の比較表で、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。就労継続支援には雇用契約を結ぶ「A型」もありますが、ここでは特に混同されやすい「就労移行支援」と「B型」を中心に比較します。
| 項目 | 就労移行支援 | 就労継続支援B型 | (参考)就労継続支援A型 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 一般企業への就職と職場定着 | 非雇用で、体調に合わせて自分のペースで働く | 雇用契約に基づき、支援のある環境で働く |
| 役割 | 就職のための訓練・準備の場 | 働く機会・活動の場 | 支援付きの働く場 |
| 対象者 | 一般就労を希望する原則65歳未満の方 | 一般就労やA型での就労が困難な方(年齢制限なし) | 一般就労が困難で、雇用契約に基づく就労が可能な原則65歳未満の方 |
| 雇用契約 | なし | なし | あり |
| 給料/工賃 | 原則なし(訓練のため) | 工賃(生産活動への対価) ※最低賃金の適用外 |
給料(最低賃金以上が保障) |
| 利用期間 | 原則2年間 | 定めなし | 定めなし |
どちらを選ぶべき?あなたの状況に合わせた選択肢
上記の比較を踏まえると、どちらのサービスがあなたに適しているかが見えてきます。
- 「将来的に一般企業で働きたい」「そのために必要なスキルやビジネスマナーを学びたい」と考えているなら、就労移行支援が第一の選択肢です。原則2年間という限られた期間で、集中的に就職準備を進めます。
- 「まずは働くことに慣れたい」「体力に自信がないので、短い時間から始めたい」「自分のペースで無理なく社会と関わりたい」という場合は、就労継続支援B型が適しています。利用期間に定めがなく、自分の体調や目標に合わせて長く利用できます。
もちろん、B型事業所で経験を積み、自信をつけてから就労移行支援にステップアップする、というキャリアパスも可能です。浜松市も、B型から一般就労への移行を積極的に後押ししています。
【一般就職への道】浜松市の「就労移行支援」を深掘り
「一般企業で働きたい」という明確な目標を持つ方にとって、就労移行支援は最も強力なパートナーです。ここでは、浜松市における就労移行支援の現状と、あなたに最適な事業所を見つけるための具体的な方法を解説します。
浜松市の現状:豊富な選択肢から自分に合う場所を探す
浜松市内には、障害のある方の「働きたい」という思いを支える就労移行支援事業所が数多く存在します。ポータルサイトによると、市内には29件(2025年11月時点)の事業所があり、それぞれが独自の強みや特色を持っています。
事業所はJR浜松駅や新浜松駅周辺に集中している傾向があり、公共交通機関でのアクセスが良好です。大手事業所から特定の分野に特化した事業所まで、選択肢が豊富なため、自分の目標や特性に合った場所を見つけやすい環境と言えるでしょう。
失敗しない!浜松市の就労移行支援事業所の選び方と比較ポイント
数多くの選択肢の中から最適な一ヶ所を見つけるためには、いくつかの重要なチェックポイントがあります。見学や相談の際には、以下の点を意識して比較検討しましょう。
- プログラム内容と専門性:自分が目指す職種に必要なスキル(PCスキル、コミュニケーション、専門技術など)を学べるか。特にITスキルなど専門性を求める場合は、「ランプ浜松」のような特化型事業所が選択肢になります。
- 就職実績と定着率:どのような企業・職種への就職実績があるか、そして就職後に長く働き続けられているか(定着率)は、支援の質を測る重要な指標です。具体的な数値データを確認しましょう。
- 事業所の雰囲気と支援体制:スタッフは親身に相談に乗ってくれるか、事業所は自分がリラックスして通える雰囲気か。集団プログラムが中心か、個別支援を重視しているかも大きな違いです。必ず複数の事業所を見学し、肌で感じることが大切です。
- 通いやすさ(アクセス):自宅からの距離、交通手段、交通費の補助制度の有無など、無理なく継続して通えるかという物理的な条件も重要です。
浜松市のおすすめ就労移行支援事業所【特色別4選】
浜松市内には多様な事業所がありますが、ここでは特に実績や特色が明確な4つの事業所グループを紹介します。これらはあくまで一例であり、最終的にはご自身の目で見学・体験して判断することが最も重要です。
1. LITALICOワークス(浜松・新浜松・浜松市役所前)
特徴:業界最大手ならではの豊富な実績とノウハウが強み。累計就職者数は18,000人を超え、200種類以上のプログラムから個別に支援計画を作成します。企業インターン先も4,500社以上と豊富で、就職後の定着支援も最長3年半と手厚いのが魅力です。浜松市内にはアクトタワー内など、アクセスしやすい場所に3つの拠点があります。
- 向いている人:安定したサポート体制と豊富な実績を重視する方、多様なプログラムから自分に合ったものを選びたい方。
- 所在地例:
- LITALICOワークス 浜松: 浜松市中央区板屋町111-2 アクトタワー6F
- LITALICOワークス 新浜松: 浜松市中央区鍛冶町124 マルHビル2F
- LITALICOワークス 浜松市役所前: 浜松市中央区元城町216-1 浜松城公園南ビル2F
2. アクセスジョブ(浜松駅前・浜松田町)
特徴:教育福祉分野で50年以上の歴史を持つ「クラ・ゼミ」が運営。「完全個別支援制」を掲げ、約500種類以上の豊富なeラーニングプログラムから自分に合った訓練を選べます。就職率・定着率ともに90%以上(2024年1月時点)という高い実績を誇り、栄養バランスの取れたランチが無料というユニークなサービスも魅力です。
- 向いている人:自分のペースでじっくり取り組みたい方、集団プログラムが苦手な方、豊富な選択肢から自分に合った訓練を選びたい方。
- 所在地例:
- アクセスジョブ浜松駅前: 浜松市中央区鍛冶町140-4 浜松Aビル 北館5F A室
- アクセスジョブ浜松田町: 浜松市中央区田町230-15 1階
3. ウェルビー(浜松駅前センター・浜松駅前第2センター)
特徴:全国に多くの事業所を展開する老舗の一つ。特に精神障害・発達障害のある方への支援に定評があり、就職後6ヶ月の定着率は91.0%と非常に高い水準です。浜松駅前のプレスタワー14階という絶好のロケーションにセンターを構え、素晴らしい眺望の中で訓練を受けられます。一人ひとりの不安や希望に寄り添った丁寧な支援が特徴です。
- 向いている人:精神障害や発達障害の特性に合ったサポートを受けたい方、就職後の定着を特に重視する方。
- 所在地例:
- ウェルビー浜松駅前センター: 浜松市中央区旭町11-1 浜松プレスタワー14階
- ウェルビー浜松駅前第2センター: 浜松市中央区鍛冶町1-39 ピンストライプビル3階
4. ランプ浜松(旧:就労移行ITスクール浜松)
特徴:ITスキルの習得に特化した事業所。親会社がIT企業であり、現役エンジニアからプログラミング(Python, Java等)やWebデザインなどを学べる実践的なカリキュラムが強みです。IT未経験者から専門職を目指す方まで幅広く対応しており、資格取得支援も手厚いです。IT業界への就職や在宅ワークを目指す方に最適です。
- 向いている人:IT・Web系の専門スキルを身につけて就職したい方、将来的にリモートワークを希望する方。
- 所在地:浜松市中央区連尺町314-31 アーバンスクエア浜松ビル9階
【自分のペースで働く】浜松市の「就労継続支援B型」を深掘り
「まずは社会参加から始めたい」「体調に合わせて無理なく働きたい」と考える方にとって、就労継続支援B型は心強い選択肢です。雇用契約を結ばないため、週1日や半日だけの利用など、柔軟な働き方が可能です。
浜松市の現状:高まる需要と広がる選択肢
浜松市において、就労継続支援B型は障害福祉サービスの中で最も多くの人に利用されているサービスの一つです。市のデータによると、令和4年度(2022年度)の実績で1,401人が利用しており、その需要は今後も増加が見込まれています。
この高まる需要に応えるように、浜松市内のB型事業所の数も増加傾向にあります。2021年の56事業所から、2025年には73事業所にまで増える見込みで、利用者の選択肢は大きく広がっています。事業所の増加に伴い、作業内容も従来の軽作業だけでなく、PC作業、農業、飲食店の運営など、特色ある活動を行う場所が増えています。
さらに浜松市は、B型事業所を単なる「働く場」としてだけでなく、スキルを磨き一般就労を目指すための「準備の場」としても位置づけ、B型からの一般就労移行者数を倍増させる目標を掲げています。これは、B型での経験が次のステップへの重要な架け橋となることを市が後押ししている証拠です。
自分に合った場所を見つける!B型事業所選びの3つの鍵
B型事業所は、事業所ごとに作業内容や雰囲気、工賃が大きく異なります。後悔しないためには、以下の3つの鍵を基に、必ず見学・体験をして自分に合う場所かを見極めましょう。
- 作業内容と工賃:「何をして、いくらもらえるのか」は最も重要なポイントです。部品の組み立てなどの軽作業、データ入力、農作業、パンの製造販売など、自分が興味を持てて、無理なく続けられる作業内容かを確認しましょう。また、生産活動への対価である「工賃」の実績額や計算方法も事前に質問することが大切です。
- 事業所の雰囲気とサポート体制:ウェブサイトだけでは分からないのが「雰囲気」です。活気があるか、静かで落ち着いているか。他の利用者の様子や、スタッフが親身に相談に乗ってくれるかなど、自分が安心して通える環境かを見極めましょう。
- 通いやすさ(場所・送迎・交通費):継続して通うためには、アクセスの良さも無視できません。自宅からの距離や交通手段を考え、送迎サービスの有無や、後述する浜松市の交通費助成制度が利用できるかを確認しましょう。
浜松市のユニークな就労継続支援B型事業所【事例紹介】
浜松市には、利用者の興味や得意を活かせるユニークなB型事業所が数多くあります。ここではその一部をご紹介します。
- 中華グレース チャーハンじじい(浜名区内野)人気の町中華レストランを運営するB型事業所。調理補助や接客、清掃などを通じて、実践的な飲食業の仕事を体験できます。NPO法人トータルケアセンターが運営しており、「地域で一番高い工賃を目指す」という目標を掲げている点も魅力です。
- 就労継続支援B型事業所そらあい(中央区安新町)社会福祉法人八生会が運営。コミュニティカフェの接客・調理や、介護施設内での清掃、ベッドメイキングなど、多様な仕事を提供しています。令和5年度の平均工賃は月額20,891円と、安定した実績があります。
- くるみ作業所(中央区南浅田)社会福祉法人復泉会が運営する歴史ある事業所。「よみがえる資源・みんなで福祉」をキャッチフレーズに、資源回収などの活動を行っています。地域に根差した活動に興味がある方に向いています。
【手続きと費用】安心して一歩を踏み出すための共通ガイド
「利用したいサービスや事業所が見えてきたけど、手続きが難しそう…」「費用はどれくらいかかるの?」そんな不安を解消するため、就労移行支援と就労継続支援B型に共通する利用手続きと費用について解説します。
相談から利用開始までの5ステップ
障害福祉サービスの利用には、お住まいの市区町村から「障害福祉サービス受給者証」を交付してもらう必要があります。手続きは少し複雑に感じるかもしれませんが、専門家がサポートしてくれるので心配ありません。浜松市での標準的な流れは以下の通りです。
- 相談する:まずはお住まいの区の区役所・行政センター内にある社会福祉課(障害福祉担当)に相談します。「就労移行支援(またはB型)を利用したい」と伝え、手続きの説明を受けます。
- 事業所を探し、見学・体験する:候補となる事業所をいくつか見つけ、必ず見学や体験利用をします。自分に合う場所か、自分の目で確かめる最も重要なステップです。
- 利用を申請する:利用したい事業所が決まったら、再び区役所の窓口で正式な利用申請を行います。
- サービス等利用計画案を作成する:申請後、市から「サービス等利用計画案」の提出を求められます。これは、市の指定を受けた「特定相談支援事業所」の相談支援専門員が、あなたと面談しながら無料で作成を手伝ってくれます。
- 受給者証の交付と利用開始:提出された書類を基に市が支給を決定し、「受給者証」が交付されます。受給者証を事業所に提示し、契約を結ぶといよいよ利用開始です。申請から交付までは、おおむね1〜2ヶ月程度かかることが一般的です。
障害者手帳は必須?
就労支援サービスの利用に、障害者手帳は必ずしも必須ではありません。医師の診断書や意見書など、障害や疾患があることを客観的に証明できる書類があれば申請可能です。詳しくは市の窓口や事業所に相談してみましょう。
費用の心配は無用?約9割が無料で利用できる仕組み
費用の不安は大きいと思いますが、ご安心ください。障害福祉サービスの利用料は、国の制度により前年の所得に応じて負担上限月額が定められています。そして、実際には利用者の約9割が自己負担0円(無料)でサービスを利用しています。
負担上限月額は、世帯の所得状況に応じて以下の4区分で決まります。
| 区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) ※収入が概ね670万円以下の世帯が対象 |
9,300円 |
| 一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
この表の通り、「生活保護受給世帯」と「市町村民税非課税世帯」の方は、自己負担額が0円となります。また、自己負担が発生する場合でも、この上限額を超えることはありません。
浜松市独自の交通費助成制度を活用しよう
利用料以外に気になるのが交通費です。浜松市には、対象施設へ通所する際の交通費の一部を助成する「浜松市障害者施設通所支援事業」という独自の制度があります。
- 対象者:浜松市に在住し、障害者手帳などを所持して対象施設に通所している方。
- 助成金額:通所にかかった交通費に応じて算出され、年度ごとに7,000円が上限です。
- 申請方法:通所している事業所を通じて申請するのが一般的です。
この制度が利用できるか、また事業所独自の交通費補助があるかも、見学時に必ず確認しましょう。詳細は浜松市の公式サイトで確認できます。
まとめ:あなたに合った働き方を見つけるための第一歩
この記事では、浜松市における「就労移行支援」と「就労継続支援B型」の違いから、それぞれの特徴、事業所の選び方、利用手続きまでを網羅的に解説しました。最後に、重要なポイントを振り返ります。
- 目的で選ぶ:「一般就職」を目指すなら就労移行支援、「自分のペースで働く」ことから始めたいなら就労継続支援B型。
- 浜松市は選択肢が豊富:浜松市内には、大手からIT特化型、ユニークな作業を行うB型まで、多様な事業所があります。
- 見学・体験が鍵:ウェブの情報だけでなく、必ず複数の事業所を見学・体験し、プログラム内容、雰囲気、サポート体制を自分の目で確かめましょう。
- 費用と手続きは専門家がサポート:利用料は約9割が無料。手続きも区役所や相談支援事業所が丁寧にサポートしてくれるので、一人で抱え込む必要はありません。
漠然とした不安が、少しは具体的な行動計画に変わったでしょうか。あなたの「働きたい」という気持ちを形にするための支援は、すぐそこにあります。まずは、お住まいの区役所の社会福祉課や、この記事で気になった事業所に「相談してみる」ことから、新しい一歩を踏み出してみてください。

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